優秀賞
一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞地域に密着し顔の見える営業で
奮闘する販売店
森永牛乳 桜田販売所
代表者鏡 幸成氏
発表者中野 敬介氏(写真)
ここがポイント
- ①顔の見える営業でお客様とコミュニケーションをとっている
- ②高齢世帯への生活支援
- ③牛乳・乳製品の効果・効能等の情報提供
発表店概要
販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴
昭和40年に代表者鏡 克己氏が、森永乳業関連の地場メーカーである日本製乳と契約を交わし、森永牛乳桜田販売所を開業した。
実質経営者である鏡 幸成氏は大学卒業後、宮城県仙台市で社会学の勉強のためサラリーマン生活を12年間経験した。この間に、経営に関する考え方を学ぶと共に、従業員としての働き方やモラール醸成方法など貴重な経験をすることができた。そして、事業承継を前提として平成15 年に帰郷し桜田販売所の経営に参加、平成16 年から実質経営者として事業に専念している。
現在、経営は順調であるが、将来に関しては悩みがある。それは、孤軍奮闘中の桜田販売所の将来像に関するものである。家族経営では限界を感じる現状を如何にして維持するか、そしてどうやって拡張を目指すのかである。代表者克己氏は既に高齢
の域に達しており配達などの実務が困難なこと、そして、現在は約100軒の配達を受け持ってくれている母親も、近いうちには配達困難になることが避けられないので、桜田販売所の将来像を考慮する時期に差し掛かっているからである。
店舖概要と立地環境
(1)牛乳関連店舗・設備
店数 | 冷蔵庫 | 冷凍庫 | 自販機 | ショーケース | |
---|---|---|---|---|---|
本店 | 1店 | 1坪 | 1坪 | 5台 | ー |
(2)牛乳関連営業用車両台数
保冷車 | 冷蔵車 | 軽トラック | ライトバン | その他 | 持込車 |
---|---|---|---|---|---|
1台 | ー | 1台 | 1台 | 1台 | ー |
(3)牛乳関連従業者数
経営者 | 家族従業員 | 専従従業員 | パート アルバイト |
合計 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 1人 | 1人 | ー | ー | 2人 |
女性 | ー | 1人 | ー | ー | 1人 |
合計 | 1人 | 2人 | ー | ー | 3人 |
- 代表者克己氏は実務には携わっていない。母親も配達100軒のみで、実質単独での配達である。
(4)経営状況
商品分類 | 前年比 | 構成比 | |
---|---|---|---|
牛乳関連 | 普通牛乳 | 103.3 | 89.5 |
加工乳 | |||
LL牛乳 | |||
乳飲料 | |||
ヨーグルト | |||
その他宅配商品 | 122.2 | 10.5 | |
牛乳関連合計 | 105.5 | 100.0 | |
宅配卸以外の売上計 | 0.0 | 0.0 | |
合計 | 105.5 | 100.0 |
業態 | 前年比 | 構成比 |
---|---|---|
宅配 | 110.8 | 49.0 |
卸(小売) | 91.3 | 10.0 |
自販機 | 110.8 | 19.5 |
集団 | 95.7 | 21.4 |
その他 | 0 | 0 |
合計 | 105.0 | 100.0 |
商品分類 | 前年比 | 構成比 | |
---|---|---|---|
牛乳関連 | 普通牛乳 | 102.5 | 91.4 |
加工乳 | |||
LL牛乳 | |||
乳飲料 | |||
ヨーグルト | |||
その他宅配商品 | 127.8 | 8.6 | |
牛乳関連合計 | 104.3 | 0 | |
粗利益率 | 42.7 | 100.0 |
配達 時間帯 |
コース数 | 集金方法(軒) | 日均 本数 |
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
毎日 | 週3 | 週2 | 週1 | 他 | 訪問 | 振込 | 引落 | 袋 | 他 | 合計 | ||
早朝 | 4 | 160 | 40 | 50 | 250 | 500 | 400本 | |||||
午前 | ||||||||||||
午後 | ||||||||||||
夜間 | ||||||||||||
その他 | ||||||||||||
合計 | 4 | 160 | 40 | 50 | 250 | 500 |
(5)立地環境
- 商圏内の人口は約56,000人、世帯数は約36,000世帯である。
- 販売所の立地は山形市中心部からも近く、付近には1大学と徒歩圏内に高校が5校あるなど山形県有数の文教地区にある。
- 付近には食品スーパーやコンビニエンスストアの他、同業態の大型店などが立地しており競合は激しい。
経営方針
- 地域に密着した、地元に愛される販売店を目指す
- お客様とのコミュニケーションを密に行い、末永くご利用いただけるお店を目指す
活動内容
1.顔の見える営業でお客様とコミュニケーションをとっている
①配達変更や休配などの要望があった場合、必ず訪問の上内容を確認している
