第34回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

最優秀賞

農林水産大臣賞地域貢献重視と
テレアポ移行で業績好調

株式会社鶴田乳業
代表者鶴田 勘治

ここがポイント

  1. ①密接な地域貢献活動
  2. ②安全対策(衛生・品質・お客様満足)
  3. ③従業員教育としての交通安全指導の実施

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史

店頭の様子
代表の鶴田勘治氏
昭和32年
祖父が鶴田乳業商会を創業
昭和45年
父親 功氏が2代目として事業承継
平成15年
勘治氏が入社
平成27年
勘治氏が社長に就任し3代目として事業承継
平成29年
株式会社鶴田乳業に法人化

(2)代表者の略歴

平成10年
地元の高校卒業、食品会社に入社
平成15年
鶴田乳業商会に入社

創業当初は牛乳とアイスクリームの卸売業を主体としていたが、得意先が小規模スーパーと小売店だけの利益率の低い商売だった。その状況に危機感を抱き宅配事業に注力、事業を拡大してきた。

現在も卸事業は精力的に行っており、その上に特需先(病院、幼稚園・保育所、老人ホーム、自衛隊、刑務所、障がい者施設など)を順次開拓して事業全体の拡大に繋げている。また、お客様の要望に応じて乳製品以外の食料品や、その他宅配二次商品を扱うことで高い顧客満足を得ている。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 3.5坪 1.5坪 6台 8台
支店 1店 1.5坪 2台

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
2台 5台 7台 1台
保冷車
冷蔵車

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 6人 6人 13人
女性 2人 1人 12人 15人
合計 1人 2人 7人 18人 28人

(4)経営状況

①令和2年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 108.9 65.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 108.6 27.2
牛乳関連合計 108.8 92.8
宅配卸以外の売上計 109.2 7.2
合計 108.8 100.0
②令和2年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 110.9 35.5
卸(小売) 104.8 59.1
自販機 154.2 5.4
集団 0 0
その他 0 0
合計 108.8 100.0
  • 卸業務が59.1%を占め粗利益率は低め

③令和2年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 118.3 89.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 108.8 10.4
牛乳関連合計 117.2 100.0
粗利益率 33.3
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 合計
早朝     15 8   87   588 1575   2250 1667本
午前       12              
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     15 20   87   588 1575   2250

(5)立地環境

商圏内人口 約724,000人  世帯数 約313,400世帯

  1. 本店は佐賀県神埼郡吉野ヶ里町の吉野ヶ里遺跡公園から徒歩10分くらいの、吉野ヶ里公園駅通りに位置している。本店所在地は佐賀市方面や福岡県久留米市方面の両方向にアクセスが良好であり、比較的広い商圏となっている。商圏が広い分だけ競合店も多く、常に熾烈な販売競争を行っている。
  2. 支店の八女店からは八女市黒木町への配達のみである。

経営方針

  1. お客様・地域・社員とのコミュニケーションを大切にする
  2. お客様の声を大切にする
  3. お互いに満足できる仕事をする
夢や長期的目標
  1. 日均2000本
  2. 九州一の販売店

活動内容

1.コロナ禍対策として実施したテレアポ営業が大成功

コロナ禍対策として苦渋の選択をしたテレアポ営業が好評で期待以上の好業績を上げている。行動の制約を余儀なくされた2020年6月から開始し、現在まで好調に推移している。本店内は手狭だったので、近くの喫茶店の2階空きスペースを借り受けてテレアポ専用のブースとした。営業はアポインター3名、クロージング3名の6名体制で実施している。

※近年の売上高の伸び率は次の通り

  売上高伸び率 前年比
2019年 100%  
2020年 97.7% -2.3%
2021年 126.3% +26.3%
2022年 108.8% +8.8%

業績好調のため今後も継続実施する予定である。

ブースは喫茶店の2F
テレアポブースの状況

2.密接な地域貢献活動

①デスク配(職域販売)の実施

  • 地域で働く企業の従業員の健康維持の一助になればとの願いを込めて職域宅配を実施している。乳製品だけでなく冷凍食品やパンなども販売することで、仕事中社外に買物に出かけることなく商品が購入できることで外食の必要がないため、お金の節約と時間の有効活用にも役立と大変喜ばれている。
  • 現在は役所関係7か所と企業6事業所の計13か所で実施中

②「軽トラック朝市」へ出店

  • 吉野ヶ里公園内の駐車場で毎月第一日曜日に開催される「軽トラック朝市」に出店している(商工会議所主催に協賛)…現在はコロナ禍のため休止中であるが、売上はあまり大きくはないものの、なによりも地域住民とのコミュニケーションがとれるという効果があるので、早期の再開を願っている。

③骨強度測定会などイベント拡張を実施

  • 拡販活動として2016年から骨の健康度チェック機を使用して骨強度測定会をスーパーマーケットで実施している。郵便局は現在休止中。

④老健施設でも骨強度測定会を実施

  • コロナ禍以前は毎月1回の頻度で実施していたが、現在は部外者立ち入り禁止となっており休止中。
  • 該店は取引メーカーも多く各社の製品を取り扱っているので、顧客の各種の要望に豊富な製品ラインアップで対処している。それも売上拡大への大きな強みとなっている。
  • 骨強度測定会、「軽トラック朝市」、テレアポ営業を含めて、まずはサンプルを提供し後日、改めて訪問し契約に結びつけることにしている。サンプル提供時には混雑などのために効能などを詳しく説明できないことから、改めて面談することにより契約がスムーズになる。

