第37回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞“信頼”を軸に
地域と共に歩む販売店

佐久ミルクセンター田中牛乳店
代表者田中 正将

ここがポイント

  1. ①卸、宅配、顧客との信頼関係づくり
  2. ②地域ネットワークを活かした活性化への貢献
  3. ③顧客、従業員とのコミュニケーション体制

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

代表の田中正将氏
  • 昭和39年4月、現代表・田中正将氏の祖父である田中耕一氏が牛乳販売店として開業した。その後、二代目を父が継承し、三代目は母が務め、現在は田中正将氏が四代目として事業を担っている。
  • 正将氏が17歳のとき、二代目である父が急逝されたことを受け、経営者としては母が承継したものの、正将氏はその頃から実質的な経営を担うようになった。したがって、正将氏は約30年にわたり店舗経営に携わっている。なお、約10年前に実質的な代替わりが行われ、四代目を継承している。
  • 創業当初は三協乳業の専売店としてスタートし、その後、昭和63年に森永乳業、平成2年に協同乳業との取引を開始し、併売店化を進めてきた。さらに令和2年には雪印メグミルク(八ヶ岳乳業)との取引を開始している。
  • 現在は、八ヶ岳乳業、森永乳業、協同乳業、オブセ牛乳、長野牛乳の計5社のメーカーと取引を行っている。災害等による供給停止リスクを想定し、仕入先を分散させる方針のもと、安定した商品供給体制の構築を図っている。
店頭の様子
店頭の様子

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 6坪 2坪 7台
サブ店 1店 1.5坪 1坪
  • 長野県小諸市にサブ店を有しており、現在の宅配業務の多くは当該サブ店を拠点として行われている。
  • 自販機は温浴施設等を中心に設置している。近年、ビン牛乳を取り扱うメーカーが減少する中、ビン牛乳を継続して取り扱っている点が評価され、設置台数は増加傾向にある。
冷蔵庫内
冷凍庫

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ワゴン車
バンなど
二輪車等
その他
持込車
3台 1台 4台
  • 配送先は保育園、病院、高齢者施設等への卸売が中心であるため、冷蔵車を主体とした配送体制を構築している。
  • 持込車はすべてサブ店で使用しており、バンタイプの車両については配達用途ではなく、営業用として活用している。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 2人 3人
女性 2人 4人 6人
合計 1人 2人 6人 9人
冷蔵車
冷蔵車

(4)経営状況

①令和6年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 115.8 58.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 99.7 41.4
牛乳関連合計 108.5 100.0
宅配卸以外の売上計
合計 108.5 100.0
②令和6年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 99.6 34.3
卸(小売) 110.2 58.6
自販機 157.1 7.0
集団
その他
合計 108.5 100.0

③令和6年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 120.8 60.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 99.7 39.8
牛乳関連合計 111.4 100.0
粗利益率 38.1
  • 佐久市内の保育園12施設をはじめ、病院や高齢者施設等を含む約70件の卸先を有している。これらの卸先とは長年にわたり良好な関係を構築しており、紹介による新規取引の獲得が多く、売上増加に大きく寄与している。
  • 宅配事業については、解約自体はほとんど発生していないものの、顧客の高齢化等による自然減の影響により、緩やかに減少している。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS払
引落 キャッシュレス 合計
早朝   7       80   300 300   680 630本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計   7       80   300 300   680
  • 新規取引先については、業務効率および安定的な回収を目的として、基本的に口座引き落としを推奨している。一方で、引き落とし対応が難しい場合には、袋集金による対応を行うなど、顧客の事情に配慮した柔軟な対応を行っている。
  • 配達はすべて週3回の頻度で実施しており、顧客の要望に応じ、きめ細かな対応を行っている。

(5)立地環境

  • 新幹線が停車し、首都圏への通勤圏としての側面を持つ佐久市を中心に、観光地としても知名度の高い軽井沢町を含む近隣市町村へ営業を展開している。サブ店のある小諸市、上田市、東御市など、東信地域全域をカバーしており、商圏内世帯数は約8万世帯である。
  • 当該エリアは、宅配だけでなく、卸の競合店も多数存在しており、市場競争が激化している状況にある。

経営方針

①現在の方針

  • 「お客様との約束に真摯に応え、地域に根付き信頼されること」を経営方針として掲げている。
  • 創業以来、「地域」および「信頼」を経営の軸に据え、顧客や取引先との関係性を重視した経営を継続してきた。

②今後の展望

  • 現在は「乳の可能性を広げたい」という想いのもと事業を展開しており、将来的には牛乳の良さをエンドユーザーに直接伝えることを目的としたカフェ事業の展開を検討している。
  • カフェにて「牛乳を使用したデザート」等を提供することにより、牛乳の新たな調理方法や魅力を知ってもらうことを狙いとしている。また、商品を「売りに行く」形態よりも、「来てもらう」形態の方が効果的であると考えており、来店客の声を直接聞ける場としての価値も重視している。
  • さらに、宅配顧客への割引チケット配布等を行うことで、既存の宅配事業との相乗効果を図ることも想定している。

活動内容

1.顧客との信頼関係づくり

①卸先との良好な関係

  • 約70件の卸先と良好な関係を構築している。取引の際はお店の損得よりも「相手にとって何が最適か」を考えた発言・行動を心がけており、これが信頼関係を生み出している。
  • こうした姿勢により高い信頼関係が築かれており、それによって顧客からの紹介が増え、取引拡大につながっている。具体的には、ビン牛乳の取り扱い廃止に伴う紹介や、廃業店の引継ぎに関する相談などがあり、信頼に基づく関係性が新たな取引へとつながっている。

