第33回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞創意工夫で
難局を乗り切る販売店

株式会社渕江乳業
代表者下敷領 明

ここがポイント

  1. ①配達の工夫による業務継続(オートロックマンション、宅配ボックス)
  2. ②非接触での集金方法の提案で効率アップ
  3. ③高齢者対策として行政の「絆のあんしん協力員」として活動

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

1964年
先代が千住の森永販売店で修行の後、開業
1991年
現社長の明氏が引継ぎ経営開始
明氏は牛乳関連会社のサラリーマンだったが、会社を退職して事業を引き継ぎ現在に至る
2020年
足立区保木間を中心に足立区全域を営業範囲としている

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 4坪 1坪 5台

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
1台 2台 2台
  • 保冷車、冷蔵車で温度管理を徹底している。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 2人 4人
女性 2人 2人
合計 1人 3人 2人 6人

(4)経営状況

①令和2年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 92.5 94.9
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 133.3 5.1
牛乳関連合計 94.0 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 94.0 100.0
②令和2年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 106.3 43.6
卸(小売) 91.9 43.6
自販機 71.4 12.8
集団
その他
合計 94.0 100.0
③令和2年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 92.5 95.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 133.3 4.4
牛乳関連合計 93.8 100.0
粗利益率 34.7  
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     6     100   200   600 900 800本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     6     100   200   600 900

(5)立地環境

  1. 東京都足立区(商圏内人口694,532人、世帯数348,068世帯)で宅配、卸を展開している
  2. 同マークのみならず他メーカーを含めて競合が多い
  3. 最寄り駅は東武スカイツリーライン竹ノ塚駅で当店までは徒歩で約30分の距離

経営方針

「地域のお客様へ宅配商品で貢献する」をモットーに経営している

活動内容

1.配達の工夫による業務継続

①オートロックマンションへの配達の工夫

  • マンションのオートロックはセキュリティ―として住民には好評だが、出入り業者にとっては不評であるが、当店はお客様との信頼関係により通常納入ができている。

②宅配ボックスを利用した納品

  • 配達時間に不在の顧客には、宅配便業者との連携で宅配ボックスを利用して納品している。

③保冷受け箱を出し忘れているところには保冷バッグで納品している。

2.地域社会との関わり

①フットワークの良さが強み

  • 宅配はもとより地域の保育園や保育所、温浴施設などの卸業務も行っているが、トラブル等何かあったらすぐに駆け付けるのを始め、電話やメモ等を活用するなどフットワークの良さを強みとした営業を実施している。
  • 顧客からの問い合わせなどがあった場合、電話、メール、訪問などで即時対応している。

②食品衛生の向上、業界の発展に寄与

  • 平成27年(一社)東京都食品衛生協会より会長賞を受賞している。
    内容は「本協会が認めた地域食品衛生協会等の事業活動で食品衛生の向上、業界の発展に貢献した方の表彰」というものであり、長年の努力が実ったものである。
  • 日常業務が忙しくて、地域社会との関わりは少なくなりつつあるが、業務に関しては、地域住民の要望に必ず応えていくという強い決意が窺われる。

3.非接触での集金を提案し効果を挙げている

①コロナ禍における感染防止対策として非接触での集金方法をチラシで告知

  • 一定数のお客様から訪問集金から非接触集金へ切り替えてもらった。
    非接触集金は口座振替、CVS払い、郵便局払い、クレジットなどである。
  • その結果は次の通りである
  申込数 案内配布数 申込率
第1回
2020年 5月
50 500 10%
第2回
2020年10月
100 400 25%
  • 現在は コンビニ払いが主流で400軒、クレジットカード200軒にまで増えた。

4.高齢者対策として足立区の「絆のあんしん協力員」として活動している

①足立区地域包括支援センター保木間が実施している「絆のあんしん協力員」として活動している。

  • 「絆のあんしん協力員」とは、地域の高齢者に気を配り、困りごとの相談相手がいない方や気になる方に対し、ちょっとした見守りや声掛け(あいさつや世間話など)をしていただく方々のこと。
    日常の業務や活動の中で高齢者の様子を見守り、異変に気づいた時には「地域包括支援センター」へ連絡して対処してもらうというものである。
  • 渕江乳業でも過去、配達している時、真夜中に老人が道の真ん中を歩いているのを発見し通報、保護してもらったことがあったとのこと。
  • 牛乳配達という仕事は、早朝の行動が主なので、一般的には見守りが手薄になる時間帯であり、行政や警察などから重宝され、感謝されている。

②高齢者対策第2弾はシルバー人材センターの活用

  • 各種のチラシは広報誌「マミークラン」に折り込んで各戸に配っているが、その折り込をシルバー人材センターに依頼している。当社では折り込みする人手が不足しているのが実情だが、折り込みをシルバー人材センターに依頼することで、ささやかな高齢者対策となっている。

5.拡販対策の充実で着実に顧客が増加している

①営業専従従業員による顧客増加が年間120軒~150軒と好調である

②拡販専門業者の拡販数が年間約200軒とこちらも好調である

  • 新規顧客獲得は好調であるが、競合他社との熾烈な競争もあり、かなりの数の落本もあっており、全てが純増とはなっていない。
  • 拡販のための販促物は「マミークラン」と各種のチラシを活用している。

6.「コロナワクチン 接種済み」バッジの着用

バッジ
三輪バイク車
  • 大規模小売店舗での拡販イベント開催時には、全員が「コロナワクチン 接種済み」バッジを着用して業務に取り組んでいる。コロナ禍対策として顧客に安心してイベントに参加してもらうための行動であるが、参加している顧客から「安心だね」という声が多く聞かれ、概ね好評な取組みとなった。
    また、結果が好評であったため、通常の配達時にもこのバッジを着用している。

