第37回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞営業マンではなく
深い知識持つ健康アドバイザー

有限会社い志ばし
代表者石𣘺 順広

ここがポイント

  1. ①営業マンではなく健康アドバイザーとして
  2. ②顧客とのコミュニケーション「い志ばしんぶん」「電話健康相談」
  3. ③配達員の非雇用化と従業員同士のコミュニケーション

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

代表の石𣘺順広氏
  • 昭和27年にエルビーの特約店として、祖母である石𣘺美津江が創業。
  • 昭和33年に雪印乳業と契約し、牛乳販売店となる。当時の焼津は地域がら、港が栄え、多くの人が行きかっていた場所であり地元のお店に商品を卸し、個人宅には宅配で商品を届けていた。
  • 平成に入り、スーパーマーケットの増加により低迷していた宅配事業を立て直すために、当時の担当セールスが試行錯誤して宅配軒数増加のための営業活動を始める。
  • 平成16年3月に現在の社長が牛乳販売店事業を承継するため本格的に経営に参画する。
  • 平成16年10月に家業であった「SIDAミルク石𣘺牛乳店」から「有限会社いしばし」と法人化し、先代(2代目)が代表取締役、現社長が専務取締役に就任した。
  • 平成30年に現社長が代表取締役に就任。その後、「志」を持って事業を行いたいとの思いから「有限会社いしばし」から「有限会社い志ばし」へ社名変更を行った。
  • 現社長の石𣘺順広氏は大学卒業後、名古屋にて24歳で人材派遣業を起業し、実家の牛乳販売店へも人材派遣を行っていた。また、人材派遣業を経営する傍ら、実家の牛乳販売店の手伝いも行っていた。
店舗外観
従業員に向けた
感染症対策メッセージ

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 4.5坪 1坪 5台
  • 該店は本店1店舗である。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ワゴン車
バンなど
二輪車等
その他
持込車
1台 1台 18台
  • 該店の配達員は全て外注(フリーランス)で行っているため、持込車が多いが、蓄冷剤や保冷シートなどの活用により品質管理は適正に行われている。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 3人 1人 5人
女性 1人 1人 2人
合計 1人 1人 3人 2人 7人
  • ここに記載している従業者は営業職、事務職であり、配達員については、全て外注(フリーランス)に委託している。

(4)経営状況

①令和6年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 98.0 98.3
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 1.7
牛乳関連合計 98.0 100.0
宅配卸以外の売上計
合計 98.0 100.0
②令和6年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 96.7 90.7
卸(小売) 100.0 0.4
自販機 96.8 8.9
集団
その他
合計 96.8 100.0
  • 令和6年の製品別売上高の前年比は若干減少傾向にあるが、令和7年については増加してきている。
  • また、令和6年業態別売上高の前年比も若干減少傾向にあるが、これは、宅配、自動販売機の売上高の減少によるものである。
③令和6年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 95.4 98.9
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 1.1
牛乳関連合計 95.5 100.0
粗利益率 40.0
  • 粗利益については、前年から約5ポイント減少している。
  • また、粗利益率についても前年から1.1ポイント減少しており、売上、利益ともに厳しい状況がみえるが、令和7年度には回復する見込みである。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS払
引落 キャッシュレス 合計
早朝     1250 350   210   1270 120   1600 1177本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     1250 350   210   1270 120   1600
  • コースは週2配達が中心である。
  • 集金方法については、引落が中心であるが、高齢のお客様等はまだ訪問集金が若干残っている。

(5)立地環境

  1. 商圏人口は約30万人であり、焼津市、藤枝市、静岡市駿河区の1部である。
  2. 競合店としては、地域密着な個人店はほとんど廃業しているため、現在は同業他社の大手牛乳販売店(雪印メグ、森永、明治)の出店が目立ち、商圏内には10店ほど存在している。
  3. 該店は焼津駅から徒歩10分程度の場所であり、住宅地に位置している。

