第36回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞お客様・従業員との
コミュニケーションが成長のカギ

西京都ミルクセンター
代表者堀池 洋志

ここがポイント

  1. ①従業員とのコミュニケーションと定着率の向上
  2. ②顧客とのコミュニケーションの強化、顧客満足向上
  3. ③積極的なイベントによる営業展開

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

代表の堀池洋志氏
  • 該店は、読売新聞販売店を経営しており、2018年に森永牛乳の牛乳宅配事業に参入した。
  • 当初は本店所在地の京都市西京区から営業活動を開始し、営業エリアを徐々に拡大し、現在は京都市西京区、南区、伏見区、亀岡市、向日市、長岡京市、宇治市をカバーしている。
  • 長岡京市及び宇治市などは廃業店の吸収合併により拡大した。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 1.5坪 1坪
支店 2店 3坪 2坪
  • 本店は京都市西京区、支店は亀岡市と宇治市の2か所で経営している。亀岡市は2020年、宇治市は2022年より営業を開始した。
店舗外観
冷蔵庫

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
4台 1台
配達に使用しているライトバン
  • 保冷車、冷蔵車などは所有していないが、それぞれの車両に保冷対策を行い、配達している。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 2人 7人 10人
女性 2人 1人 3人
合計 1人 4人 8人 13人
  • 新聞配達とはしっかりと分業しており、上記人数は牛乳販売店のみの数である。
  • 通常の仕事とのダブルワークをするスタッフが多い。

(4)経営状況

①令和5年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 174.3 97.5
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 1971.4 2.5
牛乳関連合計 178.4 100
宅配卸以外の売上計
合計 178.4 100.0
②令和5年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 178.4 100.0
卸(小売)
自販機
集団
その他
合計 178.4 100.0
  • 製品別売上高は前年比174.3%と大幅に増加している。これは、廃業店の引継ぎの分もあるが、伸びた要因としては日々の営業活動の成果によるものが大きい。
  • また、その他宅配商品の伸びが著しく、新聞販売店と連携して行った豆腐等の販促による効果が表れている。
  • 業態別売上高については、該店は宅配のみであり、宅配事業への営業成果が実を結んでいる。
③令和5年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 98.5 98.5
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 2050.0 1.5
牛乳関連合計 177.5 100.0
粗利益率 49.5
  • 牛乳については前年度比98.5%と若干粗利益額は下がっているものの、荒利益率は49.5%と高く、宅配のみによる付加価値経営を行っていることが分かる。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝     3 13   50 700 300 150   1200 1050本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     3 13   50 700 300 150   1200
  • 該店はダブルワークのスタッフが多いことから、早朝1時~配達を行っている。
    また、ヨーグルトの獲得比率を上昇させることで週1回の配達へ移行を進めている。
  • 集金については、手集金、袋集金のお客様に対し、口座振替への切替促進キャンペーンを実施し、手集金の比率を大幅に低下させた。現在、手集金が残っているのは、集金時のスタッフとのやりとりがしたいとのお客様の声からであり、50軒が残っている。

(5)立地環境

  1. 本店所在地の京都市西京区は洛西ニュータウンがあり、宅配のメインターゲット層である高齢者が多い地区である。
  2. 支店所在地の亀岡市も高齢化が進んでいるエリアであり、宅配の開拓拡大の可能性が高い地域である。
  3. 宇治市においては、世帯数が多く、新規開拓の余地はあるものの、競合販売店も多く、営業活動でしのぎを削っている地域である。

経営方針

  • 顧客創り
  • 人創り
  • 成せば成る

経営理念にこの3つを掲げており、全スタッフが感謝の気持ちを持ち続けて「創造」する仕事に「責任」を持って「挑戦」し続けることをミッションにしている。

経営理念とミッションについては、事務所内に掲示してあり、全スタッフの拠り所となっている。

経営理念
わが社のミッション

活動内容

1.従業員とのコミュニケーションと定着率の向上

①LINEを活用したコミュニケーション

お客様からの連絡事項を
LINEにて情報共有
  • 普段顔を合わすことがない早朝配達のスタッフに対し、お客様からの連絡事項など必要な情報をLINE活用により事務所に送り、タイムリーに情報共有できる体制を整えている。
  • スタッフが配達を始める時と業務が終了した時にLINEを使って連絡し、代表による返事を送ることで、会社として従業員の就労時間を知ることが出来るほか、従業員は自分の働きについて会社側が理解してくれているという証拠となり、モチベーションアップにもつながっている。

