牛乳販売店優良事例発表会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞ホームページを開設して
従業員と地域の信頼を確保


株式会社県南森永宅配センター
代表者浪岡 一
発表者金田 渉(写真)

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

平成24年2月、青森県三沢市で冷菓等の卸売を行っている親会社が、取引先である乳業メーカーから紹介されて、岩手県江刺の廃業店を引き継ぎ、お店が再スタートした。親会社からは切り離し、独立採算であることを当初から意識しており、別会社で宅配事業が始まった。引継時は江刺本店の他に一関市に支店を構えていたが非効率であるため江刺に集約した。その後も廃業店を引継ぎ、新たに一関店と三沢店を開設し、現在は3店舗体制である。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 2坪 0.5坪
支店 2店 2坪 1坪
  • 2つの支店はそれぞれ1坪の冷蔵庫と半坪の冷凍庫を保有している。親会社が自販機とショーケースの展開を担当しており、当社は宅配を専業にしている。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
1台 1台 2台 3台 9台
  • 保冷車と冷蔵車は三沢支店で導入している。持込車輌は順次減らしており、平成27年に開設した三沢支店はすべてが自社車輌である。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 5人 3人 9人
女性 1人 3人 6人 10人
合計 1人 1人 8人 9人 19人
  • 本店が8人、一ノ関店が7人、そして三沢店は3人の体制で運営している。

(4)経営状況

①平成30年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 104.6 90.8
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 104.6 9.2
牛乳関連合計 104.6 100.0
宅配卸以外の売上計 0.0 0.0
合計 104.6 100.0
②平成30年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 104.6 100.0
卸(小売) 0 0
自販機 0 0
集団 0 0
その他 0 0
合計 104.6 100.0
  • 卸と自販機事業は親会社で行っている。新規出店によって売上高は伸びている。
③平成30年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 100.5 90.8
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 102.1 9.2
牛乳関連合計 100.6 100.0
粗利益率 52.7
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝                       1500本
午前     45     205   150 1616   1971
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     45     205   150 1616   1971
  • 全て週2回の午前配である。本店が15コース、一ノ関店が20コース、三沢店が10コース。各店舗袋集金が中心である。

(5)立地環境

  1. 各店舗とも主要牛乳メーカー各社の販売店と競合している。
  2. 各支店の配達エリアでは人口は減少しており、住宅の密集度は低い。配達効率が悪いことが共通している。

経営方針

  • 正確な配達
  • 従業員を大切に
  • お客様への対応を素早く
  • 取引先を大切に

活動内容


1.求人サイトで人材を確保して支店展開

①江刺の廃業店を引継別会社で事業を開始

親会社は三沢市で冷菓等の卸を現在でも行っているが、取引のある牛乳メーカーの紹介で代表者の急死で事業ができなくなった江刺の廃業店を引継いだ。親会社とお店が離れており、代表者がお店に常駐できないため、事業開始に際して宅配事業の責任者に責任と権限を与え別会社で事業を開始させた。

②ホームページが人材確保の重要手段


東北では人口減少と若者の都会志向によって、宅配人材が極めて不足している。高校の進路相談室に確認し、ホームページが企業の信用を示していることを学んだ。このため自社ホームページを作成し、インターネットの人材募集サイトを通じてスタッフを確保している。ネットサイトから人材募集を行う為に、労災保険や退職金規程等の福利厚生を整備した。この成果として、これまでの応募者はすべて求人募集サイトからの応募であったことが上げられる。このようなネット対応が地元住民に認められた結果と判断する。

③経営は責任者に任せ支店展開

その後も廃業店を引継ぎ、一関店と三沢店を開設した。店の経営は正社員に任せ、代表者は原則として週に1回各店を巡回してミーティングを実施する。日常的な情報交換はメールで行うので、地理的には離れているが営業上には支障が無い。

2.新規契約から3ヶ月間は落本防止サービス

①おすすめ商品無料交換券で新規の落本防止


専門の営業マンに拡張を依頼しているが、新規契約のお客様には1ヶ月毎に利用で3ヶ月間利用できる「おすすめ商品の無料交換券(お楽しみサービスチケット)」を進呈している。1ヶ月毎に1回チケットを切り取って受け箱に入れていただき、商品をお届けする。 1ヶ月目はお店がおすすめする2商品、2ヶ月目はヨーグルト3品、そして3ヶ月目は長期保存できる絹ごし豆腐である。お得感を味わっていただきながら扱っている商品の紹介を行い、最終的には二次製品の試食に繋げている。

②落本の傾向分析

宅配システムから落本のデータを抽出することができる。分析しているのが新規顧客の落本動向である。何日目に落本したか、落本の原因、取引商品等を集計・分析することから生まれたのが「お楽しみサービスチケット」である。

③牛乳メーカー提供の販促物をフル活用

既存顧客に対する日常的な販促としては、牛乳メーカー提供の月刊誌やカレンダーを配布し、それらに備わっている販促機能を利用して落本防止を行っている。

3.非常時に備えて宅配システム連動の車載タブレット導入

配達スタッフに予期しない変化が発生した時等に活用。

①車載タブレットを導入

各支店で電子地図を組み込んだ宅配管理システムを導入している。電子地図と宅配データを連動させた車載タブレットを企業全体で2セット購入し、非常時に備えている。

②2台を有効活用

配達スタッフが休んだときや退職して配達員が一時的に不足した時に、車載タブレットが活躍している。欠員が発生した店舗のコースデータを入力し、代表者自らそのコースの配達を行っている。

4.取り忘れは安全のため回収し手紙で知らせ、自治体にも連絡

①取り忘れ商品は持ち帰り

週2日の配送であるため取り忘れを完全に無くすことは難しい。取り忘れがあった場合は安全性を第1優先としてその商品を回収し、当日配達の商品を受け箱に入れる。

②取り忘れにはメモを活用

取り忘れがあり、商品を持ち帰ったことと、受け箱の商品は本日配達の新しい商品であることはお客様に伝えなくてはならない。配達員はそれを手紙(メモ)でお客様にお知らせしている。持ち帰った商品はお届け済みの商品であるため、月次の請求書ではその代金も請求する。

③その他の異常を発見すれば自治会長等に連絡

受け箱に商品が残っているだけであれば異常とは判断しない。周辺を見渡して、郵便受けや玄関等に郵便物や新聞が貯まっている場合は異常ありと判断する。このときは配達員がドア等を開けて確認するのでは無く、その状況を自治会長等に連絡して、処理を依頼する。

経営専門家の意見

青森県三沢市に拠点を構える企業が隣の岩手県の廃業店を引き受けることから牛乳の宅配事業が開始されている。そこで必要だったことは「任せる」ことだった。別会社として本体と切り離し、社員に任せる体制を築き上げたことは、事業として育て上げようとする代表者の決意が現れている。

しかし、事業拡大のためにぶつかったのが人材確保である。ホームページを持っていないと法人であっても就職の対象企業から外れてしまうという現実である。早速ホームページを作成し、労働条件や社会保険等の雇用環境を整え、インターネットの求人サイトに募集を掲載している。このような社会変化を素早く感じ取る感性と素早い行動力は評価できる。


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