第34回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 Jミルク会長賞顧客満足と従業員満足で
お客様の健康を守る

株式会社STS
代表者三溝 誠

ここがポイント

  1. ①配達の各種の営業展開による販路開拓(お願いセールス脱却、ゆうパック宅配)
  2. ②仕事の効率化と従業員教育
  3. ③従業員満足度の向上

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

  • 現社長は、牛乳販売店とは別に全国の森永販売店の新規顧客獲得のためのセールスの派遣事業を展開している。
  • 20年以上前に前任の社長と知り合い、セールスの派遣事業を通じて、コンサルティング業務も行っていた。その際に、社長から「あなたは販売店を経営していないから・・・」と言われることがあり、販売店により良いアドバイスをするためにも販売店経営について取り組むことにした。
  • 2008年に法人格を取得し、自宅横の空き地に新店舗を開業、その後、廃業店を引き継ぎながら経営拡大を図り、2019年には現在の5店舗となった。
  • スタート時は森永の専売店であったが、2017年に地域乳業の廃業店を引き継いだことから併売店となった。
  • 2018年には前任の社長の引退に伴い、現社長が就任した。
  • 現社長は、2022年9月1より、フルヤ乳業とのアドバイザー契約を結び、新商品のプロデュースを手掛けている。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 7坪 3坪
支店 4店 16坪 12坪 1台
  • 本社は成田店であるが、実質的な本社機能を行っているのは我孫子店となる。
  • 成田店、我孫子店、四街道店、江戸崎店、旭店の本支店で5店舗開設。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
21台 2台
  • 保冷車は有しておらず、全て蓄冷剤を利用しての配達を行っている。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 2人 1人 52人 55人
女性 6人 21人 27人
合計 2人 7人 73人 82人
  • 各店の店長は従業員であるが、ほとんどがパート・アルバイトで賄っている。

(4)経営状況

①令和3年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 108.2 94.7
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 103.5 5.3
牛乳関連合計 107.9 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 107.9 100.0
②令和3年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 107.9 100.0
卸(小売)
自販機
集団
その他
合計 107.9 100.0
  • 牛乳関連の割合は約95%、その他の宅配商品が5%と牛乳関連を中心に販売している。また、売上高の前年対比については、牛乳関連で108.2%、その他宅配で103.5%と全体を通しても107.9%と伸びている。
③令和3年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 119.3 95.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.5 4.4
牛乳関連合計 118.3 100.0
粗利益率 53.8
  • 粗利益についても牛乳関連は前年比119.3%、その他の宅配商品100.5%と伸びており、牛乳関連の伸びが顕著である。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 PayPay
合計
早朝   70 4908     13 8 2743 290 1924 4978 8383本
午前     2116 100   4 9 1077 399 727 2216
午後                      
夜間                      
その他         921     494   427 921
合計   70 7024 100   17 17 4314 689 3078 8115
  • コースは週2コースが中心である。週2コースの午前配達については、保育園などの施設配達が中心となっている。また、他のコースについてはゆうパックでの配送が記載されている。
  • 集金方法については、手集金をほとんど行わないようにし、銀行引き落とし、郵便局引落し、コンビニ払いを進めてきたが、最近はコンビニに行くのが面倒であるとか、忘れてしまうというお客様の声に応えるため、自宅で支払いができるQRコード決済やクレジットカード決済を2022年9月より導入した。

(5)立地環境

  1. 当社の営業店は本支店合わせて5店舗あり、それぞれの人口世帯数は以下のとおりである。
  人口(人) 世帯数(世帯)
成田本店 629,000 320,000
我孫子店 968,000 414,000
四街道店 1,044,000 486,000
江戸崎店 556,000 268,000
旭店 234,000 101,000
  1. 本社である成田店は市街地から約20km、我孫子店は市街地から約9km、四街道店は市街地から2.8km、江戸崎店は市街地から1km弱、旭店は市街地から4km弱の住宅地に位置しており、配達スタッフも集めやすい立地である。