- 父親の時代からの顧客も多いので、できるだけ密な関係を維持することで落本止につなげている。配達変更や休配などの要望を熱心に聴くことにより、コミュニケーションが深まるとともに、父親から事業承継していることを確認してもらうことにもつながっている。顧客の死亡・入院・転居による落本はあるが、商品の味や配送など牛乳自体に起因するものは殆どない。
②その他の宅配商品に関しては、牛乳と一緒には配達せずに、改めて訪問し手渡しするようにしている
- 手渡しで安心感が高まり商品のリピーター増加に貢献している。
③休眠客の掘り起こしにも訪問が効果発揮
- 上記①、②の顧客を訪問した後に、その近所の休眠客宅を訪問、コミュニケーションをとることにより、タイミングが良ければ再契約につながることもある。
④顧客維持と感謝の念を込めて毎年お歳暮を贈っている
- 健康食品として好評の“常温保存可能なお豆腐”と全改協のミルクカレンダーを全顧客に贈っている。
2.近所の幼稚園との30年以上の交流で地域社会に貢献
①近隣の幼稚園に30年以上、牛乳を納入している
- クリスマスなどのイベントがあるときには、デザートや飲料を協賛している。また、園児の工作用に使用済みの紙パックを寄贈するなど、交流を深めており、毎年、園児から感謝状をもらっている。この取り組みが売上や利益に大きく貢献するものではないが、地域の牛乳販売店として長年、地域にお世話になってきたお礼の気持ちで対応している。長年のお付き合いになっており、他社への切り替えも起こっていない。尚、この内の1軒は実質経営者の幸成氏が通った幼稚園である。
②郵便局での試飲会開催
- 新規顧客獲得が主目的であるが、地域社会に貢献する意味も含めて、試飲会に併せて骨密度測定も実施している。
3.高齢世帯への生活支援
①取り忘れ対策
- 取り忘れが発生した場合、受け箱にメモを入れて注意を喚起している。取り忘れが2回続いたら電話連絡した上で、要望があれば取り換えしている。
② 高齢世帯へは集金時に意識的にコミュニケーションをとっている
- 体調管理や健康状態などをヒヤリングしている。
- 重い物やかさばる物の移動や時には買物代行など、ちょっとした雑用なども引き受けている。
③今後は有事の際の連絡体制も検討したいと考えている
- 高齢者の有事の際のフォローを意識して、家族への連絡体制を確立させたいと考えている。
4.牛乳・乳製品の効果・効能等の情報提供
①情報チラシ「森永牛乳桜田販売所 とくとく情報」発行
- 新商品や季節商品などが発売された場合、とくとく情報のチラシを発行して受注につなげている。新商品については、チラシと商品サンプルを全顧客に直接面談して配布・PRしている。
②情報誌マミークランを全顧客に配布している
③ラクトフェリンやビフィズス菌の効能については、メーカー斡旋のチラシを使用し、定期的に顧客に配布している
- 牛乳を納品している近隣の幼稚園では、インフルエンザの流行する冬場にラクトフェリン入りのヨーグルトを定期的に購入してもらっている。
5.品質管理について
①納品は保冷車を使っている
- 蓄冷剤は3月~11月に使用している。
- 冬場は凍結防止のため顧客からの要望があった場合や、特に極寒が予想された場合は断熱シートを使用して保温している。
②夏場は車のドア開閉に細心の注意を払い、保冷状態を確実に維持・確認して配達することにしている
6.将来展望と従業員の雇用について
①現状はほぼ1人で業務展開している
- 両親の高齢化が進んでおり、今のままでは、近い将来に完全に1人態勢になるので従業員の雇用を考えている。過去にも業務拡大のため求人を実施したが、適切な従業員の採用には至っていない。業務内容は当面、母親が担当している顧客100軒の配達であるが、そのためだけのパート採用はムダであり、もっと多くの配達を任せたい。パート従業員の能力いっぱいの仕事を確保するためには、新規顧客獲得が是非とも必要である。
- 配達員の採用と合わせて、現在母親が担っている経理業務についても引継ぎ要員が必要と思われる。今までは、家族経営だったので母親への給与は特に考えてなかったが、新規に事務員採用となれば給与支払いが生じるので、利益確保のための拡販が必要になる。
②将来展望が必要
- 従業員採用、売上と利益の向上策、実質経営者自身の業務内容など、将来を展望する時期に来ている。
経営専門家の意見
該店は、代表者鏡克己氏が昭和43年に開業して54年間、実質経営者の幸成氏に引き継ぎながら地道に発展させてきた販売店である。克己氏は81歳と高齢のため配達業務には携わっていないが、顧客の多くは克己氏に馴染みが深い関係である。
そのお客様を守り、更に発展させていくために実施しているのが「顔の見える営業」である。早朝配達でお客様との対話に時間的に余裕がないが、少ない機会を捉えてお客様とコミュニケーションをとるように心がけ、訪問集金の時に加えて、配達変更や休配の依頼、二次商品の配達、新商品情報提供などの機会に直接お客様に会って話をするようにしている。
既存顧客を大切にするとともに地域社会への貢献活動として、30年以上続く近所の幼稚園との交流は長年、地域にお世話になってきたお礼の気持ちで対応している。
また、高齢世帯への貢献活動では、現在検討している「高齢顧客の有事の際の連絡体制」については、是非とも実現させてほしい取組みである。その実現のためには、個人情報の保護対策などもしっかり多応して、是非実現させてほしいものである。