第35回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞新聞業務との相乗効果で
発展を目指す販売店

株式会社TENPO計画
森永ミルクファーム

代表者髙井 秀樹

ここがポイント

  1. ①新聞販売事業を生かした経営
  2. ②独自LINE開設でお客様とコミュニケーション
  3. ③地域社会との積極的な交流

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史

  • 新聞事業が創業後約50年を経過、現在も生業業務として継続中
2015年11月
牛乳販売の廃業店を引き継ぎ牛乳宅配事業に参入(顧客数100軒)
2019年
顧客数約1,300軒まで伸長
2020年以降
コロナ禍により販売促進活動が停滞し顧客数減少
2022年
牛乳宅配のセールス部隊を編成し販促活動を再開、回復に転じる

(2)代表者の経歴

1993年3月
東北学院大学卒業
1993年4月
建築資材関連会社に入社
1998年4月
実家の読売新聞販売店を継承
2015年11月
牛乳宅配事業に参入

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 1坪 0.2坪
支店 3店 2坪 0.3坪
サブ店

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
1台 6台

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 4人 6人
女性 1人 3人 4人
合計 1人 1人 1人 7人 10人

(4)経営状況

①令和4年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 81.9 96.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 133.3 0.2
牛乳関連合計 81.9 96.7
宅配卸以外の売上計 70.5 3.3
合計 81.5 100.0
②令和4年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 81.4 95.1
卸(小売) 126.7 1.6
自販機
集団
その他 70.5 3.3
合計 81.5 100.0

③令和4年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 80.6 100.0
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 0.0
牛乳関連合計 80.6 100.0
粗利益率 98.5 51.2
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝                       750本
午前     1 14   450   150   300 900
午後     1 11              
夜間                      
その他                      
合計     2 25   450   150   300 900
  • 牛乳の宅配は新聞配達が完了した後から、配達開始している。

(5)立地環境

  1. 本店は仙台市太白区東中田にあり、支店3店は仙台市青葉区に仙台中央店、名取市に名取店、白石市に白石店を配置している。
  2. 仙台市、名取市は人口増加傾向にあるが、白石市は働き世代を中心に人口減少が加速し、高齢化、過疎化が進むと見込まれている。
  3. 近隣の競合3社が仙台市近辺を商圏としているので、当店は特に過疎化が進む県南エリアの買い物難民などに貢献できる取り組みを進めていく。
名取店
仙台中央店

経営方針

  1. 新聞業務終了後に牛乳宅配をスタートする。
  2. 新聞業務との相乗効果で発展を目指す。
  3. 当面の目標として顧客数2,000軒を目指す。
  4. 過疎地で買い物に苦労している人達に貢献する。
  5. 経営は新聞、牛乳を合わせて全体的な効率運営を目指す。

活動内容

1.新聞販売事業を活かした経営

  • 新聞を配達している顧客全部に、森永商品の販売促進チラシを折り込み、ブランド認知と売り上げ拡大を図っている。
  • 新聞を拡販しようとするとき、森永絹とうふを景品として扱い、新聞の契約率向上と森永絹とうふの認知率拡大を図っている。
  • 現状900軒まで回復、当面の目標を2,000軒として活動している。

2.読売新聞の企画紙面制作委員としての活動を有効活用

①日本新聞協会より地域貢献賞を受賞 (日本新聞協会の記事より抜粋)

  • 店主は2011年に発生した東日本大震災の数日後に気仙沼市の避難所へ物資を届けた。後日、そこに避難していた小中学生4人が、被災地の状況や復興状態を記事にした壁新聞「ファイト新聞」を作成したことを知り、子供が自ら考え、成長する機会を作ろうと「読売中学生新聞みやぎ」の企画を思いついた。
  • 仙台市教育委員会と協力して、参加生徒は、職場体験の一環として記者の仕事を体験し、実際に取材、写真撮影、記事の作成・編集を行い、発行した新聞は自店をはじめ読売センターが協力して仙台市の中学校の全生徒と読売新聞読者に配付している。この活動は10年目を迎えた2021年には日本新聞協会による「地域貢献賞」を受賞した。
  • 新聞製作に参加する生徒には、宅配商品を提供し、顧客層の拡大と取扱商品のPRと共に牛乳部門の事業に活かしている。

