最優秀賞
農林水産大臣賞正社員を採用・活用する
牛乳販売店をめざし日々挑戦!!
株式会社サンシーアイ
代表者加藤 耕氏
ここがポイント
- ①正社員による週1回の配送に切替え中
- ②月1回の店長会議で予算実績管理を実践
- ③宅配顧客の満足度を維持向上させる販売促進
発表店概要
販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴
昭和60年3月、先代が経営していた加藤商店から(有)サンシーアイへと改組し社長となって引き継いだ。引継当時は、牛乳とアイスの卸売業を主体とした会社で宅配は200件と少なかった。小規模スーパーと小売店への納品だけの儲けの薄い、将来に夢をいだけない商売だった。活路を飲食店に見いだそうと考え、生協の中で大判焼きとたこ焼きのお店、イオンショッピングセンターの中にラーメン店とソフトクリーム・クレープを主体としたお店を全額借入で出店。さらに、秋田市内にラーメン専門店「宝介」を3店出店した。
平成12年、取引メーカーの食中毒事件を機に卸売業を辞めることを決意。少しずつ拡張を続けていた宅配も、300件にまで減少した。しかし、宅配に将来性を感じそのまま残す事とした。その後、順調だったラーメン専門店の売り上げも次第に下がった為、飲食店全てを閉店し、牛乳宅配業一本で生計をたてようと決意した。そこからは、迷わず支店を4店舗開設し現在に至っている。平成29年4月には株式会社に改組した。
店舖概要と立地環境
(1)牛乳関連店舗・設備
店数 | 冷蔵庫 | 冷凍庫 | 自販機 | ショーケース | |
---|---|---|---|---|---|
本店 | 1店 | 7坪 | 2坪 | ー | ー |
支店 | 4店 | 3坪 | 1坪 | ー | ー |
- 秋田市本店の他に、大曲店・横手店・北上店・盛岡南店の4店を展開している。自販機やショーケースの営業は行っていない。
(2)牛乳関連営業用車両台数
保冷車 | 冷蔵車 | 軽トラック | 軽ワンボックス | その他 | 持込車 |
---|---|---|---|---|---|
ー | ー | ー | 24台 | 5台 | 11台 |
- 軽自動車のワンボックスカーを社用車として配達等に使用している。配達には一部パート及び従業員の持込車輌を使用している。
(3)牛乳関連従業者数
経営者 | 家族従業員 | 専従従業員 | パート アルバイト |
合計 | |
---|---|---|---|---|---|
男性 | 1人 | ー | 17人 | 18人 | 36人 |
女性 | 1人 | ー | 3人 | 24人 | 28人 |
合計 | 2人 | ー | 20人 | 42人 | 64人 |
- 本店では管理業務を一括して行っているので36人、大曲店・横手店・北上店はそれぞれ8人、新しい盛岡南店は4人の体制で営業を行っている。
(4)経営状況
商品分類 | 前年比 | 構成比 | |
---|---|---|---|
牛乳関連 | 普通牛乳 | 105.1 | 88.7 |
加工乳 | |||
LL牛乳 | |||
乳飲料 | |||
ヨーグルト | |||
その他宅配商品 | 0 | 0 | |
牛乳関連合計 | 105.1 | 88.7 | |
宅配卸以外の売上計 | 111.6 | 11.3 | |
合計 | 105.8 | 100.0 |
業態 | 前年比 | 構成比 |
---|---|---|
宅配 | 105.1 | 88.7 |
卸(小売) | 0 | 0 |
自販機 | 0 | 0 |
集団 | 0 | 0 |
その他 | 111.6 | 11.3 |
合計 | 104.6 | 100.0 |
- 牛乳以外の売上は水のデリバリーであり、1割程度の取扱いである。宅配には事業所や高齢者世帯等に牛乳乳製品を販売に行く出張販売も含まれている。
商品分類 | 前年比 | 構成比 | |
---|---|---|---|
牛乳関連 | 普通牛乳 | 120.9 | 100.0 |
加工乳 | |||
LL牛乳 | |||
乳飲料 | |||
ヨーグルト | |||