経営方針

  • 「顧客満足度及び従業員満足度を高めること」を経営方針に掲げている。
    そのため、「お願い型セールス」を非とし、商品知識を徹底的に学び、お客様が抱えているまたは、予防したいと考えている健康問題にお役に立つ商品を薬機法に抵触することなく伝えられるようお客様の健康を守るお手伝いをしている。

活動内容

1.各種の営業展開による販路開拓

①お願い型セールスからの脱却

宅配商品の特定成分の案内チラシ
  • コロナウイルス感染症拡大、物価高の影響などを受け、経済的な余裕があまりない現代において、自分や自分の大切な家族のためなら時間を割き、出費をいとわないものの、見ず知らずの他人のために時間を割き、お金を払う人は少ないと考え、商品を勧める際には、販売員からの「お願い」はせずに、お客様に関心を持ってもらい、誰のために、どんな目的なら喜んで商品を購入していただけるのかについて聞き取りをするようにしている。
  • お客様の関心事が分かった際には、正確な情報をお伝えし、宅配専用商品の特定成分がそのお客様にどのように役立つのかについて、チラシなどを使い専門的に説明し、長期的にお客様の健康のお手伝いをしたいとアドバイスしている。

②ゆうパック宅配の実施

ゆうパックを使った宅配チラシ
  • ショッピングモールやスーパーでイベントセールスを行った際に、販売店の配達エリア外やセキュリティの厳しいオートロックマンションなど、配達がどうしても不可能な事例が多くあることに気づき、2018年よりゆうパックを利用した宅配を導入した。
  • 賞味期限の長いこと、瓶の回収がない商品ということでヨーグルトに絞り、2週間に1度ゆうパックで14日分送る。

    送料は、該店持ちであり、郵便局との交渉により年間ノルマを達成することを条件に配送料を下げてもらい、ゆうパックを利用しても採算が合うような仕組みにしている。

    送るという利点を活かし、離れて住む親や子どもに送りたいという要望にも応えることができるため、顧客は増加している。

    これまで約3,000件の申し込みがあり、全国の牛乳販売店へ業務移行を行ったため、該店では現在1,200件の対応をしている。

施設セールスの拡大

施設セールスの宅配の様子
  • 人との接触が避けられない保育園・幼稚園・高齢者施設・介護施設などコロナウイルス感染症と闘いながら働いている方のお役に立ちたいという思いから当サービスを開始した。
  • 職場にまとめて商品を届けることにより、配送コストが抑えられることで通常より安い価格で利用できるような仕組みを作った。

    職場で召し上がる分だけではなく、自分や家族用の1週間分を受け取り、自宅に持ち帰っていただくようにし、半年で約2,000人のお客様を獲得した。

  • 1人ずつ分けて商品を袋に入れ、名前をつけて、保冷剤入りの発泡スチロール箱に入れて、分かるように配達を行う。
  • 千葉県佐倉市の市役所で働く900人以上の方のためにサンプルをお届けした際には、市長に贈呈式の機会を与えていただくなど、当社の取り組みを評価していただいている。市役所内の200人以上の方が注文をしていただき、「お陰様で元気に働けています」との感謝の言葉もいただいている。

新商品開発

フルヤ乳業と共同開発したヨーグルト
  • 当社社長は、お客様の要望に応じたこれまでにない商品を作りたいとフルヤ乳業と共同で商品開発を行っている。

    自身の親の健康を考えた際に足りていない栄養素は何かについて検討ところ、右のようなヨーグルトができあがった。

2.落本防止のための各種取り組み

落本防止の理由は「飽きた」「飲まなくなった」ということであると考え、以下のようにいろいろな取り組みにより、落本防止対策を講じている。

①各種プレゼントにより契約継続及び新規商品契約へ誘導

継続1、3、5か月ごとにプレゼント
豆腐購入時プレゼント
新規契約時
1、3、5か月と続けることにより プレゼントを進呈。
森永の豆腐1ケースお買い上げ時
1ケースお買い上げ毎に、豆腐と相性の良い商品を2点プレゼント。
代金の銀行引き落とし選択時
森永豆腐6丁をプレゼント。
新商品開発時
前述のフルヤ乳業との連携で開発された際には、全戸に配布したことにより、500件からの注文につながった。

