第36回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞新聞事業を廃業、
乳製品事業に特化し発展する販売店

まごころミルクセンター南大沢
(株式会社デサフィオ)

代表者金子 恭士
発表者金子 和子

ここがポイント

  1. ①受箱清掃は毎回、そして監査役を設け、清潔さに拘り
  2. ②ゆうパック配達が配達の半数を占める
  3. ③顧客ニーズ、地域コミュニケーション、高齢者対策

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史

取締役の金子和子氏
2002年
父親の経営する新聞店を事業承継
2010年
まごころサポートサービス事業、ハウスクリーニング事業開始
2016年4月
森永乳業特約店として営業開始(顧客ゼロからのスタート)
2018年
健康食品事業(金子商店)開始
2019年11月
新聞事業を廃業し乳製品宅配事業に特化
2020年
ゆうパック宅配開始

(2)代表者の経歴

代表の金子恭士氏
1993年3月
大学卒業
1993年4月
建設会社に就職
1996年2月
建設会社を退職
1996年3月
父親の経営する新聞店に入社
2002年
同上新聞店を事業承継

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 2坪 1坪
店舗外観
事務所外観

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
5台

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 2人
女性 1人 1人 8人 10人
合計 1人 2人 1人 8人 12人
  • 配達は全員女性アルバイトが実施

(4)経営状況

①令和5年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 94.6 65.9
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.7 2.3
牛乳関連合計 94.8 68.2
宅配卸以外の売上計 110.4 31.8
合計 99.2 100.0
②令和5年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 95.2 99.2
卸(小売) 60.0 0.8
自販機
集団
その他
合計 94.8 100.0

③令和5年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 89.6 96.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 3.8
牛乳関連合計 89.9 100.0
粗利益率 55.0

④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝                       795本
午前       405 400 10 260 265   270 805
午後                      
夜間                      
その他                      
合計       405 400 10 260 265   270 805
  • 配達は全て昼配。コース数その他の400軒は「ゆうパック」

(5)立地環境

  1. 東京都八王子市別所に立地している。八王子市のHPに「都会と田舎のイイトコ取りの暮らしができる」と紹介されているように住みやすい街と予想される。
  2. 商圏は八王子市南部:約95,000世帯及び多摩市全域:約60,000世帯が対象
  3. 商圏内に競合店が他社の大手販売店が3店ほどある。

経営方針

経営理念として「お客様本意」を掲げている。お客様「本位」ではなく「本意」としているところに意味があり、「笑顔を忘れず、お客様の本当の気持ちを大切にし、まごころをこめてサービスさせていただきます」という強い決意である。

経営方針

乳製品をはじめ生活必需品から娯楽まで、シニアが必要とするサービス・商材をお客様とコミュニケーションしながら提供し、将来の「八王子のライフサポートステーション」をめざす。

シニアの健康や生活、人生に寄り添ったサポートをすることにより、その要望を全て叶える「街のコンシェルジュ」になる。そして、一人でも多くのシニアを笑顔にする。

活動内容

1.新聞事業を廃業、乳製品事業に特化し発展を目指す

  1. 父親の代から35年間経営していた新聞事業を2019年に廃業した。インターネットやスマホの普及など新聞事業の周辺は厳しさを増している。また、夕刊の廃止を打ち出している新聞社もあり、今後の発展は見込めないとの判断から廃業を決めた。
  2. まごころサポートサービスとして下記の事業を手掛けており、その際の顧客とのコミュニケーションを通して顧客のニーズを聞き取り牛乳乳製品販売につなげている。各種事業は全て乳製品拡販のためと割り切っている。

その他の事業

  • まごころサポート:高齢者生活支援サービス
  • まごころサポートプロ:ハウスクリーニング(ちょっとした困りごとから本当に困ったことの解決)
  • まごころミニリフォーム:小規模な家屋の修繕
  • 健康食品販売事業
  • 健康事業:中医学による薬膳での体質改善・推拿(すいな)医療整体・睡眠改善コンサルなど
まごころサポートの案内チラシ