その他宅配商品 | 0 | 0 | |
牛乳関連合計 | 120.9 | 100.0 | |
粗利益率 | 48.2 | ー |
- 牛乳関連だけであるが、粗利益率は50%を割っている。出張販売では値下げして販売することもあるため、その影響が出ている。
配達 時間帯 |
コース数 | 集金方法(軒) | 日均 本数 |
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
毎日 | 週3 | 週2 | 週1 | 他 | 訪問 | 振込 | 引落 | 袋 | 他 | 合計 | ||
早朝 | 17 | 1 | 680 | 1155 | 1835 | 4762本 | ||||||
午前 | 27 | 16 | 762 | 3479 | 4241 | |||||||
午後 | ||||||||||||
夜間 | ||||||||||||
その他 | ||||||||||||
合計 | 44 | 17 | 1442 | 4634 | 6076 |
- 横手店を除き全店舗で週1のコースを作っている。最も新しい盛岡南店では4つのコース全てが週1である。週2から週1への転換を進めている。集金では袋が三分の二を占めているが、引落への移行を進めている。
(5)立地環境
- 人口減少の秋田県
本店と支店がある秋田県は全国でも1・2位を争う人口減少県である。本店は秋田市の住宅地にあり、安定した需要が暫く確保できるが、大曲と横手では減少を食い止めるのが精一杯な状況である。 - 産業の発展が期待できる岩手県南部。
企業としての発展をめざして出店したのが岩手県北上市である。工業団地が有り自動車関連や半導体関連の工場が進出している。盛岡は岩手県の中央機能が集まっている。
経営方針
経営理念
「食を通じて たくさんの ありがとうを 創造し 健康で 笑顔あふれる 社会づくりに 貢献します」
社名の由来「情報社会の中で便利で創造的な商品を開拓する会社を目指す。」
- Convenience(便利な)
- Creative(創造的)
- Cultivate(開拓する・耕す)
- Information(情報)
3つのCの頭文字とIでサンシーアイと名付けた。
活動内容
1.正社員による週1回の配送に切替え中
①正社員を採用して人材補充
人口減少が止まらない岩手県と秋田県ではパートやアルバイトが集まらない。そこで、週休二日制や就業規則整備等、労働環境を充実させ、ハローワークで正社員を確保した。応募者はホームページで確認してから応募するので、当社ホームページも採用のためにリニューアルした。
②配送を週1回に変更
配達を正社員に任せるためには、従来の週2回配送では採算が合わない。生協の個人宅配では既に一般的になっている週1回の配送に順次変更している。牛乳乳製品の賞味期間は1週間を超えており、お客様も週1回の配送にそれほど抵抗がなく、変更は比較的円滑に行われている。
③正社員を有効活用して生産性向上
アルバイトやパートは家庭や学校の都合で急に休むことが多い。このような急な配達に対応できるのが正社員である。常勤であることがメリットとなる。会社に対する帰属意識も強く、新人へのフォロー体制が強化できた。自分の将来にも繋がるため、常に新しいことにチャレンジする体質が強化された。
④社有車は車輌管理システムで運行管理
正社員を採用することによって、持込車輌から社有車への切替えが進んでいる。社有車であるから車輌管理ソフトを導入して、運行管理が可能となった。運行状況が記録され、事故防止等に役に立っている。
2.店舗間を1時間以内で移動できる場所に支店を開設
①人口減少の秋田から可能性の高い岩手に進出
- 2009年2月
- 牛乳宅配専門店 大曲店開店
- 2009年9月
- 牛乳宅配専門店 横手店開店
- 2009年9月
- クリクラこまち事業部を開設
- 2011年3月
- 東日本大震災発生
- 2012年5月
- 牛乳宅配専門店 北上店開店
- 2016年10月
- 有限会社サンシーアイから株式会社サンシーアイへ改組
- 2016年11月
- 本店移転
- 2019年4月