3.経営管理としての経営者自身のスキルアップ

①雪印メグミルク協会を通しての経営能力向上

  • 九州青年部部長として年4~5回東京での勉強会に参加してスキルアップを心掛けている。研修内容はキャンペーンやプレゼントなどの拡販に関するもの、従業員の管理方法、顧客満足度向上対策などである。

②同マーク他店と連携した研修

  • 売上拡大、従業員管理、顧客満足度向上対策など多くの課題について相互に学ぶ機会として参加している。

③メーカーでの研修

  • メーカーの独自素材や商品情報、経営ノウハウ等の研修でレベルアップに努めている。

4.顧客とのコミュニケーション活動

①おはようカードによる商品交換

  • おはようカードの利用により掲載カタログの商品との交換ができる。最低枚数5枚から交換できる内容となっている。
好感商品カタログ
全国の珍しい商品カタログの一部

②健康食品や全国の珍しい商品などの提供が好評

  • 通常の店舗では手に入らない珍しい商品が買えるということで、カタログの配布を待ち望んでいる顧客も多い。

5.安全対策

①HACCP対応

  • 顧客に幼稚園・保育園が70か所、老人ホームが35か所あるので、従来から温度管理は徹底していた。従ってHACCPの考え方を取り入れた衛生管理にもスムーズに移行することができた。

②取り忘れ対策

  • 受箱に前回配達分の取り忘れがあった場合は新しい品と取り換え、併せて注意喚起のメモを入れている。顧客には高齢者が多いため賞味期間が十分あっても安全のために取り換えるようにしている。

③受け箱の清掃、取り換え

  • 顧客との唯一の接点である受け箱の管理には気を使っている。配達時、汚れに気づいたらウェットティッシュで拭き取ることにしており、特に汚れのひどいものや色褪せしたものは新品と取り換えている。
取り換え用受け箱
翌日の配達予定
次回の配達予定
  • 翌日の配達予定を前日に区分けしておくことで、当日はスタッフ同士の混雑を避けている。
  • 整然と整理されている冷凍庫、冷蔵庫内の状況
冷凍庫内の状況
冷蔵庫内の状況

6.従業員教育としての交通安全指導の実施

  • 交通事故撲滅のため三井住友海上保険会社を通して年1回、従業員全員に交通指導を実施している。佐賀県は人口10万人当たりの事故率が全国で上位に入るほど高い県になっており、車での配達が必須の牛乳販売店は事故のリスクが非常に高いので、従業員及び地域住民の安全のため実施している。

経営専門家の意見

該店が急激に躍進している根源には、社長の明確な意思表明があると考えられる。その内容は、経営方針に謳っている通りである。

  • 宅配日均本数 2,000本
  • 九州一の販売店

これほど明確な目標があると社長以下、従業員の末端まで意欲が沸いてくると思う。しかも【日均本数2,000本】に関しては、現状1,667本と努力を続ければ、近日中にでも達成できそうな数字に見えるので、従業員全員尚一層努力することになると思う。とは言え、これからの上積みにはこれまで以上の努力が必要だろうと感じるが、いずれは達成の報を受けることになるだろう。

また、【九州一の販売店】に関しては、どれくらいの規模が九州一なのか小生には分からないが、社長は把握していることだろうから、その姿が一歩一歩近づいて来れば更なる励みになると思われる。

実践面では、コロナ禍対策として実施したテレアポ営業が大成功していることが第一に挙げられる。従来は営業マンが戸別訪問して新規顧客を獲得していたこと、そしてイベント拡販が効果を上げていたことが大きな要因だったと思われるが、コロナ禍では両方とも活動が制限されたこともあり、苦肉の策としてテレアポに踏み切ったものである。社長としてもここまでの拡販効果は想像できなかったと思われるが、手ごたえを掴むと同時に本格的に取り組んだことが大成功に結びついたものと考える。近くの喫茶店の2階を借り受けて専門のブースを設けたことにその意欲が強く顕れている。その意気込みに対してアポインター、クローザー共に真剣にならざるをえなかったものと想像できる。

第二は密接な地域貢献活動である。デスク配が地域貢献かと問われれば疑問も感じるが、地域企業や行政の人々が満足してくれていれば、地域に貢献していることになろう。デスク配でパンや牛乳、冷凍食品などが買えるのであれば、金銭的な節約と忙しい人なら時間の有効活用ができると喜んでいるものと思う。

また、現在は休止中であるが、吉野ヶ里公園の駐車場での「軽トラック朝市」への参加は、売上そのものはあまり多くないが、地域住民との交流という意味から今後も出店を続けてもらいたいものである。かつて小生も訪問したが、広い駐車場に全ての出店が軽トラックというのは壮観な眺めであった。

第三は社長の自己啓発によるスキルアップも成長の一因であると考える。拡販方法、新製品情報等これからも積極的に研修に参加し続けていくことが、さらなる発展につながるものと思う。

これからの益々の発展を祈念するとともに、二つの目標を達成したときの社長の喜ぶ姿を見てみたいものである。

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