②新聞広告で宅配商品のPR

  • 新聞制作委員として機に応じて、宅配商品のチラシを新聞広告として紙面に掲載し、宅配商品のPRも行っている。

③新聞記事として牛乳販売店の情報を掲載

  • 牛乳販売店を取材し、その情報を新聞の記事として掲載することもある。

3.お客様とのコミュニケーション

①独自LINEで顧客とのつながりを強化

  • 独自LINEを開設し、定期的な健康情報の発信や販売促進などで顧客とのつながりを強化している。
  • 情報としては、クーポン発行、お買得情報、近隣のカラオケ店の割引利用券の提供などによる効果として落本率の向上がみられた。
  • 月間落本率は、未登録者3.5%に対しLINE登録者1%と落本低下に繋がっている。

②キャッシュレス決済の導入、強化

  • コロナ禍対策として導入したキャッシュレス決済が好評であり、落本率向上に貢献している。
  • 6か月後の落本実績では、訪問集金と比較してキャッシュレス決済での落本率は2割程度低くなっている。

③お客様の苦情、配達商品の変更などの対処

  • お客様の苦情、配達商品の変更などの申し入れがあった場合、必ず顧客のもとへ足を運んで今後について話し合って対処している。

高齢者単身世帯向けのお届け確認サービス

  • 希望する高齢者単身世帯向けにお届け確認サービスをLINEとメールを使って実施している。内容は、牛乳の配達が終了した後に家族に配達完了メールを送信するもので、取り忘れをなくすのが目的であったが、見守りサービスとしても機能し、現状、希望する家庭での取り忘れも起きていない。

4.品質管理について

①蓄冷剤の使用を季節により変更

  • 蓄冷剤使用は季節により変更している。夏:多く 冬:少なく

②保冷受け箱の管理

  • 保冷受け箱は毎回手拭きを実施している。また、汚れが目立つもの、蓋の破損など壊れそうなものは新品と取り換えている。取り替えた受け箱は全て廃棄している。
新品の受け箱
新品と廃棄品
廃棄品の仮置き場

③HACCP衛生管理対策

  • HACCP衛生管理対策として、温度測定の記録を保存して管理している。

④取り忘れ対策

  • 顧客の取り忘れに対しては、状況を顧客に説明した後、代替商品と交換して健康上のトラブルがないように心がけている。

5.経営管理には新聞販売の経験が活かされている

事務スペース
  • 読売新聞コンピュータ「ダントツ君」と森永乳業の「さくらヴァン」が連携可能な仕組みだったので、すぐに相互に連動できた。顧客情報、販売管理、労務管理に有効活用している。

6.従業員採用とスタッフ研修について

①従業員採用は順調に推移している

  • 新聞業務終了後に午前配達15コース、午後配達12コースをスタートさせているが、この時間帯だと家庭の主婦などは自分の時間を自由に使えるので、希望者が多く現在は採用にはあまり苦労していない。

②スタッフ研修を年に1回実施

  • スタッフの研修は1年に1回全員集合の研修を実施し、各拠点の本店、3支店については3か月持ち回りで個別に研修実施している。内容は交通安全にはじまり新製品情報、顧客対応、クレーム対応など多岐に亘っている。

③連絡システムにLINEを活用

  • 拠点間、スタッフ間の連絡システムにはLINEを有効に活用している。

7.地域社会との交流

①防犯協力会への協力

  • 仙台市防犯協力会の主催による定期会合に毎年参加協力している。

②町内会長として地域社会に貢献

  • 仙台市青葉区中央の町内会長を過去9年間つとめてきた。次年度も継続を依頼されているので引き受ける予定であり、地域社会には積極的に協力している。これは地域貢献が主な目的だが、結果として牛乳の拡販に繋がればと考えている。

