第35回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

農林水産省畜産局長賞顧客感動経営を目指す
労使一体の明るい職場

かわだ商事株式会社
代表者川田 泰弘
発表者川田 泰基

ここがポイント

  1. ①従業員の定着とお客様を大切にする経営の実践
  2. ②品質管理の徹底でお客様に安心・安全な商品をお届け
  3. ③見守り活動など行政と連携した地域貢献活動で地域一番店へ

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

(1)販売店の歴史

川田泰弘氏
1970年
初代社長三郎が駄菓子屋を開業
1976年
かわだ商事株式会社に法人化して牛乳の卸事業に参入
1981年
現社長泰弘が入社
1992年
地場産業の織物不況のあおりにより牛乳卸の業績が急速に低下、これを機に牛乳の宅配事業に参入した
2011年
泰弘が社長に就任

(2)発表者 泰基の経歴

川田泰基氏
2011年3月
新潟市内の専門学校卒業
2011年4月
太陽光パネル会社に就職
2012年4月
かわだ商事株式会社に入社
2020年
専務に昇格、現在に至る

店舖概要と立地環境

積雪対策を施した店舗全景
事務所前の冷蔵庫周辺

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機
本店 1店 6坪 1.5坪 1台

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン 二輪車等
その他
持込車
3台 1台 8台 1台

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 2人 5人 3人 10人
女性 3人 2人 5人
合計 2人 8人 5人 15人

(4)経営状況

①令和4年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 100.3 79.4
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 107.7 20.6
牛乳関連合計 101.7 100.0
宅配卸以外の売上計
合計 101.7 100.0
②令和4年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 101.9 88.8
卸(小売) 100.4 10.2
自販機 96.4 1.0
集団
その他
合計 101.7 100.0

③令和4年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 101.3 91.9
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 107.7 8.1
牛乳関連合計 101.8 100.0
粗利益率 100.2 45.7
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 キャッシュレス 合計
早朝     8     134   346 314   794 2400本
午前     14         678 1354   2032
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     22     134   1024 1668   2826

(5)立地環境

  • 国道117号線を十日町市街から長野方面に向かったロードサイドに店舗を構えている。周辺は農業中心の郡部であるため人口減少が続いており、高齢化率は4割を超えている状況である。店舗の東側と西側に同マークの優良販売店が営業している。そのため、競合を避ける目的で、新潟県だけでなく長野県北部の中野市、飯山市他にまで営業地域を広げている。

経営方針

  1. お客様は財産であり、従業員は宝であるとの気持ちを常に持ち行動する
  2. 地域に密着した活動を行い、地域一番店をめざす(地域貢献)
  3. 品質管理の徹底により、お客様に安全、安心の商品をお届けする
  4. 苦情への対応は電話で済ませず、お客様の家まで足を運んで対応する

2023年度経営目標…従業員からの提案

  1. 活気ある明るい職場作り
  2. 一人ひとりのお客様を大切に
  3. 感染症対策はしっかりと
  4. 安全安心な商品を確実に届ける
  5. 安全運転で無事故に

活動内容

1.安全で明るく安心して働ける職場づくりによる従業員の定着

①従業員13名のうち8名を正社員として雇用している

  • 正社員化の目的は、従業員が安心して長く働ける職場にしたいという願望によるものであるが、その意に沿うように、従業員は常に顔を合わせて声を掛け合う雰囲気ができており、一体感が醸成できた職場環境となっている。
  • 全従業員が参加する全体会議を隔月で実施し、様々な情報を共有すると同時に従業員が感じている問題点や不満を聞き取り、迅速な解決を図っている。

②スタッフ定着による営業成績の安定

  • 営業会議では、目標設定とその成果の確認のほか、商品知識の向上を目的としたロールプレイングを実施し、絶えずスタッフの営業技術の向上を図っている。そして、スタッフは心理的安全性が担保されているため自由に発言し、メンバー間で互いに必要なアドバイスを行っている。
  • 新人スタッフには専務が、日々の行動を把握した上で精神的ケアを含めた育成・指導を行っている。

③研修での学びを全員で共有、実践

  • 県内の5販売店で構成する「有志勉強会」に参加し、研修での学びを実践した結果を営業会議で効果効能の検証を行い、次の行動に繋げている。
  • 「有志勉強会」の研修内容は次の通りである
    ア、管理者対象の月1回の定期ミーティング
    イ、スタッフ対象の四半期に1回の集合研修

④従業員の長期定着で安定した営業成績を挙げている

  • スタッフの勤続年数が11年、9年、4年と長期勤続者が多い事から安定した営業成績を挙げることができている。
  • 長期定着は世間一般で取り沙汰されている人手不足、2024年問題への対応策として現状は功を奏しており、今後もこの取り組みを続けていく予定である。