②顧客ニーズへの対応と提案

  • ホテル等に対しては、用途に適した商品の提案を行うほか、「価格が上がるよりも商品が入荷しない方が困る」という観点から、安定供給を重視した提案を行っている。
  • 配達においては、幼稚園等の時間指定に対応するなど、先方の状況や要望を踏まえたきめ細かな対応を行っている。
  • 集金については口座引き落としを基本としつつ、訪問集金の要望がある場合には袋集金で対応するなど、顧客の事情に配慮した柔軟な運用を行っている。

2.安心安全を最も重視した取り組み

①商品供給体制

  • 現在、八ヶ岳乳業、森永乳業、協同乳業、オブセ牛乳、長野牛乳の計5社のメーカーと取引を行っている。災害等による供給停止リスクを想定し、仕入先を分散させる方針のもと、安定した商品供給体制の構築を図っている。
  • ビン牛乳の取り扱いメーカーが減少する中、複数メーカーとの取引によるリスクヘッジを行っている点が強みとなっており、結果として引き合いや紹介の増加につながっている。

②品質管理

  • 夏場は品質保持を最優先し、往路では空きビンの回収を行わず、復路で回収する方法を採用している。これによって、空きビンと商品を混載することによる温度上昇を防いでいる。
  • 蓄冷剤の凍結には急速凍結機(マイナス60度)を使用しているほか、冷蔵車を3台活用するなど、徹底した温度管理を行っている。

③配送面の管理体制

  • 配送ミス防止のため、宅配用および卸用に分けた配達マニュアルを整備している。
  • 配達員の急な欠勤時にも対応できるよう、店主自身が顧客情報を把握し、常に代配が可能な体制を整えている。また、判断に迷う場合には必ず確認・連絡を行うルールを徹底しており、大きな苦情を未然に防止する仕組みを構築している。

3.地域貢献

①地域への感謝を起点とした社会貢献活動

  • 商売が継続できていることへの感謝を起点に、地域社会へ貢献することで認知度向上を図る方針を掲げている。目先の利益を追うのではなく、地域への感謝を行動で示すことで、10年後・20年後を見据えた商売の基盤づくりを重視している。
  • 「こどもを守る安心の家」への参画や、安全パトロールへの協力など、地域の安全・安心を支える活動を継続的に実施している。行政や警察とも連携し、地域の一員としての役割を積極的に果たしている。

②地域ネットワークを活かした関係づくりと活性化

  • 商工会等が主催する地域イベントに積極的に参加し、異業種企業との交流を通じたネットワーク構築に取り組んでいる。
  • 異業種との連携により、地域活性化を目的とした企画を立案・実施しており、収支よりも地域貢献を優先した姿勢で取り組んでいる。これらの活動は、地域の活性化と同時に、田中牛乳店の認知度向上につながる好循環を生み出している。
  • 佐久商工会議所の小規模企業振興委員を務めるなど、地域経済への貢献にも積極的である。過去には青年部やJC等にも参加し、地域内の人脈形成に努めてきた。また、自社マーク以外の販売店とも良好な関係を築いており、業界内外を問わず、地域全体を意識した関係づくりを行っている。

4.顧客・従業員とのコミュニケーション体制

①従業員とのコミュニケーション

  • 月2回、全従業員参加の情報交換会を実施し、気軽に話ができる雰囲気づくりを重視している。現場で得られたお客様の情報を早期に吸い上げることで、チャンスや課題への迅速な対応につなげている。
  • サブ店への配達は店主自らが行い、日常的な対話を通じて従業員の不満や変化を早期に把握することで、離職リスクの低減を図っている。

②お客様との双方向コミュニケーション

  • お客様との関係においては、一方通行の情報伝達ではなく、双方向でのコミュニケーションを重視している。
  • 現在は、お客様との相互コミュニケーションツールとしてLINEの活用にチャレンジしている。

経営専門家の意見

「利益よりも信頼を優先する」という一貫した経営姿勢のもと、60年以上にわたり地域で商売を継続してきた点は高く評価できる。常に「相手にとって何が最善か」を判断基準として行動してきたことが、現在の厚い信頼関係と安定した取引基盤の構築につながっている。

特に卸先との関係性は顕著であり、先方の事情や現場の状況を踏まえた提案など、相手本位の対応が紹介による取引拡大を生み出している。また、複数メーカーとの併売によるリスクヘッジを行うことで、ビン牛乳の取扱メーカー減少という業界環境の変化を乗り越え、結果として引き合いの増加につなげている点も、先を見据えた堅実な経営判断といえる。

さらに、品質保持を最優先とした夏場の配送方法に代表されるように、効率や利益を優先しないきめ細やかな対応が、大きなクレームを未然に防ぎ、信頼の積み重ねにつながっているものと考えられる。

このように、目先の収支以上に顧客および地域からの信頼を重視する姿勢を貫くことで、長期にわたる安定した関係性を築き上げてきた点は秀逸である。今後も長期的な視点で「信頼を積み重ねる経営」を実践することにより、地域にとってさらに欠かせない存在となることが期待される。牛乳販売店の枠を超え、地域の暮らしと安心を支える存在として、今後も安定的かつ持続的に発展していくことを大いに期待したい。

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