③リズムダンス大会の運営

  • 日本リズムダンス連盟宮城支部の理事としてリズムダンス大会の運営を行っている。
  • スポーツ庁発表の部活動の地域移行ガイドラインに伴い、2012年より必修化されたダンス授業の講師教育や資格制度推進の為、レベルアップを図る目的で地元の大会運営に協力している。

8.拡販対策

①イベントでの拡販

  • コロナ禍前は郵便局やスーパーマーケットなどで骨強度測定会等のイベントを開催して拡販を目指していたが、現在はイベント出店できていない。

②「牛乳宅配セールス部隊」の活動で拡販実施中

  • 新聞スタッフから牛乳宅配のセールス部隊を編成、プッシュ型で地域を決めてサンプル提供等による拡販活動で効果を発揮している。月に50軒を獲得するまでに回復してきている。

③新聞スタッフによるテレアポ

  • テレアポは新聞スタッフにより実施し仕組みの相互利用を行っている。

④ウェブマーケティングも実施

  • インターネットサイトで販売するものだが、どうしても価格競争となり、利益面のメリットはなく課題となっている。

⑤オートロックマンション対策

出荷待ちのゆうパック
  • オートロックマンション対策としてゆうパック配達を実施している。

経営専門家の意見

新聞事業50年という「配達」に特化した業務の経験を踏まえ、同じ配達業務である牛乳販売には新聞事業のノウハウが使えて、あまり違和感なく参入できたのではないかと推測する。それにしても、廃業店引き継ぎ時点の顧客数100軒から4年後に1,300軒まで伸長した実績には驚かされる。新聞事業のノウハウだけではなく従業員を含めた全員の努力が実ったものと思われる。

ところが、順調に推移していた業績もコロナ禍で頓挫せざるを得なかった。しかし、昨年からコロナがやや落ち着き始めたので、当面1,300軒への回復活動を開始した。新規採用ではなく、新聞スタッフの中から「牛乳宅配セールス部隊」を結成して配達件数の回復を図っている。これまでの努力の結果として、一時は700軒まで落ち込んだ顧客数が、現状900軒まで回復してきた。これから更なる努力を重ね、従前回復そして当面の目標を2,000軒に設定して努力している。

今後は、競合3社との兼ね合いも考えて、過疎化の進展が顕著な県南地域をターゲットとしていく予定である。過疎化の進む地域では買い物にも苦労する人が多い状況なので、買い物難民対策にもなると考えている。

店主は、読売新聞の制作委員としても活動しており、その活動を有効活用している。取扱商品のチラシを新聞折り込みとして広範囲に配布する、新聞本紙に広告として掲載する等により取扱う森永宅配商品の広報的な役割にもなっている。

なお、新聞事業での取り組みではあるが、「読売中学生新聞みやぎ」の取り組みで日本新聞協会より地域貢献賞を受賞するなど、地域の顔として貢献度は大である。その参加者に取扱う牛乳乳製品を配り担当社員を取材するなど、ここでも森永ブランド拡大に繋げている。

顧客とのコミュニケーションにはLINEを有効活用している。情報提供は、クーポン発行、商品のお買得情報、近隣商店(カラオケ店の30%割引など)の割引券等であり、効果として落本率の向上がみられた。また、LINEは従業員との連絡にも活用している。

従業員といえば、牛乳事業でのスタッフ採用に苦労がないというのが喜ばしい限りである。なお、休刊日以外毎日の新聞配達の方では採用に苦労しているとのこと。人口減少社会の象徴ともいえる人手不足は、今後、益々顕著になると予想されるので、牛乳事業で優秀なスタッフが採用できるのは有難いことである。

優秀なスタッフ採用は、当面の目標である顧客数2,000軒を目指すためにも必要であり、従業員全員での達成を祈りたい。新聞事業ではPCやスマホの普及拡大で顧客数減少も見られ、比較的順調な牛乳事業との複合的な事業展開による拡大発展を祈念したいものである。事業開始時の4年間で1,200軒拡大した実績から考えても十分達成可能と考えられるので、これからの益々の発展を期待したい。

トップページへ戻る

ページトップへ