牛乳販売店優良事例発表会

優秀賞

一般社団法人 Jミルク会長賞“同じ釜の飯”発想で
従業員育成・経営も好調


有限会社あかま
代表者赤間 和夫
発表者安斎 久幸(写真)

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

安斎 久幸氏
赤間さんご夫婦

代表者の赤間 和夫氏は、父親が経営していた注文洋服店に昭和43年に入社し、洋服の仕立てに精魂を傾け、将来ともに注文洋服店の経営を維持、発展させる展望を抱いていた。しかし、当時は高度経済成長期の真っただ中であり既製服専門店が低価格で業界を席巻、注文服の先細りが懸念されていた。そのような折、昭和52年に森永乳業から廃業店の引継ぎ要請があったので、注文洋服店発展の夢をすっぱりと諦め、牛乳販売店への転身を決め有限会社あかまを開業、同時に社長に就任した。当初は、卸業務中心の事業展開だったが、その後、スーパーマーケットのセンター配送化が進み納入業務が激減してきた。そこで、生き残りをかけて段階的に個人への宅配事業に移行、当初100軒からのスタートだったが徐々に業績を向上させ、現在では1,800軒にまで拡張できた。

順調な業務展開とは裏腹に、一番大きな悩みは後継者問題だった。適切な候補者が身内にも従業員の中にもいなかったので、外部からの招聘を考慮、候補者選びを開始した。メーカーからの推薦を受けた安斎 久幸氏は廃業したミルクプラントで製造に従事していたこともあり、牛乳の品質に詳しく適任と判断、招聘を決断し、平成30年に二本松支店として吸収合併した。

該店では、毎月一回、第一水曜日の午前10時から従業員全員によるミーティングを開催しており、この会議が後継者としての安斎氏の貴重な勉強の場になっている。そして、当日のお昼には店主の奥様手づくりの食事会が催される。これは、「同じ釜の飯を食う」という発想で家族のような関係構築を目指し、強固な連帯感を養う試みとして奥様のアイディアで始まったものである。そして、そこで供される野菜類は店主夫婦によるガーデニングの成果物という、どこまでも心のこもったランチである。

発表者安斎氏は平成2年に家業の安達ミルクプラントに入社、一貫してミルク製造に関与しきたが、プラント廃業後は宅配事業に専念、業績を拡大させてきた。
そして、真面目で勉強熱心な性格が皆に愛されての後継者推薦である。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 3坪 1坪 6台
支店 1店 1坪 1坪
サブ店
  • 支店は安斎 久幸氏の二本松支店

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
2台 20台
  • 保冷車、冷蔵車を保有していないので、品質管理に特に重点を置いている。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 2人 15人 18人
女性 1人 2人 5人 8人
合計 1人 1人 4人 20人 26人
  • 家族のような関係構築が功を奏しており、20年以上勤務の従業員もいる。

(4)経営状況

①平成30年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 133.3 73.3
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 110.0 6.7
牛乳関連合計 131.0 80.0
宅配卸以外の売上計 181.7 20.0
合計 138.7 100.0
②平成30年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 131.0 80.0
卸(小売) 200.0 12.2
自販機 100.0 1.2
集団 150.0 3.7
その他 235.0 2.9
合計 138.7 100.0


③平成30年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 133.3 91.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 109.8 8.4
牛乳関連合計 131.0 100.0
粗利益率 43.0


④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     18     500   350 950   1800 1,700本
午前     1                
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     19     500   350 950   1800
  • 集金方法に関しては、配達員がお客様と話し合って決めている。

(5)立地環境

  1. 福島市は人口280千人、世帯数123千世帯の規模である。
  2. 本店は福島市中央部から南5kmにあり、他マークの販売店や競合大手の代理店等があり競争の激しい立地である。
  3. 二本松市(人口55千人、20千世帯)に二本松支店あり。

経営方針

  1. 地域に密着し地元に愛される販売店を目指す:お客様とのコミュニケーションを第一に心がけ、「健老長寿」で地域に貢献する販売店を目指す。
  2. 社員やパート従業員の全員が働きやすく、コミュニケーションしやすい環境づくりを大切にする
  3. 後継者の人選と育成:(長年の懸案は発表者・安斎氏の経営参入で解決しつつある。) 

活動内容

1.従業員とのコミュニケーションづくりに昼食会開催

①毎月第一水曜日に従業員全員による経営管理ミーティングを開催

  • 従業員全員が当月の顧客数の増減について報告
  • 拡販要員による当月目標に対する進捗状況の報告
  • 最近の発生出来事やトラブル等に対して意見交換し問題の解決をはかる
  • 交通事情など配達に関しての注意事項

この経営管理ミーティングは発表者安斎 久幸氏にとっては、現状の問題点の把握や、あるべき将来像を考えることができる貴重な訓練の場になっている。

②「同じ釜の飯を食う」発想で家族のような強固な連帯感醸成に成功している

  • 会議終了後店主の奥様手づくりの食事会が催される
  • 料理に使われる野菜類は店主夫婦によるガーデニングの成果物である

この経営管理ミーティングと昼食会は、従業員にとっても好評で経営者と親しく話し合いができる貴重な場となっている。

2.イベント開催や祭協賛等で地域に貢献

①郵便局での試飲会開催

郵便局での試飲会風景

毎月一回、郵便局で試飲会を開催している。2年ほど前から実施しているが概ね好評で平均2軒の受注に結びついている。

②二本松福幸祭に毎年協賛している

東日本大震災と原発事故からの復興を祈る「二本松福幸祭」に毎年協賛、出店しており、早期復興を祈っている。

③地域の行事に積極参加

清掃活動、雑草除去などの地域行事に対して、ボランティアとして積極的に参加している。

④集団に対する営業

家庭宅配以外では、地元の県立高校へ自動販売機での販売を行っている。また、地元企業の売店に乳製品を納入している。

3.お客様の要望にお応えするコミュニケーション活動

①配達員は止むを得ない場合を除いて、極力変更しない

お客様との良好な関係を築くため配達員は変えないようにしている。配達以外に集金方法など常に細かいコミュニケーションをとっているので、親密な関係を維持することが重要と考えている。

