第37回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

農林水産省畜産局長賞サービス付高齢者住宅居住者向けを
重点販売先とする販売店

道新りんごステーション
代表者伴野 卓磨

ここがポイント

  1. ①サービス付き高齢者住宅居住者向けを重点販売先とする
  2. ②AIコンタクトセンター設置で顧客問い合わせに対応
  3. ③落本対策、大切なお客様を維持するための方策

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史

1988年
北海道新聞永田販売所として設立された新聞販売所
2010年
北海道新聞永田販売所入社
2020年
森永乳業の宅配事業を開始
2023年
「地域の健康ステーション」として高齢者施設で健康セミナーを開始
2025年
DX部門を設立し、AIコンタクトセンター業務を開始

(2)代表者(発表者)の経歴

2007年
金沢大学理学部博士課程修了(理学博士)
2008年
六花亭製菓株式会社入社
2010年
同社を退職 北海道新聞永田販売所入社
2019年
同社代表取締役に就任
事務所外観
事務所玄関前

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 2坪 1坪

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ワゴン車
バンなど
二輪車等
その他
持込車
2台

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 1人 3人
女性 1人 2人 3人
合計 1人 2人 3人 6人

(4)経営状況

①令和6年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 112.6 99.8
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 200.0 0.2
牛乳関連合計 112.7 100.0
宅配卸以外の売上計
合計 112.7 100.0
②令和6年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 112.7 100.0
卸(小売)
自販機
集団
その他
合計 112.7 100.0

③令和6年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 120.2 99.8
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 0.2
牛乳関連合計 120.4 100.0
粗利益率 50.1

④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 郵便局
CVS払
引落 キャッシュレス 合計
早朝                       187本
午前       5   25 25 75   30  
午後       3   15 15 40   25  
夜間                      
その他                      
合計       8   40 40 115   55 250

(5)立地環境

該店は札幌市営地下鉄南北線南平岸駅から徒歩10分の所にある。

  1. 主な商圏である札幌市豊平区は市内中心部に近く、住宅地として発展してきた。
  2. 大学や商業施設、公園、スポーツ施設等が充実し、住みよい街として人気がある。
  3. 競合としては森永乳業2店、明治乳業2店、雪印メグミルク1店、ヤクルト1店が存在している。当店は住宅地に位置しているが、半径2㎞以内には競合店はない。

経営方針

経営理念

「地域のヒト・モノ・コトをつなぎ、豊かな地域生活をサポートする」

経営方針

「経営強化と地域貢献の両立」を目指す

コミュニティの希薄化、少子高齢化、健康などの様々な地域課題に対し、「届ける・伝える・つなぐ」という地域に密着した牛乳販売店ならではの強みを活かし、地域新聞の発行、講演会の実施、健康セミナーなどの様々な地域貢献活動を行ってきた。牛乳販売店の強みである配達網、営業力、集金システム、ブランド力、宣伝力をフル活用し、「経営強化と地域貢献の両立」を目指していく。

活動内容

1.サービス付高齢者住宅居住者向けを重点販売先とする

①高齢者施設や自治体と連携した「フレイル予防健康セミナー」で新規客獲得と固定客化を図っている

  • 下記のような優良潜在顧客層が集まって暮らしている「サービス付高齢者住宅」居住者をターゲットとする
対象者の概要
  1. 健康課題を抱えている
  2. 買い物難民状態にある
  3. 経済的にゆとりがある
セミナーの内容