7.品質管理

  • 配達は保冷車を使用しているが、その他に近い所や道幅の狭いところには保冷三輪バイクを使用している。持ち込み車両は、保冷シッパー・蓄冷剤を年間通して使用し、戸別保冷受箱にも蓄冷剤を年間通して使用し品質保持に努めている。

8.受箱の管理

①配達時に清掃

  • 配達時に受箱の汚れを見つけた場合、常に持参しているタオルで清掃して綺麗にしている。
  • 長期間経過して見映えの悪くなった受箱は新品と取り換えている。

②取り忘れ対策

  • 配達中に取り忘れを発見した場合、取り忘れを電話で連絡をしている。次回の配達までには期間が長くなるので、早く気づいてもらうために電話連絡としている。
  • 高齢化の影響なのかは不明だが、最近、取り忘れが増えてきている

9.牛乳乳製品の効果効能などの情報提供

①新商品「ミルク生活」の情報提供

  • 新発売された「ミルク生活」が注目されているようで、早速問い合わせがあり、現在、主力商品カルダスと健康関連のサプリメントの両方をとっているが、新商品の「ミルク生活」の特徴から、その一本のみで希望する効果に対応できるのではないかというものである。ビフィズス菌や数種の栄養成分、その他11種のビタミン、7種のミネラル等が含まれているという内容に対する問い合わせである。
  • このように顧客は、配布されたマミークランや新商品チラシなどを細目にチェックしていることが分かり情報提供の必要性が確認された

②各種情報チラシは「マミークラン」に折り込んで配布している

  • 急を要する「お知らせ」などについては、即時、個別に対応している

10.コロナ感染対策

①一般的なコロナ感染防止対策は下記の通り

  • マスク着用
  • アルコール消毒の励行
  • アクリル板の設置
  • 従業員の体温測定と体調報告
  • 事務所、作業場の換気実施
  • 顧客との接客距離の確保、接客時間の短縮化等に努めている

②非接触型集金方法への変更を実施…前述の通り

  • コロナ禍以前は0軒だったが、現在では、コンビニ払い400軒、クレジット200軒 にまで増やすことができた。

③「コロナワクチン接種済み」バッジの着用…前述の通り

  • 顧客の反応は良好である。

11.衛生管理への対応

①乳類販売業としての基本的取組み

  • 販売許可条件となっていた安全衛生責任者を中心に衛生管理に努め、温度管理に関しては、幼稚園、保育園への納品時に客先が測定データを収集・管理しており、取引先の衛生基準を満たしている。
  • 一般の宅配顧客向け衛生管理にも問題なく、温度管理については、測定結果の記録を残す仕組みの実行に取り組んでいく。

経営専門家の意見

株式会社 渕江乳業は東京都足立区の住宅密集地にあり、業務遂行には色々な制約を抱えている。

早朝配達時の騒音対策に気を使うが、納品に関しては、マンションのオートロックが難問である。当社は、その難問に対しては、他業種事業者との連携やお客様との信頼関係によってクリアしつつある。

他業種との連携では、宅配便業者と連携した宅配ボックスの相互利用であり、宅配ボックスの無いマンションでは、郵便ポストを利用し、保冷受箱を出し忘れた顧客に提供している「保冷バッグ」をここでも活用するなどの工夫がみられる。

経営に関しては、明氏が配達の他、経理業務も自分で行っているので、どうしても地域社会との関わりは薄くなってくるが、それでも、トラブル等異変があったらすぐに駆け付けることにしている。その他に、電話やメモ等を活用するなどフットワークの良さを強みとした営業を実施している。

また、地域の食品衛生協会の指導員として食品の衛生管理にも取り組み、平成27年に(一社)東京都食品衛生協会より、食品衛生の向上、業界の発展に寄与したとして会長賞を受賞している。その内容は、当社の長年の地道な業務展開が実ったものと思われる。

地域貢献として高齢者対策では、足立区地域包括支援センター保木間が実施している「絆のあんしん協力員」として活動している。過去に徘徊?老人の保護に貢献したことがあるとのことで、その活動は、自社の配達業務と連動して行うことができることであり、今後とも協力していきたいとのことであった。

もう一つの高齢者対策はシルバー人材センターの活用である。当社の人手不足対策の一つでもあるが、各種チラシを広報誌「マミークラン」に折り込む仕事をシルバー人材センターに依頼することで、ささやかな高齢者支援となっている。

コロナ感染対策としては、従業員への日常業務での基本対策の徹底、顧客との接客距離の確保、短時間接客など行き届いていると感じた。特に「コロナワクチン接種済み」バッジの着用はお客様にも安心感を与えることができており、なかなか好評だという。それから、顧客のコロナ感染に配慮した非接触集金の実施も効果が上がっている。コロナ禍以前は0軒だったが、現在では、コンビニ払い400軒、クレジット200軒にまで増やすことができている。

品質管理に関しては、納品の際の保冷車、保冷三輪車による配送、保冷シッパー・蓄冷剤の年間通しての使用、受け箱への蓄冷剤の年間使用など、全てが徹底されていると感じた。

当社は、少人数で業務をこなしており、店主は多忙である。また、都会特有の困難さ、特にオートロックマンションへの納入など難問を抱えているが、地域社会、他事業者との連携、そしてお客様との信頼関係によって解消すべく取り組んでいる。営業活動も好調であり、顧客数が増えてくると思うが、その際にも色々な工夫で伸び続けるのではないかと感じた。

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