- 牛乳宅配専門店 盛岡南店開店
人口減少している秋田県から産業や社会が発展している岩手県に進出した。秋田本店と岩手県北上店とは大きく離れているが、隣り合う店はどこも車を使えば1時間で移動ができる。不便を感じない距離感である。
②店舗間で補完し合う体制を確立
お店では時々冷蔵庫の故障や欠品等が発生し、商品が足りなくなる。このような場合は隣り合う店舗で助け合うことができる。イベント開催時には人手も不足する。店舗間で人手を融通して互いにカバーしている。イベント営業で獲得するお客様は支店の管轄を越える地域に住んでいることも多い。そのお客様さまを、本来管轄している店舗に任せることができる。このため、効率的な成約を実現している。
全店をクラウドネットワーク(VPN)で接続
全店はインターネット上のクラウドネットワーク(VPN)で繋がっている。本店にはサーバーマシンが設置されており、全店で宅配管理システムを共有、共有フォルダを使ったリアルタイムで情報共有も行っている。4つの支店は距離的には離れている。しかし、管理上は距離を感じない。
3.月1回の店長会議で予算実績管理を実践
①店長会議でMAS監査を実践
毎月1回本店に4人の店長が集まり店長会議を実施する。午前中は報告確認事項等の打合せを行い、午後は単年度経営計画の達成状況を確認し、翌月の活動計画を策定する。マネジメントサイクルを実践する「MAS監査」を取り入れている。
②全営業マンで勉強会
全営業マンを対象とする勉強会も必要に応じて開催する。ここではロールプレイングや営業トーク等、今後必要となる営業技術や商品知識を学んでいる。
4.骨ウェーブによる積極的イベント営業
①イベント営業で効率良く新規顧客を獲得
これまでは訪問営業とテレアポも実施してきたが、規制が厳しくなりまた経費も掛かることから、現在はイベント営業が中心になっている。支店それぞれで骨強度(骨ウェーブ)測定器を保有し、お店毎に毎月10~15箇所で測定及び試飲会を実施している。骨密度に興味を示すのは女性に多い。男性客に興味を持ってもらうために、全店共通で血管年齢測定器を1台保有している。
②いろいろな集客施設でイベント営業
開催場所は量販店(マックスバリュー、Aコープ、薬王堂等)での開催が過半数である。郵便局や道の駅等の集客施設でも開催する。変わったところでは、農業者が集まる種苗交換会や農機展示会、ガス業者が主催するガス展示会にも参加している。各会場では定期的に測定及び試飲会を開催し、定期的に骨強度を測定することの大切さを来場者に伝えている。
5.デスク配で職場と個人宅に乳製品・ドリンク・パン等をお届け
①新しい営業スタイルである出張販売を導入
デスク配を更に進化させ、役所等の事業所や高齢で買物に行けないお客様、そして車を運転できないお客様のお宅に飲料やパンと牛乳・乳製品を出張販売(現金販売)する営業スタイルである。デスク配のように決まった商品を定期的にお届けするのではなく、飲料・パン・牛乳等を配達用の車輌に積み込み、職場や家庭で販売する。牛乳乳製品を中心とする引き売りである。ヨーグルト等の乳製品をセットにしたお徳用商品も販売しており、喜ばれている。
②5人の専任パートが週1回事業所や家庭を訪問
5人のパートが専任で担当しており、1人1日20件程度を訪問する。事業所や家庭毎に訪問する曜日と時間を決め、週一回の周期で訪問する。FAXで注文を受けた商品も届けている。1人平均して1日2万2千円程度の売上を上げている。
6.宅配顧客の満足度を維持向上させる販売促進
①オリジナル情報誌「サンシーアイ通信」を毎月発行
毎月サンシーアイ通信をフルカラーで印刷発行している。その月の重要なお知らせ、お得な商品情報、骨強度測定会のブースのお知らせ、新商品情報などが掲載されている。宅配のお客様専用の特売商品も掲載しており、誌面裏側に申込用紙を印刷している。
②年1回「お客様アンケート」実施
毎年1回の「お客様アンケート」を実施して宅配事業の状況を確認し、お客様の不安・不満の解消に努めている。回答者には雪とうふ等の粗品をプレゼントする。調査項目は宅配利用理由/現状満足度/保冷箱の状態/スタッフの対応/集金方法/変更やお休み/当社への意見などである。
