第34回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

農林水産省畜産局長賞セミナーと商品提供で
地域住民の健康長寿をサポート

NPO法人JSBデイリーサポート
健康森永 箕面池田店

代表者北村眞隆

ここがポイント

  1. ①健康長寿の推進を目的とした取り組み
  2. ②地域団体との連携
  3. ③健康や安全を切り口にした新規開拓

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

店頭の様子
平成30年4月
箕面市川瀬にてNPO法人JSBニュースクールを発足。
当時新聞販売店3店舗を経営していた北村眞隆氏が、親子で新聞を読み会話する「新聞塾」を行うことを目的に、同組織を立ち上げた。
令和元年9月
森永乳業の特約店として乳製品の宅配をゼロからスタート。
令和2年4月
法人名をNPO法人JSBデイリーサポートに変更。
令和3年5月
新聞販売店の代表を退任し、当NPO法人の活動に特化。事務所を現在の箕面市半町に移転。
令和4年9月
9月末時点で、乳製品380軒、野菜果物40軒。
代表の北村眞隆氏
冷蔵庫の中
冷蔵庫
冷凍庫

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 1.5坪 0.5坪

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
1台 2台
  • 配送には2台のバイクと軽トラックを使っている。
配送用バイク
配送用バイク
軽トラック内のシッパー

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 2人 4人
女性 1人 1人 2人
合計 1人 2人 3人 6人
  • 家族従業員としては、奥様が経理を、また高校生の長男がピッキングを行っている。

(4)経営状況

①令和2年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 207.5 98.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 150.0 1.8
牛乳関連合計 206.1 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 206.1 100.0
②令和2年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 216.6 96.7
卸(小売)
自販機
集団 122.2 3.3
その他
合計 207.5 100.0
③令和2年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 207.4 98.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 120.0 1.4
牛乳関連合計 205.4 100.0
粗利益率 42.8  
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込
CVS
引落 PayPay
合計
早朝       6   46 277 65     388 376本
午前       6              
午後       6              
夜間                      
その他                      
合計       18   46 277 65     388

(5)立地環境

  1. 大阪府箕面市と池田市を商圏としている。大阪市のベッドタウンであり、大阪市中心部まで30分でアクセス可能である。一方、緑豊かな場所が多く、温泉やホテルもあり、紅葉の時期などには多くの観光客が訪れる地域である。
  2. 商圏内には、同マークの販売店は該店を含めて2店のみである。同地域では、他社メーカーの宅配カバー率3.5%に対し、森永宅配は0.9%と苦戦している。牛乳宅配以外の生協も大阪府の生協以外に隣接の兵庫県の業者も対応しており、大きな競合となっている。
  3. 令和5年には鉄道の延伸による人口流入などが見込まれ、ますます牛乳宅配の需要が高まる可能性のある地域である。

経営方針

当NPO法人は、箕面市と池田市の皆様が健やかに生き生きと有意義な日々を過ごしていただけるように、免疫力と栄養価が高く、新鮮な商品をお届けしています。 また地域貢献の一環として、ジュニア・シニア・ビジネス拠点を応援する健康イベントやセミナーを推進して、安心して暮らせる街づくりをサポートします。

活動内容

1.「健康長寿の推進」を目的とした取り組み

①腸と脳を強くする健康長寿クイズ大会の開催

イベントチラシ
  • 箕面市と池田市の地域福祉委員会が主催するシニアサロンにて1時間程度のセミナーを実施。1回あたり20~30名のシニアが参加し、各小学校区の公民館などで開催している。
  • 健康長寿に欠かせない成人病及び認知症予防の腸活をクイズにした内容で、参加者に楽しみながら学んでいたくことを目的としている。
  • 参加者には御礼として後日、ご自宅へ乳製品サンプルをお届けして成約に結び付けている。
  • コロナの影響により、令和3年は年1回、令和4年は年2回の実施であったが、令和5年以降は年6回以上の実施を予定している。

②認知症サポーターとしての講演の場を活用

健康長寿フォーラム チラシ
  • 「認知症サポーター養成講座」の資格者であり、「認知症」の観点からも講演することができる。
  • 箕面市健康長寿フォーラムで「腸活における成人病および認知症予防」の講師を務める。そこで森永乳業のメモリービフィズスの研究開発結果を紹介し、脳腸相関による認知機能アップ効果についても発表。
  • 参加者には森永のミニギフトや乳製品の申込書を手渡しし、新規開拓に結びつけている。令和5年1月には箕面市船場小劇場にて開催、500名程が参加。

2.地域団体との連携

①フードパントリーへ乳製品の寄贈

フードパントリーに寄贈したことを伝える配布物
  • 池田市の地域福祉委員会が主催する「フードパントリー」に定期的に乳製品を寄贈。コロナで開催中止にならなければ、年6回は当イベントに参加している。今後は箕面市への参加も検討している。
  • 各小学校区にある公民館などで開催され、毎回100人程度の地元の人が参加している。乳製品を1人に一本ずつ、無償で「健康森永です」と言って手渡ししている。
  • この取り組みによって福祉委員の人たちとの交流が深まり、地域サロンでの販促活動がしやすい状態になっている。また、その地域内での認知度向上・イメージアップにつながり、その後訪問営業しやすい状態になっている。