2.配達は全て昼配で全員女性パートアルバイト

  1. 主婦が働きやすい職場づくりの実践
    ご主人の勤務や子供さんを学校へ送り出した後の時間を有効に使いたいという主婦の労働意欲を事業に生かしている。主婦は突発的な休みの依頼も多いので、そういう事態にも対処できるように人員に余裕を持たせている。
  2. 今話題の103万円の壁にも無縁
    主婦のパートアルバイトなので勤務時間も限られており、年収103万円の壁にも無縁である。
  3. 世の中は人手不足と言われているが、当社は、募集時の希望者も多く働き手が足りないということはなく、今後もその心配はないと考えられる。

3.受け箱の清掃は毎回、そして監査役2名を設け、清潔さにこだわっている

①受け箱は毎回の配達時に拭き上げている

乳製品は飲食料品であり人の口に入るものなので、乳製品そのものは勿論、その置き場も清潔にすることが大切と考え、毎日の拭き上げを義務付けている。実際に配達に従事しているのは家庭の主婦であり、その趣旨はよく理解し対処している。それでも当初はそこまでの必要はないのではと考え、疎かにする配達員も見られたことから、それではと清掃の徹底を考え「監査役」2名による実地監査を始めた。毎回、監査することはもとより写真を撮って経営者に報告するようにしたことにで、受け箱は見違えるように綺麗になった。

清掃用タオル
洗浄前の受け箱
洗浄後の受け箱

②受け箱は半年ごとに交換を実施している

汚れの有無、傷のあるなしに関わらず半年で取り換えている。
引き取り後洗浄して再使用することにしている。この時点で傷ついたものは廃棄している。またフタが傷つきやすいのでフタは入念に検査し傷んでいれば取り換えている。ここで活かされているのが、ハウスクリーニングの技術である。洗浄のプロの技術が存分に活かされている。

4.ゆうパック配達が400軒と配達の49.7%を数える

  1. ゆうパック配達地点は1都6県に及ぶ。遠いところでは小笠原諸島の父島、山形県、新潟県などにも配達している。
  2. 要因の一つは新聞事業時の顧客が転勤したことにより、新しいお店より気心の知れた当店から購入したいとの要望があったことからである。
  3. 要因の二つ目は、1都6県の拡販を担当している専門業者によるイベント型拡販である。今後も更なる拡販を計画し依頼しているので、ゆうパック配達は更に拡大していく見込みである。
  4. マンションのオートロック対策としても、ゆうパック配達が有利に機能している。郵便局はオートロックを既にクリアーしているため問題なく配達されている。
  5. 今後、ゆうパック配達が急増しても当社の人手には余裕があり、特別の心配はない。

5.キャッシュレス決済が98.8%で集金のトラブルは少ない

お金に関してのトラブルは極力避けたいとの思いからキャッシュレス決済を積極的に進めてきた。キャッシュレス決済が進展した要因の一つはゆうパック配達である。1都6県と遠距離であるので必然的にキャッシュレス決済が進むことになる。

また、近辺の新規顧客にもキャッシュレス決済の利便性を懇切丁寧に説明して了解を貰っている。

6.顧客維持に半年ごとに継続のお礼としてプレゼントを提供している

提供サンプル内容

新規顧客獲得以上に重要なのが現在の顧客なので、その維持のために半年ごとに森永関連の商品をプレゼントしている。ABC分析を行いAクラスの顧客には7種類、Bクラスには3種類、Cクラスには1種類と差をつけて提供している。

7.ビン容器の廃止に伴うトラブルなし

メーカーによるビン容器の廃止に際しては顧客1件1件に丁寧に説明して了解を貰った。当初、廃止に伴う落本などのトラブルを懸念していたが、特に問題もなくスムーズに変更できている。容器の変更により従来180mlのビン商品で週7本お届けのほとんどのお客様が450mlのパック商品、週4本に変更していただき、売り上げが伸びる結果となった。

これには、まごころサポートのチラシ効果で、従来から顔を覚えて貰っていることが功を奏しているものと思われる。

8.顧客ニーズ、地域コミュニケーション、高齢化対策

新聞事業で新聞配達時にポストに新聞が溜まっていると、家の中で倒れていて、救えた場合もあったが、残念ながら間に合わなかった経験もあった。その殆どがシニアで、他人事と思えずもっと何かできないかと考え、たどり着いた答えが、ちょっとした困りごとを解決する高齢者支援サービスである「まごころサポート」だった。