➄明るい職場環境は経営目標にも反映されている

  • 従業員の創意で2023年度経営目標が作成され、実際に運用されている(2023年度経営目標は経営方針欄に掲載)。

2.お客様を大切にする経営の実践…お客様とのコミュニケーション

①「かわだMILK通信」を年3回発行して交流を図っている

  • 発行は全て手書きで、お勧め商品や季節商品等の情報提供の他、スタッフ紹介やクイズ、アンケート、間違い探し、川柳の募集などを通じて、回答の応募者には内容に応じて景品を提供している。アンケート結果は社内とメーカーで共有し、自社の業務改善とメーカーへの提言に活かしている。
かわだ通信「冬バージョン」
「夏バージョン」
アンケート内容

②お客様の声はホワイトボードに掲示し情報共有している

  • お客様からの手紙やクレーム情報等を全従業員が目にすることができるようにホワイトボードに掲示し、仕事の励みにするとともに、各業務における「お客様を大切にする」という意識向上に繋げている。

③クレームにはお客様の家まで足を運び、丁寧にお詫びしている

  • 苦情の申し出に対しては、電話で済ませず必ずお客様の家まで足を運び、対面で丁寧にお詫びをして販売店としての誠意を見せると共に、申し出の内容を直接聴くことによって、内容を正確に把握して迅速かつ的確な対応を行っている。

3.お客様を大切にする経営の実践…営業、配達における実践例

①商品終売時には必ずお客様の家まで足を運んで理解を得ている

  • メーカーからの商品終売の情報が入った場合、社長、専務、営業スタッフ総出で対象顧客を訪問し、『お客様の健康維持の為の代替商品提案』を行い、理解を得ることによって解約を最小限に抑えている。

②一軒のお客様を大切に

  • 落本の多い冬季などにお休みしたお客様に対して、春先に配達スタッフが自身の担当コースのお客様に配達再開を提案するなど、各業務の担当者それぞれが『一軒のお客様を大切に』することを心がけている。

③他店と比べ低い解約率

  • お客様を大切にする活動と徹底した品質管理、正確な配達、働きやすい職場づくり、営業スタッフの教育など取組の成果は1.5%という、他店と比べ極めて低い解約率となって表れている。(2023年度上期・日均本数ベース)

④お客様との情報交換にインスタグラムを活用している

  • インスタグラムを利用して、新商品情報やイベント情報等を発信している。
    骨密度測定会は毎月10日に行われる十日町市の「とおか市」での開催情報、該店の屋内で行われる「かわだカフェ」では体力測定会や乳製品、二次商品の販売などの情報を提供している。
かわだカフェ案内
かわだカフェ開店前
骨密度測定会

4.HACCPの考え方を取り入れた徹底した品質管理

  1. 全改協の手引書と新潟県食品衛生協会の「販売業におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に従い、「一般衛生管理」の項目に従った点検を行い記録している。
  2. 保冷受箱は毎日清掃しているが、汚れのひどいものや色褪せたものは回収し、毎週水曜日に担当者が洗浄している。
  3. 冬季の蓄冷剤使用は、寒冷地なので本来は不使用の時期だが、使用するか否かはお客様に決めてもらっている。約10%のお客様が使用を希望している。
  4. 受箱・蓄冷剤・保冷シートは毎日洗浄し、毎週金曜日には配達車両の洗車を実施して、従業員の衛生意識を高めるとともに、お客様の視点も踏まえた衛生管理を行っている。
  5. 管理表を用いた在庫管理により適正発注を行うと共に、商品の日付を毎日チェックし先入れ先出し及び商品の賞味期限管理を徹底し、お客様に前回配達時と同日付の商品を届けることがないように気をつけている。
  6. 卸の得意先に配送するときには冷蔵車を使用し、庫内温度を5℃以下に保って納品している。

5.安全管理の徹底

  1. 安全管理のため、配達スタッフは毎日2人一組で配達車両の点検を行い、異常のないことを確認し作業日報に記録している。内容はブレーキ、フロントランプ、バックランプ、ウインカー等のチェックである。
  2. 走行距離、積み込み・出発・配達開始・配達終了時刻を作業日報に記録し、異常を察知した場合には速やかに対応し問題解決を図ることを心掛けている。
  3. 毎週金曜日には洗車を実施して清潔を保っている。

6.バラエティーに富んだセットチラシ、二次商品の販売で楽しさ提供

①毎月オリジナルのチラシによるセット販売を実施

  • お客様に喜んでもらえる企画を考えて実施しており、今年度は「宅配バラエティセット」として牛乳・色物・機能性飲料・機能性ヨーグルト16本のセットを販売するなど、遊び心や驚きも加えた企画を実施し好評を得た。
  • 過去のセットの例:「お風呂上りセット」、「機能性バラエティセット」、「ヨーグルト食べ比べセット」など