③オリジナル宝くじやお年玉抽選券で既存のお客様に続ける楽しさ
宅配を継続しているお客様全員に8月は「ドリーム宝くじ」、年末には「お年玉抽選券」を配布する。当選者には当選通知と当選賞品の申込用紙を配布する。
④ミニクーポン券を利用して長期ご愛飲お客様限定クーポン発行
宅配のお客様には毎年4回お得なミニクーポン券を発行している。独自に作成した「長期ご愛飲のお客様限定クーポン券」を配付し、長期契約のお客様にはヨーグルトやLL豆腐の無料券を進呈している。
⑤新規顧客には電話フォロー
新規顧客の落本率を減らすことが最大の課題である。契約時の担当営業マンが自ら、配達が始まった2週間後に電話でフォローする。その後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月毎にスタッフが電話フォローを行う。
⑥新規顧客を飽きさせない「無料お試しチケット」
新規のお客様には、最低12ヶ月継続していただくために、新規契約から12ヶ月有効な「無料お試しチケット」を進呈している。隔月で使用できる宅配商品の無料お試し券が6枚セットされている。
7.全店で週1回「10分間清掃」
①掃除の時間は「10分」に限定
時間は10分に限定し、毎週1回集中して掃除を行っている。一気に掃除を行うので掃除に飽きることがない。
②普段掃除しない場所を特定して全員で掃除
10分に限定するため、全体を掃除することはできない。10分でできる普段掃除していない場所を特定して、社長も含め社員全員で清掃する。会社周辺の雑草取りや清掃も行なうことがあり、地域社会との良好な関係も築いている。
③衛生意識と連帯感が高まる
従業員の衛生面での意識が向上し、従業員同志の連帯感が高まっている。
8.本支店全てリアルタイムで情報交換ができるネットワークシステムを構築
①インターネットを利用する社内ネットワーク構築
システムベンダーが提供している仮想専用回線(VPN)を使って、社内WAN(広域ネットワーク)を構築している。本社にサーバーを置き、ファイルの一元管理・システムのメンテナンス等を行っている。本支店それぞれにはライブカメラも設置されており、テレビ電話やテレビ会議もできるシステムである。ファイル及びシステムの管理は常務である社長夫人が担当している。全社で共通して使用する販売データの加工や分析シート等の作成も常務が担当している。
②販売データを全店で共有
宅配管理ソフトは支店それぞれのパソコンで処理している。月次集計された販売データを取り出して本店サーバーでまとめ・加工すると、全社比較ができる販売データができあがる。サーバー上に蓄積されている販売データは全店で共有し、活用することができる。
③日報シートを共有して社内コミュニケーション
隣り合う支店同士は車で1時間程度なので互いに補完し合っている。しかし、スタッフ全員が顔を合わせるチャンスはほとんどない。そこで、開発したのが「コミュニケーションシート」と呼ばれる日報である。表形式の日報であり、記入も確認も手間をかけずにできるように工夫されている。スタッフ1人1人の日報であるが、サーバーに保管されており全社で共有しており、社内のコミュニケーションに利用されている。
経営専門家の意見
秋田から牛乳宅配の市場を求めて岩手県にまで商圏を広げている。
その原動力となっているのが正社員である。本支店が離れていても、営業・配達・管理等、全ての支店運営を完全に任せることができる。
正社員も含めスタッフの連携を可能にしているのが、全ての営業データと情報を一元管理している社内ネットワークシステムである。
しっかりした管理システムを基礎にしてなり立っているのが、落本防止を目的とする宅配及び販促活動である。イベントを中心とする新規開拓、新規顧客への手厚いフォロー、既存顧客を楽しませる情報誌やクーポン券等のお客様サービス等、お客様全てを大切にするサービスが行き渡っている。
そして、お客様満足の源泉は正社員を中心とする全スタッフの一体感と前向きな活力である。宅配機能を継続させながら、常に新しい挑戦を行い、新たな宅配機能を生み出し続けている該店の経営は高く評価できる。