第33回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 Jミルク会長賞お客様に安心感を与える
情報発信の工夫

有限会社一実牛乳
代表者多々良 佳弘

ここがポイント

  1. ①ホームページや情報誌を使った情報提供
  2. ②地域密着の取り組み
  3. ③外部機関の活用

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

店頭の様子
代表の多々良 佳弘氏
昭和49年10月
先代多々良勉氏が創業。
「一つの実りある事業を目指し、一致団結して成し得る」という由来から「一実(ひとみ)」という言葉を取り、草津一実販売店としてスタートする。
平成11年
現代表・多々良佳弘氏が、当時勤めていた雑誌関係の会社を退職し、該店の手伝いに入る。
平成12年4月
雪印乳業と契約。これを機に急激に拡売が進む。
平成12年7月
食中毒事件により顧客離れが進む中で法人化を進め、有限会社一実牛乳を設立。
平成13年
廃業した湖南市岩根町の店舗を引き継ぎ、支店として運営している。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 2.5坪 2坪 4台 3台
支店 1店 1.5坪 0.5坪
  • 草津市の本店の他、本店から車で約1時間離れた湖南市岩根町に支店(水口デポ)を展開している。平成13年、廃業したお店を引き継ぎ、運営している。
冷蔵庫内の様子
冷凍庫内の様子

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
2台 4台 2台
  • 達にはライトバン及び軽トラックを使用している。年間通して保冷剤と保冷シッパーを使用している。
ライトバン
軽トラック

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 8人 10人
女性 2人 3人 5人
合計 1人 2人 11人 15人
  • 1名の専従従業員は、配達・営業に加え、ホームページの制作・更新や月1回発行している情報誌「ヒトミ通信」の制作等、オールマイティな役割を担っている。
  • 支店はパート1名に任せており、それ以外のパート10名は、本店の配達を担当している。

(4)経営状況

①令和2年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 108.9 96.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 3.8
牛乳関連合計 108.5 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 108.5 100.0
②令和2年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 112.9 73.5
卸(小売) 104.5 22.7
自販機 71.9 3.9
集団
その他
合計 108.5 100.0
  • 卸は、病院3施設と保育園約10施設。また、地元有力企業の売店への卸も含んでいる。
  • 自販機は、令和2年途中に設置していた銭湯が1施設閉店したことにより、2台分のマイナスとなっている。
③令和2年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 109.2 97.2
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 2.8
牛乳関連合計 108.9 100.0
粗利益率 34.3
  • テレアポを中心に拡売に力を入れており、売上・利益共に大幅に増加している。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     16 3   60   649 739   1448 1,085本
午前       3              
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     16 6   60   649 739   1448
  • 新型コロナウイルス対策として、集金方法を訪問から銀行引き落としに変更してもらうキャンペーンを実施した。その結果、コロナ前は250軒以上あった訪問集金先は60軒にまで減少した。
  • 現在は電子決済の導入も検討している。

(5)立地環境

  1. 本店は、滋賀県南部の草津市にある。草津市は、京都・大阪まで電車一本で往来できるうえ、高速道路や国道も通っており、ベッドタウンとして栄えている。県内では大津市に次ぐ第2位の人口を有している。
  2. 配達エリアは、草津市、大津市東部、栗東市、守山市、野洲市、湖南市、近江八幡市南部。

経営方針

経営理念
  1. 現代表の多々良佳弘氏がメーカーの研修に参加し、以下の経営理念を作成している。経営理念は店内の壁に掲示しているほか、ホームページで社外向けにも発信している。

    有限会社一実牛乳は、乳製品を始めとする健康に寄与する食品の宅配を通じ、お客様に対して最大限の奉仕をし、地域社会の発展の一翼を担う努力を惜しまない姿勢を以って、日々の仕事に真摯な対応で臨みます。

    「信用第一」、「人材育成」、「明るい社風」、「お客様本位の精神」

  2. 該店のホームページでは、上記経営理念に加え、以下の「お伝えしたいこと」についても掲載している。

当店はディスカウントスーパーとしてではなく、「牛乳」の専門店として、プライドを持って確立して行きたいと考えております。1本の牛乳をご購入して頂くことにより、商品そのものだけでなく、それに付随するサービス、知識、そして何より「健康」を買って頂きたいと考えています。

活動内容

1.ホームページや情報誌を使った情報提供

①ホームページによる情報提供

ホームページ
「お申し込み・ご利用の流れ」
ホームページ
「ひとみ お客様ひろば」
看板猫の副店長
  • ホームページの制作・運営は、元広告代理店勤務の専従従業員が行っており、広告代理店で培ったノウハウを活かし、充実した内容となっている。特に、お店や取扱商品の情報だけでなく、宅配のメリット、お申し込み・ご利用の流れ、お客様からのお声など、お客様に安心感を与える内容がしっかりと網羅されている。
  • 上記以外にも、「お客様広場」のコーナーや、お店のイベントや看板猫の写真を掲載している「写真ギャラリー」のコーナーなど、お客さまと深く接点をつくるための工夫が見られる。