②地域ささえあい推進会議への参加

  • 「地域ささえあい推進会議」とは、池田市と箕面市の地域包括支援センター、9か所の監修を受けた企画であり、コロナの影響がなければ年3回ほど実施されている。高齢者や子供が孤独にならないように、生活での困り事が無いように色々な企画を出し合う場であり、各小中学校区にある公民館などで開催される。毎回約50名が参加し、約2時間にわたって行われる。
  • 福祉委員、民生委員、コミュニケーションセンター員、シニアクラブ、PTA、自治会、包括支援センター、学校などあらゆる属性の人たちが参加しており、該店にとっては関係づくりや認知度向上の場になっている。

③地域の野菜・果物のセット販売

野菜・果物チラシ(表面・裏面)
  • 池田市の卸売市場から仕入れた新鮮な野菜・果物によってオリジナルセットをつくり、乳製品と共に届けている。現在約40軒の契約先がある。地元および日本全国の旬の食品をスーパーやコンビニより数日早くお客様に宅配することができるため、喜ばれている。
  • セットはS・М・Lの3種類を揃えており、それぞれ1,480円・2,480円・3,480円(税込)で販売している。
  • 野菜ソムリエでもある卸売市場のオーナーは、地域貢献意識が高いため、連携して地元小学校へのコラボ総合学習(出前授業)の企画なども検討している。

3.お客様との密なコミュニケーション

①商品価値を高めるメッセージの配達

知っ得クイズ
  • 乳製品と一緒に受け箱へ、腸活にまつわる健康メリットおよび善玉菌や栄養成分の効果のチラシなどを配布している。
  • 毎月「健康」に関する三択クイズを作成し、「知っ得クイズ」としてお客様に配布している。
    当たった方には次月の請求額から、週間宅配本数×10円の金額を値引いている。また、殆どが正解できるよう、問題・選択肢は簡単にし、応募者が増えるよう工夫している。値引きによる金銭面のメリットと、乳製品を飲む価値を知れるメリットの双方を感じてもらえ、大変喜ばれている。
  • 同様に、余ったヨーグルトを無駄なく使えるよう、「ヨーグルトを使った料理レシピ」も配布している。

②プレゼントの贈呈

誕生日プレゼント
  • 成約時にお客様の誕生日を聞き、その情報をもとに誕生月の初めにプレゼントを贈っている。該当商品以外の乳製品をお渡しし、飽きない様に銘柄も変更している。
  • その他、年に二度御礼訪問し、コーヒーや味噌汁などの健康食品をプレゼントしている。また、7月にはカレー2袋を、11月には豆腐2個をそれぞれお中元・お歳暮として贈っている。こうした定期サービスによる落本防止に努めている。

③お客様用ファイルの配布

  • 契約から2カ月継続したお客様にはお客様用ファイル一式を渡し、更なる興味付けを行っている。なお、2か月未満で契約をやめてしまうお客様が多いこともあり、2カ月の継続を一つの基準にしている。
  • ファイルには、キャンペーン情報や商品情報のチラシ等をセットしている。
お客様用ファイル
お客様用ファイル

4.健康や安全を切り口にした新規開拓

①見守り活動を切り口にした新規開拓

  • 独居老人の家族や包括支援センターに紹介された先と契約し、毎週手渡し配達をしながら安否確認をしている。また、宅配・集金・物販のお届け・お中元お歳暮・誕生月プレゼント・電話での定期挨拶等、コミュニケーションを密に取ることにより、見守り機能を担っている。
  • 牛乳宅配は、有料の見守りサービスではなく、牛乳による「健康」と合わせて無料で手に入れられるサービスである。「地域ささえあい推進会議」などでこのメリットを伝え、安心して独居老人を見守るシステムとして、口コミで広げていただくよう展開している。

②「健康をお届け」を前面に出した営業

  • 「玄関先まで“健康”をお届け」を前面に出したオリジナルチラシによって新規開拓を行っている。NPO法人としての特性を活かし、「地域貢献」や「シニアの健康サポート」などを前面に出して地域のお客様にアプローチしている。
健康をお届け」を前面に出したチラシ
「安否確認宅配」のチラシ

経営専門家の意見

該店は、箕面市と池田市の住民の健康・長寿・安心した暮らし等を目的に活動しているNPO法人である。NPO法人としての特性を活かし、地域と密接にかかわりながら、地域に根差した取り組みを行っている点が大きな特徴である。

代表である北村眞隆氏は、長年にわたり大規模に展開してきた新聞配達店の代表を退任し、退路を断ってこの活動に打ち込んでいる。また自ら認知症サポーターの資格取得者になり、地域のセミナーなどで健康に関する啓蒙活動を熱心に展開するなど、地域の健康長寿に本気で携わっていこうという姿勢が感じられる。NPO法人の目的は、地域の「健康長寿」や「安心した暮らし」の実現であり、あくまでも牛乳販売はその目的を実現するための一手段である。こうした姿勢や使命感が地域からの信頼につながり、周りからの協力などにもつながっていると感じる。

セミナーや個別コミュニケーションによってお客様に役立つ情報を提供し、同時に拡売を進める―こうした該店のベースとなる取り組みは、セミナー開催の中止など、コロナによる影響を大きく受け、当初の予定から大きく遅れを取った。しかし、コロナによる制限が少しずつ緩和される中、まだまだ小規模ではあるが、ここにきて成長軌道に乗りはじめている。

今後は、地域住民の健康サポーターとして、また安心して暮らせる街づくりサポーターとしての更なる活躍と、それに伴う牛乳販売店としてのますますの成長を大いに期待する。

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