第35回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 Jミルク会長賞地域の盛り上げ役として、
地域になくてはならない存在に

小岩井牛乳 横浜ミルクセンター
代表者北嶋 克悦

ここがポイント

  1. ①地域イベントを活用した営業の展開
  2. ②細やかなお客様対応
  3. ③メディア、SNSの徹底活用

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)代表者の経歴

代表の北嶋克悦氏
  • 石川県羽咋市出身。大学時代は、新聞奨学生として新聞の営業や配達をしながら大学に通学していた。
  • 1983年、大学を卒業後、設計会社に就職。
  • 親戚の牛乳販売店(世田谷販売店 相田商店)、相田氏から販売店の仕事が向いていると勧められ、牛乳販売店の開業を検討。
  • 1984年、創業。その後も近隣の相田商店から販売店業の手法を学ぶ。

(2)販売店の歴史

店頭の様子
  • 1984年、東京都世田谷区中町にて創業。
  • 1991年、自宅兼店舗の物件を求めて横浜市青葉区の現住所に移転。
    移転のメリットとして、店舗賃料と家賃の支払いが一元化され、支出が抑制されたこと。また、小岩井の販売店が数多くあった世田谷区から販売店の無い当該エリアに移転したことにより、広範囲の営業が可能になったこと等が挙げられる。
    一方、移転先のエリアは昔ながらの販売店が多く、地域に溶け込むことが容易ではなかった。そこで、商店街活動や地域のお祭りなど、地域活動に積極的に携わることにより地域との関わり・ネットワークをつくることから取り組みをスタートした。こうした背景により、現在も地域活動を中心に活動している。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 1坪 0.8坪 5台
  • 自販機は温浴施設や企業等に5台設置している。
  • 冷凍庫は冷凍ストッカーを6台保有している。
冷蔵庫内の様子
冷凍ストッカー

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
1台 1台
ライトバン
ライトバン内

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 7人 8人
女性 1人 1人
合計 1人 1人 7人 9人
  • パート・アルバイトは基本的に配達員ではなく、非日常のイベント等に携わっているスタッフである。
  • お祭り等のイベント時には、平日は企業勤めをしている長男・次男が手伝いに入るケースもある。

(4)経営状況

①令和4年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 132.0 44.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 132.2 37.7
牛乳関連合計 132.1 82.0
宅配卸以外の売上計 156.4 18.0
合計 135.9 100.0
②令和4年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 150.0 18.4
卸(小売) 108.1 52.1
自販機 665.4 11.4
集団
その他 158.3 18.0
合計 135.9 100.0

③令和4年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 158.7 63.9
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 115.8 36.1
牛乳関連合計 140.0 100.0
粗利益率 17.2
  • ベーカリー、ミニショップ、老健施設、病院、幼稚園等への卸売が全体の半分以上を占める。
  • お祭り等イベントでの収益は、業態別売上高の「その他」に計上されており、全体の18%を占めている。
  • 粗利益率については、全体の半分以上を占める卸売事業が約15%と低く、それによって全体の数値も17.2%と低くなっている。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝     5     30 18 114 18   180 120本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     5     30 18 114 18   180
  • 月木2コース、火金2コース、水土1コースの計5コース。
  • 集金は引落を基本としているが、他店から引き継いだ先などで一部袋集金、訪問集金が残っている。

(5)立地環境

  1. 横浜市青葉区は、人口31万人で横浜市では二番目の区であり、転入者と転出者では転入者の方が多いエリアである。自然が多く、公園数は横浜市内で一位の区であり、住居地区以外には田んぼも残っており、町と自然が共存しているという特長がある。そのため、長く住む人が多く、22.3%と高齢化が進んでいる。一方、年少人口も横浜市内第二位であり、教育への取り組みも充実している。
  2. 競合は、地域内には他マークの店が4店ある。ただ、地域の会合等を通じて、競合店とは非常に良好な関係を築けている。

経営方針

モットー

牛乳屋の枠組みを超えて、地域の健康・笑顔づくりに積極的に取り組むこと。

  1. 地域に対し、安心安全な食を通じて、健康づくりに貢献する。
  2. お客様が求めるモノ・コトについて、提供するだけでなく、元気・感動・つながりをお届けする。
  3. 地域を支える取り組みを緊急時だけでなく通常時から行い、必要とされる存在になる。

活動内容

1.商店会・自治会のイベントを活用した取り組み

①商店会との深いつながり

  • 地域内に数多くある商店街、商店会にできる限り参加し、地域活性化活動に取り組んでいる。商店会が主催するイベントに積極的に携わることで、地域内における人脈・ネットワークを築いている。
  • 現在は、あざみ野商店会、青葉台商店会、たまプラーザの3つの商店会、江田駅周辺商店会と6か所の商工会に賛助会員として入会し、活動している。青葉区内にある15か所の商店会すべてとつながり、それらをつなげていくことにより、更に地域活性化を推進することを将来の目標にしている。

②イベントへの積極的な参画

イベントでの出店の様子
  • お祭り等のイベントに積極的に参加し、牛乳や飲料等の販売はもちろん、射的コーナー等、それ以外の模擬店出店なども行っている。牛の着ぐるみで参加するなど、イベントの盛り上げ役として不可欠な存在となっている。
  • イベントでは冷蔵設備や発電機の貸し出しなども行っており、出店以外での貢献度も高い。また、自治体との共催でイベントを開催し、そこで使えるクーポン券を発行するなどの取り組みも行っている。こうした面からも地域のイベントにおいて欠かせない存在となっている。
  • 春から秋にかけては、ほぼ毎週末のようにイベント出店が続く。こうした取り組みは、イベントでのお店の収益に直結するだけでなく、地域と深くかかわることにもつながり、卸先や個人客の紹介にもつながっている。
共催で開催した「プチ縁日」チラシ
プチ縁日用のクーポン券