フレイル予防をテーマとし次の3つの観点で実施している

  1. 身体的フレイル予防;健康トレーナーによる運動
  2. 認知的フレイル予防;脳トレクイズなど
  3. 社会的フレイル予防;地域住民との交流
プログラム内容(時間は約60~90分)
  1. ミルクよもやま話;乳製品の歴史、雑学・豆知識
  2. 健康運動
  3. 健康セミナー;クイズ、乳製品の商品紹介
  4. アンケート実施
  5. 骨ウエーブ測定
  6. 参加者全員に森永乳製品約4~5種類をお礼として提供
バラエティー豊かな講師陣
  1. 健康トレーナー
  2. パラパラダンス講師
  3. バランスボール講師
  4. ヨガインストラクター
  5. 学生NPO団体代表
  6. 理学療法士(足づくり)
  7. 理学博士・コラムニスト
効果及び評判
  • 一方的に話すセミナー方式ではなく、クイズやゲームを通じてコミュニケーションを図る参加型のイベントにして満足度を高めようとする内容にしたので、参加者自身に健康維持を意識してもらえるようになった。
  • 健康セミナーを高齢者と地域を結ぶつながりの場づくりとして、高齢者施設に提案することで、定期的な開催に結び付けている。
  • 地域で活躍する幅広い人材を講師に招いていることで、「今まで参加したイベントで一番面白い」と好評で、リピーターや新規参加者につながっている。
販売効果
  • アンケート記入時にスタッフが参加者のテーブルに寄り添い、声掛けすることで参加者の2~3割程度の契約につながっている。
  • 1年後の継続率が約80%と非常に高い。これは、定期的なイベント開催による関係性の構築、健康課題をサポートしてくれているとの実感、経済的にゆとりがあるなどの要因によるものと考えられる。

②自治体と連携した健康セミナーを札幌市全域に横展開する

課題

地域の高齢者の健康寿命の延伸

目的

官民連携によるマーケティングモデルの構築及び高齢者施設以外への販路拡大

内容

札幌市豊平区役所との共催で「豊平区フレイル予防健康セミナー」として開催。区役所保有の血管年齢測定器、脳年齢測定器、歩行姿勢測定器と森永乳業が保有する骨ウエーブによる健康測定で付加価値を高める。

今後の展開

札幌市全域に横展開する。区単位だけでなく、連合町内会単位でも開催し、新聞社やスポーツクラブ、高齢者施設など地域のステークホルダーと連携し「地域の健康ステーション」として高齢者のあらゆる健康課題をサポートしていく。

2.乳製品の歴史や効能の啓発活動に注力

  1. 地域ラジオ局・FMアップルで毎月第3水曜日に「おいしい歴史物語」を放送している。内容は、食の魅力・歴史の面白さを伝えることをコンセプトにして、ミルク・ビール・カレーなど様々な食材をテーマにした番組を提供、ポッドキャスト番組としても配信中で、総視聴回数は32,000回超に達している。
  2. 北海道新聞のコラム欄「朝の食卓」にチーズやビールの歴史モノを執筆している。
  3. 食の歴史をテーマにした講演会や文化教室を随時開催
  4. 北海道農業専門学校と協力し、ジンギスカンと乳製品をテーマにした「まち歩きツアー」を開催。
  5. 春には、牛乳応援「クラーク博士のアイスクリーム」プロジェクトを実施
    学校給食がなくなる春休みや、季節的に牛乳の生産が多くなる春先に、生乳が捨てられる恐れが出ている。北海道の牛乳を守るため、札幌で最初にアイスクリームを食べたクラーク博士のレシピをもとに、アイスクリームを作って楽しく牛乳を消費しようという趣旨で実行しているものである。
セミナー案内書
アイスプロジェクト案内書

3.AIコンタクトセンター設置

課題

宅配外出中など電話が繋がらないので顧客の不満につながっていた

目的

電話対応の自動化による顧客サービスの強化

内容

AIテクノロジーを活用したAIコンタクトセンターを自社開発し運用開始

  • 商品の配達ミス、休止、その他の問合せ等をナビダイヤルで選択、対応する。

効果

電話業務削減で宅配や営業への時間を増やせたことで経営改善につながった。

  • 電話が繋がらないという顧客からの不満をなくすことができた。

4.品質管理、温度管理の徹底

  1. 保冷剤は、北海道は寒冷地ではあるが、受け箱を設置してある玄関フードは暖かいので、原則として全季節を通して使用している。
  2. 配達の都度、受け箱と蓄冷材の拭き取りを義務付けている。汚れの目立つものは取り替えられるように常に交換用の受け箱を持参している。その後、専従従業員が清掃状況をチェック、写真撮影し宅配員と状況を共有している。その結果、現在は見違えるほどキレイになっており、配達員のモチベーション向上にもつながっている。
  3. 食品衛生法の改正に伴い、赤外線非接触温度計を導入し、精密な温度管理を行っている。配達前の冷蔵庫内の温度、積み込み時、配達途上に測定、記録している。(HACCP準拠)
事務所風景
整頓された受け箱等