②予想外の二次商品の販売が好評

  • 食品に限らず、家庭で必要とされる豊富なラインナップを取り揃え、フライパン等をはじめとした人気商品販売が好調に推移している。また、食品では旬に合わせた果物や野菜、海産物、年末にはおせち等メーカー直送でかつ高単価商品を販売することで、売上・利益の向上にも寄与している。

③マーク協会青年部の二次商品企画会への参加

  • マーク協会青年部の二次商品企画会にも積極的に参加して、活性化に貢献している。
宅配バラエティセット
好評のフライパン
季節食品

7.高齢者や子供等の見守り活動で効果発揮

“雪印メグミルク”の【地域の見守り活動】について…チラシより抜粋

  • 全改協の地域安全パトロールと共に平成27年に新潟雪印メグミルク協会は新潟県との間で「新潟県における地域の見守り活動に関する協定」を締結した。牛乳等の飲料配達事業者では初めての締結である。趣旨は「誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指し、地域社会に貢献できれば」との強い思いから協力を申し出た。配達は県内全域を定期的に夜間・早朝・日中にわたり行っているので、配達をしながら単身高齢者や子供等の見守りを行っていく、というものである。
【地域の見守り活動】チラシ
対応報告書(対応者は専務の泰基氏)

実際に保護活動が発生、対処した

  • 2020年に徘徊している高齢者に声をかけ、警察に保護してもらうまで付き添い対応した(対応者は泰基専務)。

8.環境への配慮、地域貢献活動参加による社会貢献

①新潟県エコ事業所制度に登録し環境配慮の取り組みをしている

  • 温室効果ガス排出量削減年間計画を新潟県に提出し、全従業員で環境に配慮した事業活動に取り組んでいる。営業・配達・仕分け・事務の各部署で「効率の良い走行」、「納品時のエンジンオフ」、「不要照明の消灯」等を徹底し、日報による走行管理や消灯管理を行っている。

②泰弘社長は新潟県のマーク協会長を10年間勤めている

  • マークを超えた経営管理や営業活動などの情報交換の起点となっている。また、先進的な取り組みに率先してチャレンジし、効果のあった事例でも惜しみなく他店に披露している。
エコ事業所制度
事務所内
冷凍庫の一部

9.拡販対策

  1. 専任2名、配達兼任2名、計4名で拡販を実施して効果を挙げている
  2. テレアポで事業所専門に実施している。クロージングは職場を訪問して面談のうえ契約を行い、お届は自宅へというパターンが多い。

経営専門家の意見

該店には経営上二つの大きな柱がある。一つは標題に記した「従業員リードの明るい職場環境づくり」と「お客様を大切にする経営」である。その信念は経営方針の一番目に表されている。「お客様は財産であり、従業員は宝であるとの気持ちを常に持ち行動する」というもので、その心配りが行動面の随所に現れている。

従業員リードに関して特筆されるのは正社員化である。2024年問題等人手不足対策が世の中の大きな課題になっている現在、該店の取り組みは成功している例の一つと考えられる。

正社員という安定した雇用体系は従業員にやる気を喚起させている。全体会議、営業会議共に従業員に自由に発言して貰い、経営幹部は、従業員の発言に対して反発したり咎めたりせず、要望に対しては迅速に対処するというスタンスで進めている。この雰囲気が従業員同士のアドバイスややる気を起こさせているものと考えられる。

従業員自身が考え行動に移している実態は2023年度経営目標にも顕われている。従業員からの提案というのも好ましい経営環境が感じられる。

お客様を大切にする経営に関しては、まずは、かわだMILK通信である。全て手書きで温かみに溢れている。クイズやアンケートなど回答があったら必ず景品を渡しているので、お客は積極的に回答してくれる。

苦情や商品の廃止に伴う代替商品の紹介などに際しては、社長以下営業スタッフも含めて、お客の家まで訪問して対処しており、一軒のお客様を大切にするという心がけである。

また、品質管理、安全管理も万全と思える体制をとって実行されている。特に感心させられるのが社会貢献活動である。

  1. 高齢者や子供等の見守り活動…新潟県との協定による活動し、実際に徘徊老人を保護した実績がある。
  2. 新潟県エコ事業所制度に登録し環境配慮の取り組みを行っている
  3. 新潟県のマーク協会長を10年間勤め、マークを超えた経営管理や営業活動などの情報交換の起点となっている。

なお、この取り組みは地域だけでなく社会貢献という広い対応となっている。

その他、地域、お客様への情報提供にはインスタグラムを活用して、新商品情報や骨密度測定会などのイベント情報を流している。

該店は、従業員ファーストで一軒のお客様を大切にする経営の実践ができている。この経営姿勢が今後も続いていけば、更なる事業拡大が見込めるように思う。そして、会社繁栄のため全社一丸となって取り組む姿は、社長の自社だけでなく地域、社会全体を意識した経営方針が実っているように感じた。今後の益々の発展を祈念したい。

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