②労いのメッセージやプレゼント

  • 上記のようにスタッフが業務を始める際に送ってくるLINEに対し、「お疲れ様」、「気をつけて配達してくださいね」など労いの言葉をかけている。
  • お盆や年末など季節折々のちょっとしたプレゼントを従業員へ贈っている。
    2024年11月には北海道からじゃがいもを取り寄せ、スタッフ全員にメッセージを入れて、プレゼントした。
  • これらのことから従業員満足が高まり、2018年のスタート以来、離職者はおらず、スタッフの定着率は100%となっている。
労いの言葉のあるLINE
2024年11月の従業員へのプレゼント「北海道産のじゃがいも」
プレゼントに添えられたメッセージ

2.顧客とのコミュニケーションの強化による顧客満足向上

①代表による直筆メッセージ

お客様から問い合わせなどをいただいた際には、代表が1人1人自筆で感謝のメッセージなどを書いて届けている。

②生活必需品などのプレゼント

宅配契約時には「御礼」として、豆腐をプレゼント、また、年末にはカレンダー、配達ミスなどあった時などはお詫びと共に食器洗いのスポンジなど生活必需品をプレゼントし、お客様の顧客満足度を向上させている。

領収書に書かれた
代表の自筆のメッセージ
生活必需品などのプレゼント

③LINEの活用

メーカーと連携し、お客様向けのLINEアプリを導入し、休止や本数変更などのお客様サービスの効率化及び情報発信の強化につなげている。

④見守り活動の実施

配達時に普段と異なる様子があった際には事務所に連絡する体制をとっている他、必要に応じてお客様への声掛けを積極的に行っている。

これまで、取り忘れがあったことにより、不審に感じ、警察へ連絡したことで、3人の方の安否確認をすることができた。

3.積極的なイベントによる営業展開

①毎月5回程度のイベントセールス

協力会社により、地域の量販店や酒の量販店、道の駅などで試飲イベントを行い、顧客開拓を積極的に行っており、月に25~30件の成約につながっている。

また、健康を意識したお客様が成約につながりやすいことから、スポーツジム等のロケ先を開拓し、骨強度測定を活用した試飲イベントなども実施している。

②代表によるイベントスタッフとのコミュニケーション

イベント開催時には代表自らが実施前後のイベント会場に顔を出し、イベントスタッフとコミュニケーションをとっている。

そこでは、該店の想いや会社の方針などを説明し、外注のスタッフであっても、該店のスタッフと同様に接することで、該店の想いをお客様につなげる努力を行っている。

これらの取り組みにより安定した獲得本数に繋げている。

4.集金・配達の効率化

①口座振替促進キャンペーンの実施

手集金や袋集金のお客様に対し、口座振替への切替促進キャンペーンを実施した。特に袋集金はトラブルが多くなり、手集金も時間的に不在のお客様も多いことから、これまで、約400件近くあった手集金のお客様が50件まで減少し、集金の効率化を図ることができた。

現在は、クレジットカードの導入を準備し、お客様の利便性を拡大する予定である。

②ヨーグルトの獲得比率の向上による配達の効率化

賞味期限の長いヨーグルトの獲得比率を向上させることで、週1回の配達への移行を進めている。該店の場合は、ダブルワークをしているスタッフも多いことから、週1の配達にすることで、突然のスタッフの休みによるスタッフ不足になることもなく、スムーズな配達業務ができている。

5.新聞販売店との連携

①該店の別事業である新聞顧客へ健康訴求

該店の別事業である新聞の顧客に向けて、宅配商品を紹介している。新聞の顧客は高齢者が多いことから、健康に関心が高く、サンプルを希望したお客様に対して商品説明を行い新聞に追加で森永の宅配商品の契約に繋げている。

折り込み広告は反応が2%、ポスティングは0.5%であり、ポスティングより効果が高い。

②近隣の新聞店と合同販促実施

近隣の新聞販売店約30店舗と合同で、新聞顧客への豆腐の販売を実施し、大きな売上拡大につながった。その際に、豆腐を購入していただいた方は、リピーターとなっている。

経営専門家の意見

従業者満足(ES)と顧客満足(CS)を重視が成長のカギであると、従業員及び顧客とのコミュニケーションを積極的にとり、満足度を向上していることが非常によくわかる店舗であった。

訪問時にも従業員の方の接客は素晴らしく、また、仕事の的確性、スピードには驚かされた。

経営理念やミッションなども明文化され、掲示されていることが従業員へのモチベーションにもつながっていることが分かる。

代表は、新聞販売店は専売があるが、牛乳販売店は専売がないため、どれだけでも拡大できると今後も廃業店などは積極的に引き継ぎ経営拡大を行っていく意向があり、地域を牽引する牛乳販売店としての期待は大きい。

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