まごころサポートのお困りごと解決の実施時や半年ごとにお届けするサンプル提供時にお客様ニーズの確認を行なっている。

経営専門家の意見

該店の経営者金子恭士氏、取締役和子氏共に考え方がユニークで、そしてポジティブであることを率直に感じた。その内容を列挙すると次の通りである。

1.新聞事業を廃業し乳製品事業に特化したこと

父親の代から35年間経営していた新聞事業を2019年に廃業した。新聞事業の先行きが厳しいことは推測できるが、廃業ではなく継続しながら乳製品事業を育てていくという考え方を店主は取らず、八王子のシニアサポートのコンシェルジュ「まごころサポート」を目指すためには乳製品事業に特化することが重要と考えた。

新聞事業廃止時には牛乳宅配は600軒にまで減少した。原因は新聞をとっているから牛乳の宅配も同じ店からと考えていた顧客が、新聞を配達しないのであれば牛乳も取らないと考えたのかなと推察される。

その後の当店の努力が実を結び、現在は805軒にまでに回復してきた。

2.配達は全て昼配、全員女性パートアルバイトで余裕のある人員配置

ゆうパック配達を始めたことがきっかけとなり業務改善を重ねてきた。

  1. 主婦が働きやすい職場づくりの実践
    スタッフは全員子育て世代の女性で週に2~3日の出勤と少ない出勤日のため、少し多めの8名を雇用している。主婦は急な休みも考えられるので、どのコースでも配達できるように研修を実施し、いつでも代配できるように対応している。
    また、ゆうパック梱包スタッフとして常時1名を配置している。このスタッフが休んだ場合でも配達スタッフが代わって対応している。ゆうパックは夕方の集荷なので十分対応できる。
  2. 世の中は人手不足と言われているが、該店は、募集時の希望者も多く働き手が足りないということはなく、今後もその心配はなさそうである。

3.受け箱の清掃は毎回、そして監査役2名を設け、清潔さにこだわっている

毎回の清掃は他の販売店でも実施しているが、「監査役」の配置は例を見ない。2名による監査役が確認した結果を写真で経営者に報告する方法も斬新。実施当初は、毎回の清掃を疎かにする配達員も見られたが、監査制度実施後は受け箱が見違えるように綺麗になったという。

取締役和子氏は「乳製品は食品であり口に入るものなので、製品そのものは勿論、その置き場も清潔にすることが大切」との考えにより、毎日の拭き上げをスタッフに義務付けている。指示の徹底により、配達スッタフの衛生管理に対する認識が高められている。

4.ゆうパック配達が400軒と約半数に及ぶ

軒数が多いのは、遠距離配送が多いことが一因だが、そのほかにも都内のオートロックマンションにも配達している。宅配に関しては専門業であるゆうパックを有効に利用するのは理に適っている。配達対象地域は1都6県に及ぶ。

5.キャッシュレス決済が98.8%で集金のトラブルなし

お金に関してのトラブルは極力避けたいので、キャッシュレス決済を積極的に進めており、現在は98.8%にまで達成することが出来た。キャッシュレス決済進展の要因の一つはゆうパック配達である。1都6県と遠距離なので必然的にキャッシュレス決済が進むことになる。また、近辺の新規顧客にもキャッシュレス決済の必要性を懇切丁寧に説明、了解を得て実施している。

6.当店は他の事業も経営しているが、全て乳製品事業拡大の一環と捉えている

その内容は次のようなものである。高齢者生活支援サービス、ハウスクリーニング、小規模な家屋の修繕、健康食品販売事業のほか資格を活かした独自の事業などの展開により地元に密着できるため、それらの事業実施の際に牛乳乳製品のPRなどを実施し、拡販に繋げている。

顧客の困りごと(例えば電球の取り換えなど)に関しては無料で対処しているところが多いと思われるが、それを有料にするということも新しい発想と考えられる。顧客も有料なら遠慮なく頼めるメリットがある。

トップページへ戻る

ページトップへ