経営方針

  • 経営理念を「「お客様の健康サポーター」として地域から信頼され続ける会社である事」としている。
  • 私たちは営業マンではなく、健康アドバイザーとしてお客様に接することで、商品をお届けするだけではなく、健康や生活に関する相談を気軽にできる存在であり続ける。

活動内容

1.営業マンではなく健康アドバイザーとして

①お客様への接し方

  • 該店の営業マンは健康アドバイザーとしてお客様に接することを基本としている。
    営業活動として接すると、お客様に対して、「1カ月から3カ月だけとってください」というような自分(営業マン)本位の契約になってしまうことが多いが、健康アドバイザーとして活動してもらうことで、商品知識と健康知識を合わせたお客様本位の提案をすることで、お客様が商品に対する深い理解を得た上で契約を結ぶことから、長期契約につながっている。
  • 上記のような対応に徹することで、単なるセールスに訪問しているとは思われず、門前払いされることがほとんどない状況である。落本も2%以下に収めることができている。

②商品知識と健康知識の習得

各商品の摂取方法のヒントを
まとめたマニュアル
  • 商品知識についてはメーカー担当者から情報を得るほか、独自に勉強会を開催している。
  • 健康知識については、上辺の知識だけではなく、深い部分までの知識の習得を行っている。
  • 例えば、カルシウムの働きは骨を丈夫にするだけではなく、血圧や心臓にも影響を及ぼすため、人間の身体には必要不可欠な栄養素であることなど栄養素や身体の仕組みについても説明している。
  • お客様の健康に対する要望は人それぞれに異なることからメーカーを越えお客様に適した商品提案を行っている。
  • 月に1度、営業活動から帰社した際に社長を講師として、健康知識を深める勉強会を行っている。健康知識については、情報誌やSNS、メーカーからの情報などから収集し、最新の話題を取り入れるようにしている。

③サンプル配布やイベントセールスは実施しない

  • 該店の場合は、サンプル配布やイベントセールスは行っていない。「とりあえず、飲んでみてください」ではなく、しっかりとした商品説明や健康知識をお伝えすることで、商品に興味を持っていただいたお客様だけを契約に結びつけている。

2.顧客とのコミュニケーション

①「い志ばしんぶん」の発行

  • 10年前から、2カ月に1度「い志ば しんぶん」を発行している。
  • 内容は社長のプライベートな考え方や出来事、世の中に関する考えや人の生き方など踏み込んだ内容を思ったまま記載することで、普段、顔を会せることのないお客様にも親しみを持っていただいている。
    「店長のひとりごと」コーナーは店長の人となりをしってもらうためのツールであり、お客様からも高評価を得ている。
  • また、健康知識や雑学、お料理レシピやイベント情報など地域に根差した情報発信を行っており、既存顧客へのプレゼント企画なども落本防止に寄与している。
「い志ば しんぶん」
人気コーナーの店長のひとりごと
「い志ばしんぶん」
健康知識のコーナー
「い志ばしんぶん」を読まれている
お客様からの手書きのメッセージ

②電話による健康相談

  • 該店は敢えて、お客様とのSNSでの連絡を手段としていない。
    理由としては、SNSによる言葉の誤解が怖いからである。同じ言葉でも音声で聞くのと言葉(文字)だけで伝えるのではニュアンスが異なって伝わる危険性がある。お客様に誤解を与えてしまうことがあるため、できるだけ電話による応対を行っている。
  • 商品や健康に関する相談については、電話で対応を行っている。電話対応はほとんどが社長であり、詳しい商品知識や健康知識を伝えることができるため、お客様からの信頼も厚い。また、前述した「い志ばしんぶん」での店長であることから、親近感を持ってもらえていることが良い接客につながっている。