②月1回の情報誌で情報提供

ヒトミ通信
  • 情報誌「ヒトミ通信」を月1回作成し、お客様に配布している。
  • ホームページ同様、元広告代理店勤務の専従従業員が作成しており、充実した内容となっている。

お客様紹介コーナー

  • お客様の趣味や仕事内容を取材し、その情報をホームページや情報誌で「お客様広場」というコーナーを設けて発信している。
  • これによってお客様のホームページや情報誌への興味を喚起しているほか、お客様とのパイプづくりにも役立っており、結果として落本対策にもつながっている。

2.地域密着の取り組み

①「健康管理士がいる牛乳販売店」をアピール

健康管理士一般指導員 認定証
店頭の看板
小学校郊外学習の感謝状
  • 代表者の奥様・多々良理香氏が健康管理士一般指導員の資格を取得し、「健康管理士がいる牛乳販売店を前面に出して展開している。
  • 店頭の看板も補助金を活用して「“健康管理士”がいる」の文言を追加したものに変更した。
  • 骨密度測定会では個別相談コーナーを設け、健康管理士の相談が受けられることを売りにしている。

地元小学生に対する郊外学習の実施

  • 地元小学生に対する郊外学習を実施し、販売店のことや牛乳販売の仕事の説明などを自家製のパネルを使って実施している。
  • 新型コロナウイウルスの影響で一時期は 中止されていたが、2021年から再開している。

③骨密度測定会

地元広報誌「きりり通信」に広告掲載
  • コロナ禍においても、変わらず実施意向であった地元スーパーにて、骨密度測定会を継続的に実施した。前述したとおり「健康管理士によるアドバイス」を前面に出し、地域の方々の健康の相談に乗る存在であることをアピールしながら開催している。
  • 骨密度測定会については、草津市老人クラブ連合会発行の広報誌「きりり通信」に広告掲載するなど積極的に情報提供している。

3.積極的な拡売策および落本対策

①テレアポによる拡売

  • テレマーケティング会社を活用してテレアポを積極的に実施しており、週30軒のアポイントを継続している。うち成約率は2割であり、週5~6軒、月間20軒以上の新規客を獲得している。
  • テレアポに関しては、週30軒から45軒に増やし、更なる拡売に力を入れている。

②落本対策

  • 雪印メグミルク、毎日牛乳など主力メーカーのほか地域乳業、飲料、健康食品など取り扱いメーカーを充実させ、お客様のニーズに応えられるよう品揃えをしている。
  • おはようカードを使ったポイント制度や誕生日プレゼントなど、並行して一定の落本対策も行っている。また、前述したように「お客様紹介コーナー」を設けてお客様を取材したり、拡売が困難な冬場に既存客を回って受け箱の清掃をしたりなど、お客さまとの接点づくりにも力を入れている。
  • こうした取り組みにより、積極的に拡売しているにもかかわらず、落本率は2%前後と比較的低い水準を維持している。

4.外部機関の活用

①商工会議所の活用

  • 地元の草津商工会議所に加入し、補助金などの制度をうまく活用している。「小規模事業者持続化補助金」などの制度の紹介や、申請手続きのサポートなどをしてもらうことで、会員としてのメリットを活かしている。
  • 店頭の看板設置や骨密度測定器のリースなど、こうした補助金制度をうまく活用している。

メーカーの勉強会等の活用

  • マーク協会の青年部の活動に参加したり、研修会に参加して理念を作成するなど、外部機関をうまく活用している。

③優良事例発表の活用

  • 優良事例発表における優良事例店の取り組みを積極的にお店に取り入れている。テレマーケティング会社を通じたテレアポやお客様への誕生日プレゼント、手作りボードを用いた小学生向け郊外学習での説明など、過去の優良事例店の取り組みを参考にしている。

経営専門家の意見

該店は、テレマーケティング会社を通じたテレアポやお客様への誕生日プレゼントなど、優良事例発表を通じて学んだやり方をコツコツとお店に取り入れ、成長を遂げてきた。また、メーカーの勉強会に積極的に参加したり、地元商工会議所とのつながりを踏まえて補助金情報を入手したりなど、積極的に外部からの情報を収集し、それをうまく活用してきた。このように外部の情報にアンテナを立て、それらをお店に取り入れていこうという姿勢が、現在の該店の源泉になっているものと感じられる。

一方、「ご利用までの流れ」や「お客様の声」など、ホームページで発信している情報からは、お客様に対して安心感を発信していこうという姿勢が窺える。また、「健康管理士」の認定を受け、その資格を前面に出し、牛乳販売だけでなく、お客様の健康をサポートする役割を担っていこうという姿勢。さらに、ホームページなどで「お客様紹介コーナー」を設け、お客様の情報を外部にも発信していこうという点などからは、安心感だけでなく、お客様と寄り添っていこうという姿勢も感じられる。

外部の情報をお店の経営にうまく取り入れ、一方で安心感や寄り添う姿勢を外部に発信する。いずれも当たり前のことであるが、これを着実に積み上げてきた成果が、今の業績につながっている。他店においても是非とも参考にしていただきたい優良事例である。

トップページへ戻る

ページトップへ