第35回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人全国牛乳流通改善協会会長賞LINEの活用とデータ管理で
顧客を獲得

株式会社BHC CORPORATION
ビッグヘルスケアー

代表者入江 克憲
発表者武内 孝壽

ここがポイント

  1. ①LINEを活用したお客様とのコミュニケーション
  2. ②営業方針の確立「量から質へ」「シェアへのこだわり」
  3. ③各種データによる経営管理

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史及び代表者の経歴

左:入江社長 右:武内専務
  • 2017年8月に入江新聞舗(毎日新聞、日経新聞)の事業部として、代表者の入江と実質的経営者で専務の武内の2名で立ち上げた。
  • 森永の販売店網拡大のために、メーカー担当者が新聞販売店へ営業に来たことがきっかけで、牛乳宅配業へ進出した。
  • 実質経営者の武内専務は元他乳業メーカー販売店の社員であり、牛乳販売店のノウハウは持ち合わせていたことから、スムーズな進出となった。
  • 2020年11月にこれまで新聞販売店の1事業部として運営していた牛乳販売店を独立させ、(株)BHC CORPORATIONを設立した。
  • 現在は、高槻市、茨木市、島本町まで商圏を拡大している。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 2.5坪 1坪
  • 本店のみの営業である。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
6台 2台
  • 保冷車等は使っていないが、保冷シートなどを活用して配達している。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 2人 1人 3人 6人
女性 1人 1人 5人 7人
合計 2人 1人 2人 8人 13人
  • 代表者の入江と実質経営者で専務の武内の他、主婦を中心にデリバリースタッフとして雇い入れている。

(4)経営状況

①令和4年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 108.0 99.0
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 120.0 1.0
牛乳関連合計 107.7 100.0
宅配卸以外の売上計
合計 107.7 100.0
②令和4年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 107.7 100.0
卸(小売)
自販機
集団
その他
合計 107.7 100.0
  • 牛乳については前年比108.0%の伸び、その他の宅配商品は前年比120%と大きく伸びている。
  • また、該店は宅配100%であり、難しいと言われている宅配のみで107.7%と高い伸びを示している。これは、牛乳以外のその他宅配商品のキャンペーン企画などが効果を出している結果と思われる。
③令和4年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 107.0 99.4
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 120.0 0.6
牛乳関連合計 107.3 100.0
粗利益率 52.0
  • 粗利益の前年比については、牛乳で107.0%、その他宅配商品で120.0%であり、特にその他の宅配商品の伸びが顕著である。
  • 粗利益率も52.0%と高く、その他の宅配商品の拡大の効果が出ているといえる。

④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝                       928本
午前     11     230 12 560 220 12 1034
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     11     230 12 560 220 12 1034
  • 午前中配達(8:00~13:00)の週2コースのみの配達である。これは、夜中の配達の音がうるさいというお客様の意見を反映している他、配達時のスタッフの交通事故をなくすために行っている。
  • 集金については、引落が過半数以上であり、集金の効率化が進んでいる。

(5)立地環境

  1. 最寄駅のJR高槻駅から市営バス「六中前」バス停より徒歩1分のところにあり、住宅地である。
  2. 商圏は高槻市、茨木市、島本町エリアであり、世帯数は約296,000世帯である。高齢化が進んでいる地域でもある。
  3. 該店は新規参入の店舗であることで、古くからある販売店が根強い顧客を持っているため、商品の良さだけでは新規開拓が難しい地域である。

経営方針

従業員とお客様に深く感謝し、お客様に寄り添った商品をご提供し、誠意をもって共栄をはかり、地域に愛される会社をめざす

活動内容

1.LINEを活用した宅配顧客とのコミュニケーション

①LINEの登録者の拡大

  • 2021年からLINEを活用し、導入時には1軒1軒顧客を訪問して、趣旨を説明し、LINE会員を増加させている。
  • 現在、1,050軒の顧客のうち、LINE顧客は74%の775軒となっており、多くの顧客がLINE登録してくれている。
  • LINE登録者には「カラダ強くするのむ・たべるヨーグルト」のセットをプレゼントしている。
  • 現在の落本率は2.5%であるが、落本の内訳はLINE登録が25%、LINE未登録が75%であり、圧倒的にLINE登録者数の落本が少ないことがわかる。

②LINE登録による顧客満足度向上

  • 毎月おすすめ商品の紹介、物販の先行案内などを投稿し、お客様の興味を誘う。
  • バースデープレゼント、クーポン、特典、プレゼント企画を実施し、顧客満足度向上を図っている。
    バースデープレゼントについては、お祝いメールとプレゼントの案内をし、40%程度の返信率となっている。また、クーポンについては新商品が発売されたときに提供することで新商品を知ってもらうきっかけにもつながっている。
  • 牛乳やヨーグルトを使った簡単レシピを毎月1回配信し、お客様に商品を使ったメニューを提案している。
  • 注文変更や配達日の変更などお客様がLINEを使って気軽に該店と連絡がとれるようになっている。また、記録に残ることで、間違いも減少してきている。
LINE画面
お客様との日程変更のやり取り画面
お誕生日お祝いメッセージ