以上のように機会がある度にプレゼントすることで、お客様に楽しみを提供し、継続していただくだけではなく、新商品の味を知ってもらうための機会としている。プレゼントの本数・個数は契約本数に合わせてプレゼントしている。

②STSデザート倶楽部

STSデザート倶楽部のチラシ
  • STSデザート倶楽部に登録していただいたお客様には、契約本数に応じて、偶数月にデザートを2品プレゼントまたは、特別価格で販売している。
  • 月によって届くデザートは異なるため、お客様は1年に12個のデザートを食べることができ、新規の注文にもつながっている。

③カレンダークーポン

2カ月に1度のお楽しみクーポンがついたカレンダー
  • カレンダーの一番下に2カ月ごとのクーポンをつけ、店長おすすめデザートを1つプレゼントしている。

以上のような取り組みにより、ほとんどのお客様が1カ月に1度は何らかのプレゼントをもらえる仕組みになっている。このプレゼント作戦により顧客満足度も向上している。

3.仕事の効率化と従業員教育

①小仕分けシステムの導入

小仕分け用リスト
小仕分け毎に分けられた商品
  • 牛乳配達を行う上で、キャンセルの原因となる1番の理由は「誤配」である。
    誤配を極力減少させるために「小仕分けシステム」を導入している。小仕分けシステムとは、1つの配送ルートをいくつかに区分し、1区分ごとに配送する商品を分け、配送途中で配送ミスに気付くことができるといったシステムである。
  • 配送コースの終盤になってから、残りの本数などでミスを発見することが多いが、この小仕分けシステムを導入することにより、早い段階でミスに気づくことで、誤配を防ぐことができる。

②徹底した商品知識の習得

  • お客様に正しい情報をお伝えするために、商品知識の勉強会を定期的に行っている。
  • 社長が講師となり、乳酸菌とビフィズス菌の違い、ラクトフェリンの成分についての説明を行い、各メーカーのグルコサミン商品を一覧にするなど、競合商品との違いを説明できるように教育している。

4.従業員満足度の向上

①やる気のでる報酬体系

  • 配達員には歩合制と時給保障の2本立てで報酬を計算し、高い方を支払うようにしている。その理由は、配達員が歩合制で働いた方がより高い報酬をもらえることを理解し、顧客数を増加させる努力をするようになるからである。その結果、ほとんどの配達員は歩合制での報酬となっている。
  • また、各店の社員については、店舗手当を採用し、お店の顧客数が増加すれば、自分の報酬も増えることで、落本防止や新規契約者の増加に努力するようになり、仕事に責任を持ち、自発的に活動してくれるようになるからである。

社販の利用による商品愛の醸成

  • 当社では、仕入れ値価格で社販を行っている。福利厚生の一環として始めた事ではあるが、市販の商品と宅配商品の違いを従業員自らに知ってもらいたいという思いが強い。
  • その結果、宅配商品を従業員が実際に利用し、自身の体験をもとにどのような効果が期待できるのかについて熱く語ることが出来るようになり、取り扱い商品に対する商品愛が育ってきている。
  • また、商品の仕入れ値を知ることで、会社の利益についても伝える手段にもなり、売上やコスト感覚も身についてきている。

経営専門家の意見

社長の経歴が牛乳販売店の営業セールスの派遣会社から販売店へ参入してきていることもあり、お客様の声を第一に考え、無理な営業はしない、お客様に納得していただいたうえで、契約を結んでいただくことが経営の基本となっている。

配送コストを抑えたりするなどの工夫をしながら、単価を抑えることやゆうパックの利用など配送方法を変更することで契約しやすく、継続していただきやすい仕組みづくりを行ったり、更にお客様が飽きないように毎月何らかのプレゼントをしながら、新商品紹介や健康情報をお伝えするなど、お客様に継続することの楽しさやメリットを提供している点は大いに評価できる。

また、小仕分けシステムについては、長年の課題である誤配の削減につながることに加え、小さな工夫でどの販売店でも活用できるシステムであることから、他店においても導入していきたいシステムである。

従業員に宅配商品の良さを実感してもらい、やる気の出る報酬体系をとるなど従業員満足も会社の大きな力となり、顧客満足につながっていると思われる。

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