3.販促活動

①無料骨密度測定会

  • 毎年、秋に店舗にて医療機関で使っているものと同じ精密な機器を使った「骨密度測定会」を実施している。毎年、100人~120人くらいの来店客があり、リピーターも多いイベントとなっている。
  • お客様自身の骨の状態を認識していただくことにより、カルシウムを強化した「カルパワー」の積極的な拡売につなげている。
  • また、新商品のPRやデザートのお買い得特売によりお客様への還元も行っている。
  • 長期契約していただいているお客様にとっては、毎年の楽しみになっているほか、新規のお客様には、実際にお店を訪問していただくことで、店主の顔やお店の場所を知っていただく機会となっている。
  • ご家族や友人と参加していただくことで新規顧客獲得の機会となっており、新規来店客の1割ほどの方の新規契約に結び付いている。
  • 当日は、営業担当者は「健康アドバイザー」としてお客様対応を行っており、該店の名物イベントとなっている。
骨密度測定会の様子

②割引チケットの配布

  • 興行やイベント会社との連携により、地元で行われるコンサート(演歌歌手など)やお笑いの興行などの割引チケットを全軒に配布している。
  • 地元の会社との連携につながる他、他社との差別化にもつながり、落本の防止にも役立っている。

③長期契約顧客へのメリット

  • 長期契約していただいている顧客には継続割引制度を設けている。内容としては、長期契約していただいているお客様には、商品価格の割引率を大きくしている。そのため、同じ商品においても顧客によって価格が異なる。
  • お客様から「契約をやめようかな」と言われた時に、やめてしまうと長期契約の割引もなくなってしまうため、「お休みにしましょう」と提案し、時を見て、再開時に連絡を行うことで、繋ぎ止めることができている。

4.配達員の非雇用化と従業員同士のコミュニケーション

①責任感の醸成

宅配委託契約10か条
  • 平成10年より、配達員を雇用ではなく、フリーランスとして外注契約を交わしている。フリーランスとして契約している人は18人であり、配達業務の短時間契約とし、ダブルワークの人が多い。現在の年代層は50代前後の人が多いが、大学生なども働いている。
  • 配達員を外注することにより、「私のお客様」という気持ちが芽生え、個々の配達員の責任感が強くなり、自分のお客様に対して、大切にする心を持ち、細やかな心遣いができるようになっている。

②働き方改革とモチベーションの向上

コース別の連絡ノート
  • 報酬は月給+歩合制を実施している。それにより、働いた分だけ報酬となるため、健康アドバイザーや配達員のモチベーションアップにもつながっている。
  • 残業はさせない!がモットーとなっている。該店には8時間以上の勤務はない。仕事が終わった人は早い時間であっても退社でき、働く人が自由に働く時間を決めることが出来るシステムとなっており、働き方改革にもつながっている。
  • 年に1回、自由参加で新年会を行っている。該店の場合は、健康アドバイザー(営業)は雇用、配達員は非雇用であり、勤務時間も異なることから顔を会せる機会がほとんどない。連絡事項については、コース別にノートを活用し、情報交換を行っているが、それ以上のコミュニケーションの手段がない。そこで、新年会は配達側、営業側双方から見た意見を交換する場となっている。

経営専門家の意見

健康アドバイザーとして、自分のお客様に責任を持つことが該店の大きな特徴である。どこの店舗より多くの商品知識や健康・栄養知識を持ち、個々のお客様の健康アドバイザーとして対応することにより、顧客との間に信頼感が生まれ、何かあったら、まずは、「い志ばし」さんに電話して聞いてみようという関係性が築かれていることは大きな評価に値する。

10年以上続く「い志ばしんぶん」は、商品だけではない、該店を、店主を知ってもらう顧客とのとても良いコミュニケーションツールになっており、デジタル化が進む現代社会において、アナログでの交流はお客様との心のつながりを感じるものになっている。

配達員の非雇用化などの雇用の多様化については、働く人のモチベーション向上や労働時間の短縮にもつながっており、働き方改革の取り組み方として、多くの学ぶべき点がある。

トップページへ戻る

ページトップへ