2.子どもから高齢者まで幅広く地域とつながる

①地域の人たちの安全・健康をサポート

  • 地域の防犯パトロール登録をしており、地域の治安維持や防災訓練などに積極的に関与している。イベント時は出店だけでなく、パトロール隊としても参加している。
病院への寄贈は地元新聞にも掲載された
支援学校に寄贈
  • コロナ禍においては、地域の病院や施設等、エッセンシャルワーカーの人たちに向けて乳飲料やヨーグルトを寄贈。地元の新聞やタウンニュースでも大きく取り上げられた。
  • 地域の子どもサッカークラブに健康づくり支援として牛乳の提供・啓蒙活動を実施している。その他地域の子どもたちとも積極的に接点をつくり、啓蒙活動に取り組んでいる。
牛の着ぐるみで地域を盛り上げる
子どもサッカークラブをサポート

②地域の認知症予防の取り組みへの参加

  • 地域では高齢化が進んでおり、認知症対策は急務となっている。認知症の予防の取り組みとして、地域商店街などが中心となって会合・啓蒙イベントを行っているが、メンバーとして会合に参加したり、イベントに出店する等を行っている。
  • 桐蔭学園があざみ野商店会らと協力して進める「認知症の人にやさしい街プロジェクト」に賛同し、実行委員メンバーとして関わっている。2021年には、桐蔭学園に乳飲料やヨーグルトを無償提供し、地元のタウンニュースにも取り上げられた。

3.細やかなお客様対応

①きれいに商品を届ける取り組み

  • 受箱がきれいであれば、商品もきれいに見える。そのために受箱は毎回回収・ジェット洗浄し、受箱ごと交換する「BOX交換方式」を採用している。店内でのピッキング時に受箱に入れ、受箱のまま配送・設置するため、配達時に商品に触れることもなく、衛生的である。
  • 受箱は、ハンドル式で箱上部が平らなものを使用している。ハンドル式だと手渡しが可能であり、回収時も運びやすい。また、箱上部が平らなため、配送車への積載効率も良い。
受箱は毎日ジェット洗浄
配送時の積載状態

②お客様の興味を知り、個別対応

  • 訪問集金のお客様に対しては、集金時の会話でお客様の好きなものを聞き、個別対応するようにしている。聞いた情報は顧客管理システムに記入しておき、会話時のネタにしたり、プレゼントなどに活用したりしている。
  • かつて近隣の廃業店からお客様を引き継いだ際、長年にわたってお付き合いされているお客様が多かったため、落本対策を打つ必要性があった。そこで店の近くにある八百屋から旬な果物を調達して車に積んでおき、集金時に旬な果物(例えば、同じミカンでも産地の違うもの)をプレゼントしたところ、会話が弾み喜ばれた。前店主が取り組んでいないことに積極的に取り組むことにより、落本を抑制することにつながった。

③配達時のメモ

  • 宅配顧客に対しては、取り忘れ防止対策として、配達時に「配達しました」のメモを入れている。引落による集金のお客様は顔を合わせる機会がほとんど無いが、細やかなフォローをするよう心掛けている。

PCによる顧客管理

  • 氏名、商品などの顧客情報はもちろん、受箱の設置場所や、お客様からの希望を可能な範囲で入力し、適宜更新している。上述した会話時のネタや好きなものなども細かく記入することで、お客様へのきめ細やかなフォローにつなげている。
  • 宅配顧客だけでなく、卸先についても同様にPCにて顧客管理を行っている。取引先ごとの情報を細かく記入しておくことで、各卸先の要望に応えられるようにしている。

4.顧客との絆づくりのための情報発信

①SNS等多チャンネルを活用した情報発信

  • フリーダイヤルを設置し、小岩井商品を中心とした牛乳類に関する地域のお困りごとへ積極的に対応している。
  • Facebookを中心に、インスタグラム等とも連携させ、情報を発信。定期的に配布するお手紙やメモに、QRコードを印刷して、SNSに誘導している。Facebookは最低でも週1回更新を行っており、情報の鮮度を維持している。

②商品情報の提供

  • 地域の大型新聞配達店との連携により、サンプル配布などを通じて商品情報の発信・問い合わせ等に対応している
  • 出身地である石川県の観光特使として、県産品や観光についての情報を発信している。

経営専門家の意見

該店は、従来の販売店のような取り組みとは異なる、ユニークな活動によって、地域においてなくてはならない存在となっている。商店会のイベントでは地域活性化のために盛り上げ役となり、また地域内の施設・住民のためにお店の利益を度外視して支援する。このように“お店の利益”よりも“地域の利益”を最優先に取り組む姿は、地域内において大いに信頼を生んでいる。地元の新聞やタウンニュースで何度も取り上げられ、地域ではマスコミも注目する存在。「区内のすべての商店会をつなげることが目標」という姿からも、お店のことだけでなく、地域活性化に使命感を持って取り組まれている様子がうかがえた。これからも地域のみならず、業界を活性化する存在として活動される姿を大いに期待したい。

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