②「何でも連絡カード」を使って連絡

何でも連絡カード

早朝配達が主なので直接面談の機会は少ないため、連絡は情報誌マミーの「何でも連絡カード」を使って行っている。

③早朝配達へのこだわり

早朝配達にこだわっているのは、お客様からの要望にもよるもので、それは新鮮な牛乳を朝食時に飲みたいというものである。
但し、新規に契約していただいたお客様には、ご希望を聞いた上ではあるが、今後のコミュニケーションのしやすさを考えて、できれば午前中配達に同意してもらっている。

毎月一回のゴルフサークルに賞品を提供している

該店のお客様に限ったゴルフ大会を毎月一回開催して、長年のご愛顧に感謝を表している。サークルは3月~12月の開催で毎月約25名の参加がある。もちろん店主の趣味に始まるものであるが、落本防止には大きな効果があるものと思われる。また、たまには新規顧客の紹介もあるという。

4.高齢世帯への買物の利便性提供、取り忘れ対策、声掛けの実施

  1. 買い物に不自由している高齢世帯へ、マミークランや独自のチラシを配布して乳製品以外の商品の買物代行を実施している。特に要望の多いものが、重い物、かさばる物で、買い物代行の利便性に感謝されている。
  2. 取り忘れ対策として、受け箱に取り忘れメモを入れている。取り忘れが2回続いたら電話連絡している、そして商品の取り換えも行っている。
  3. 一人暮らしの高齢者には集金時、チラシ配布時に健康状態や日常生活での不満などを聞き、該店で対処できるものはすぐに実行することにしている。

5.翌日配達品の事前仕分け実施

毎朝の混雑解消のため、前日に配達員ごとに商品を仕分けて事前準備している。冷蔵庫の壁に配達員ごとに配達内容を掲示し、仕分けした商品は決められた位置にケースに入れて準備している。翌日、配達員はそれぞれに自分の配達分を確認した上で配達に出発する。この事前準備により、混雑が避けられるのと合わせて、配達商品が二重チェックされることになり、納品の間違いが極端に少なくなっている。これも冷蔵庫が3坪と広いためで、効率良い作業ができている要因である。

配達員ごとの納入明細
仕分け商品と冷蔵庫内部
仕分け商品

6.経営管理への取り組み

  1. 後継者育成に関しては、発表者安斎 久幸氏が積極的に経営参加している。毎月一回のミーティングへの参加に加えて、業界の情報が得られるカルダス会に出席して、円滑な業務推進のための情報収集、課題解決のための連携、対策などに役立てている。現状、メンバ-は約10名、Lineでやり取りしているが、情報収集以外に一種の刺激策にもなっている。
  2. 従業員採用に関しては、店主と発表者安斎 久幸氏が同席して業務内容を詳しく伝えており、納得してもらった上で採用することにしている。
  3. 奥様の「同じ釜の飯を食う」発想が功を奏しており、従業員の退職が少なく中には20年以上勤務している従業員もいる。

7.牛乳・乳製品の効果・効能等の情報提供

  1. 牛乳・乳製品の情報提供は、情報誌マミークランの全顧客への配布と、新商品に関しては、全顧客に直接面談してチラシを渡している。
  2. ヨーグルトのサンプルは、お試しセットとして1ケース6本で包装し、有料で販売している。
  3. 健康食品の「常温保存可能なお豆腐!」が好評で注文が多くなっている。また、評判がいいことを考えて中元・歳暮として全顧客に配布している。

8.商品の品質管理

  1. 保冷車、冷蔵車は持っていないので、その分品質管理には特に注意を払っている。クールワンシートを3月~11月に使用して保冷し、冬場は凍結の恐れもあるので使用しない。しかし、顧客から要望された場合や、極寒が予想された場合は断熱シートを使用して保温している。
  2. 夏場の車のドア開閉には細心の注意を払っている。
(有)あかま外観
事務所の風景
事務所の風景

経営専門家の意見

注文洋服店から転身した(有)あかま は、設立以来、色々と紆余曲折があったものの、総合的には順調な成長である。一時は好調であった卸売業務の急速な衰退により、個人宅配へ段階的に移行を開始した。その時点では100軒のみの顧客だったが、約20年間の努力で現在では1,800軒にまで拡張することができた。

拡販の3本柱は、①自社営業で店主、後継者、そして拡販要員によるもの、②廃業予定の他店引継ぎ、③外部営業専門スタッフ、である。

店舗運営で特筆されるのは、赤間和夫氏の奥様の貢献度である。「同じ釜の飯を食う」ことで家族のような関係が作れないかという発想から始められたもので、現在では、強固な連帯感づくりに成功している。

料理に使われる野菜は自家製である。そんな家庭的な雰囲気に共鳴した従業員の中には20年も継続して働いている人もいるという。

該店の悩みは後継者問題だったが、ここに安斎 久幸氏という立派な人物を、吸収合併という形で迎え入れられたことで、ひとまずは一安心である。これからは、後継者の仕事がやりやすいように店主は業務には携わらず、側面から応援する形になっている。

安斎氏は若手経営者の会で切磋琢磨しながら経営者としての資質を磨いている。

該店を総合的に判断した場合、「地域社会に対する活動」や「顧客とのコミュニケーション」などは実施されている。しかし、更なる発展のためには「高齢世帯への生活支援」活動への取組がポイントとなる。


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