5.人員確保と戦力化

①業務指示、安全対策等

社用車にドライブレコーダーを搭載して万一に備えている。アルコールチェッカーの測定を毎日実施。毎日の朝礼で交通安全等の注意を喚起している。

②売上情報、新商品情報等

毎週月曜日開催の営業会議で新商品情報などを共有するとともに、物販やイベント、チラシ等についてスタッフ全員で把握するようにしている。

③目標達成状況の把握

営業会議では、前週の振り返り、目標獲得数に対する進捗状況、週間活動予定、解約状況、売上予測、顧客情報を共有している。

6.落本対策:大切なお客様を維持するための方策について

  1. ターゲティングの重要性
    健康課題を抱えた顧客層をターゲティングし、適切なマーケティングを行うことが一番大事であると考えている。健康セミナーからの顧客の継続率は外部セールスに比べて約3倍になっている。また、生涯顧客価値は約4倍と高い効率を示している。
  2. 毎月森永乳業の製品を「サンキュウクーポン作戦」としてプレゼントしている
  3. チラシを毎週配布;物販、製品、販売店、クーポン、イベント等の各情報チラシ
  4. 凡事徹底;挨拶、受け箱清掃、当たり前のことをしっかりやる
  5. 訪問活動;ビン製品の容器切り換え、LINE導入の際には全軒訪問し説明、納得してもらった。結果としてビン切り換えによる落本はゼロであった。また、年末にはお礼として豆腐を全軒に手渡し配布した。併せて、受け箱の清掃状況等を確認した。

7.情報発信

「広報さっぽろ」
  1. チラシを毎週配布…前出
  2. 地域FM「FMアップル」の自社番組「おいしい歴史物語」でイベント情報を案内
  3. 「広報さっぽろ」で健康セミナーを案内

経営専門家の意見

該店の歴史は、2010年に新聞配達店に入社したことから始まるが、諸般の事情から2020年に森永乳業の宅配事業も開始して5年目という、牛乳販売業としては新しい販売店である。その新聞販売業と乳製品の販売を効果的に組み合わせたイベント営業が、高い効果を上げている販売店である。

過去には、従業員による訪問営業・電話営業、セールス専門会社の利用等で拡販を図ってきたが、期待したほどの効果が得られなかったので、自店を「地域の健康ステーション」と位置づけて、高齢者施設での健康セミナーを通じた販売促進活動に注力してきたことが高い効果を生んでいる。そして、その効果を豊平区だけでなく行政とも連携し、札幌市全体にも広げようと活動している。

対象は、経済的にゆとりのある高齢者が居住している「サービス付高齢者住宅」居住者で「フレイル予防健康セミナー」として実施。内容も講師陣も斬新なものとしており、受講者に好評で客単価、継続率ともに高い値を示している。

また、新聞や地域のFMラジオ局を通して、乳製品の歴史や効能の啓発活動にも注力している。特に北海道新聞のコラム欄に「朝の食卓」として店主が執筆していることは、知名度向上に有効に働いているのではないかと思う。

業務効率化の一環として、AIコンタクトセンターを自社開発・運用している。元々、新聞販売店用に開発したものだが、牛乳販売用にも有効活用できている。牛乳の宅配をしている時に、事務所の電話が通じないという不満が解消されて顧客からも喜ばれている。今後は、牛乳販売店用にカスタマイズして、全国の牛乳販売店に提供していきたいという遠大な構想も抱いている。

それから、品質管理の一環である保冷剤の使用方法について、従来は、寒冷地では冬場には使用しないと認識していたが、該店では、受け箱が設置してある玄関フード内は暖かい場合があるので、原則として年間を通して使用しているとのこと。これも新しい発見だと感じた。

最後に、該店の将来は明るいなと感じた。新聞配達業務とコラボしたイベント営業、新聞やラジオ等を利用した情報発信、AIコンタクトセンターの活用など、随所に新しい流れを作り出し活用していることで、営業力向上とともに更に何か新しい動きが生み出されるのではないかと期待している。

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