③LINEによるアンケート調査の実施

アンケート送信リスト
  • 契約から1、2、3カ月のタイミングでアンケートを実施し、協力していただくと商品のプレゼントを行っている。回答される顧客は少ないものの、顧客とのコミュニケーションをとる良いきっかけづくりとなっている。
  • 性別、年齢別、申し込み理由別、購入金額別などターゲットを絞り込んで配信が可能なため、商品に合った顧客のアンケート調査をすることができる。

2.従業員ミーティングと連携体制の徹底

①LINE戦略会議の開催

LINE会議の議事録
  • 毎月第2水曜日に、外部専門家を交えて、代表者、専務、LINE責任者の3名で戦略会議を行っている。
  • 会議ではLINE客の特典やイベントなどを検討している。時にはメーカー担当者にも出席してもらい、プレゼントの協力もお願いしている。

②アクシデント発生時の仕組み

  • アクシデントがあった時の報告・相談・解決の仕組みづくりを行っている。
  • スタッフ全員で良い情報、悪い情報、悩みなどを共有して問題に対処している。

③デリバリー会議の実施

イベント報告
  • ストップや減本時への商品変更の提案方法や不満の聴き取り方などを検討するほか、商品知識の向上のための勉強会も行っている。
  • 3カ月に1度ほどの開催であるが、新商品の紹介やイベント実施後の報告などの情報共有を行っている。

④配達員と内勤スタッフとの連携

  • 配達員がお客様からのメモ書きや言付けがあった場合、帰社後速やかに内勤スタッフに連絡をし、内勤スタッフからお客様に確認の連絡を行っている。

3.営業方針の確立

①営業方針の転換

  • 開店時から5年間は売上拡大に注力してきたが、現在は費用対効果を考えた経営(量から質への転換)を展開している。

②地域シェアへのこだわり

  • 現在の商圏と考えている高槻市、茨木市の世帯数296,000世帯の1%で2,960軒を目指している。(現在の達成率は40%であり、開拓件数目標は7,400軒である)
  • 配達区域内の地図上に既存顧客、脱落客を管理して、新商品が出た際には既存客、脱落客に関わらず、サンプルを配布する。
  • 訪問営業を実施した地域を地図上にサンプル渡し済み、成約済みで色分けして管理を行っている。新商品が出た際にはサンプル渡し済みのお客様に再度営業をかけ、成約済みにはお礼を兼ねて新商品をPRしている。
  • 営業時に相手から地図に記入する項目を聞き取り、反映させて、現場報告を作成・共有して次回の新規開拓に活用している。
営業日報

③客単価アップ

既存客挨拶回りチェック表
  • LINE顧客には先行して、スポットでも物販の案内(春夏秋冬4回特売実施)を行い、客単価アップにつなげている。ヒット率は2.5%~5%。
  • LINEページから物販(ふれあいショッピング)の最新ページにリンクさせ、時節ごとの商品販売を行うことで客単価アップを図っている。

特売企画チラシ
メーカーと連携して行った特売企画の実施
夏場はスポーツドリンク、秋はカフェオレなど季節によっての特売企画を行っている。右のチラシのカフェオレ企画については、通常はチラシ回収率1%のところ、3%と高回収率となった。

4.各種データの活用

①お客様カルテの活用

  • 新規顧客獲得時にお客様情報を聞き出している。
  • 利用者、年齢、利用理由、購入動機、同居人数、家族構成、他の牛乳屋との取引、初回配達日、週本数、要望の項目で管理し、顧客に合った新商品提案やイベントの案内を行っている。
  • また、お客様カルテの情報を集計し、年齢層、利用理由、該当者、世帯数に分類し、営業活動に役立てている。
顧客カルテ
顧客データ分析表

経営専門家の意見

営業方針をきちんと策定し、スタッフが一丸となって取り組んでいることは非常に評価できる。

また、該店は新聞販売店から牛乳販売店への参入ということで、新聞配達店で培った顧客データの活用をしっかりと行っており、細かなデータ収集により、顧客へ的確な商品紹介につながり、客単価アップにもつながっている。

地域的に、昼間人口が少ない地域でもあることから、LINEを活用したお客様とのコミュニケーションや販促など、新たな取り組みが効果を出しており、LINE登録率が74%と高いことは非常に評価でき、他店でも導入していきたい取り組みであると言える。

また、各種イベントや企画においてもスタッフとの報告・連絡・相談体制が整っており、計画、実行、評価の経営サイクルを回して取り組んでいることは他店でも取り組んでいきたい内容である。

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