牛乳販売店優良事例発表会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞手間暇かける訪問集金で
お客様からの信頼を維持


森永群馬乳製品販売株式会社
渋川ミルクセンター

代表者中島 保廣
発表者小林 三郎(写真)

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

1957年9月、「上信産業(株)」(現:(株)上信)が乳業部を設立し、前橋市立川町にて営業開始した。1979年、「上信産業(株)」は乳製品部門を分離し、前橋市上新田町で「森永群馬乳製品販売(株)」を設立した。1989年、前橋市五代町に本社移転。1991年、前橋市大利根町に営業所を移転。そして、1997年(平成9年)6月、渋川市半田に当渋川ミルクセンターを開設した。その後、1998年、高崎市江木町に高崎ミルクセンターを設置。2001年、前橋市大渡町に新社屋建設し、本社・宅配部門を移転した。

渋川ミルクセンターは個人の廃業店を引き継いでの開設であり、当時は80軒の宅配軒数であった。渋川には同マークの販売店が1店しかなかったため業績は拡大し、最大で1580軒を獲得することに成功した。その後、他メーカーとの競合が激しくなり、人手不足も重なって、現在は1105軒で落ち着いている。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
渋川
ミルクセンター
1店 2坪 1坪
  • 会社としては 当該店の他に支店として高崎ミルクセンター(高崎市)を開設している。グループ販売店として、前橋北ミルクセンター(前橋市)、高崎長谷部販売店(高崎市)、大胡販売店(前橋市)、安中事業所(安中市)が営業を行っている。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
1台 11台
  • 支店長が会社の軽トラックを使用しているが、その他の営業及び配達車輌は持込である。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 9人 11人
女性 2人 2人
合計 1人 1人 11人 13人
  • 経営者は代表取締役、専従従業員は支店長である。女性2人は集金を担当している。

(4)経営状況

①平成29年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 97.0 99.0
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 88.9 1.0
牛乳関連合計 96.9 100.0
宅配卸以外の売上計 0.0 0.0
合計 96.9 100.0
②平成29年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 97.0 100.0
卸(小売) 0 0
自販機 0 0
集団 0 0
その他 0 0
合計 97.0 100.0
  • 渋川ミルクセンターだけの数字である。営業スタッフが不足しており、成長が一時的にストップしている。
③平成29年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 98.8 99.5
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 92.3 0.5
牛乳関連合計 98.8 100.0
粗利益率 48.7
  • 渋川ミルクセンターだけの数字である。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     11     868   147 90   1105 970本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     11     868   147 90   1105
  • 週2の早朝配達のみ。訪問集金を原則としているが、引落は増加している。袋集金が未だ残っている。

(5)立地環境

  1. JR上越線八木原駅から徒歩15分。店舗の周辺は畑が多い農村地帯である。渋川市内と伊香保を配達エリアとしており、配達エリアには個人住宅も存在するが人口が減少している地域である。
  2. 商圏人口は7万8千人、2万9千3百世帯。世帯カバー率は3.8%であるが、競合店が4店舗あり、その1つは大型店であり、厳しい競合が続いている。

経営方針

私たちは、約束を守り、安心・安全・満足を提供する企業を目指します。

コンセプト

私たちはお客様に必要とされる企業であり続けたいと常に考え、顧客満足度アップを目指し日々事業に取り組んでおります。また地域に根ざした企業文化をチルド物流を通して考えながら進んでまいります。

活動内容

1.時間をかけて訪問集金を行いお客様の信頼を獲得

訪問集金は手間と時間が掛かる集金方法であるが、該店は敢えて手間暇かけて継続させている。

①支店長と女性スタッフが手分けして毎月900軒を集金

  • 支店長と女性スタッフが集金を担当しているが、支店長が400軒、女性がそれぞれ200軒と300軒を集金している。
  • 渋川市生活支援センターの見守り隊にも参加しており、集金は大切なお客様を見守る業務と考えている。

②毎月同じ日にちと時間帯にお客様を訪問

  • 毎月同じ日にちで同じ時間帯に訪問することを心掛けている。訪問することを心待ちにしているお客様は多い。
  • お客様の都合に合わせると集金が土曜日と日曜日に集中してしまう。それでも朝8時頃から集金を行っている。そして、お客様周辺の休止客へ挨拶するようにしている。

③落本率は2~3%

  • 現在配達している商品がお客様に合っているのか、飲み始めてからの体調はどうか、ご家族の中で牛乳乳製品に関心を持っている方がいないか、等を会話の中で確認している。1人暮らしの高齢者には特に気遣いをしており、危険動作等への注意等を促している。
  • 訪問集金によってお客様から信頼を得ることができており、落本率は2~3%に留まっている。

2.請求書を利用してのポイントサービス

集金だけでなくお客様には買う楽しさも提供している。それがポイントサービスである。

①月次の請求金額に応じてポイントを進呈

ポイントサービス
  • 宅配管理ソフトが装備している機能の1つであるポイントサービスを使い、千円未満は0.5P、千~2千円は1P,2千~3千円は2P,3千円以上には3Pを進呈している。
  • ポイントサービスを理解していただくために説明用のチラシを作成し、どこにポイントが表示されているかを図解している。

②交換商品リストを作成し、3年毎に更新

交換商品一覧表
  • 説明チラシの裏側に交換商品を一覧表で示している。10Pから交換でき、ほぼ10P単位で交換商品のランクを上げている。
  • 交換商品はほぼ3年毎の更新としており、お客様に安心感を与えながら、飽きさせない工夫を行っている。

③10年前からオリジナル牛乳券発行

  • 10年前から当社独自の牛乳ギフト券を発行している。近隣へのチョットしたお返しに利用してもらう為のギフト券である。額面は千円。
  • このギフト券をポイントの交換商品としても提供している。60Pで3千円分、100Pで5千円分と交換している。このギフト券は乳代の支払にも利用することができるため、お客様に取ってメリットは大きい。

3.郵便局や量販店、老人ホームでの試飲会営業

新規開拓の中心は試飲会を中心とするイベント営業である。毎月2回程度の開催であるが、確実な受注に貢献している。

①郵便局と量販店では試飲会

  • 郵便局は渋川と伊香保、量販店3店舗とホームセンター3店舗、そして老人ホームでイベント営業を行っている。
  • 郵便局と量販店及びホームセンターでは多数のお客様が往来するため試飲会が中心となる。
  • 郵便局は10~16時で使用料が8千円程度。1日に試飲客は40人ほどである。イベント専任のスタッフ2~3名で営業を行っている。
  • 量販店及びホームセンターでは9~17時に開催し、使用料は1万5千円程度。1日に80人から100人が試飲を行う。ここでの営業は専門会社に外注している。

②老人ホームでは骨密度測定

健康セミナー案内
  • 老人ホームでは「健康セミナー」を企画し、骨の健康三要素勉強会を開催した後に試飲会を行っている。セミナーの一環として、骨密度測定を行ったり、健康に関するビデオも放映したりする。ご家族にも参加してもらい、健康への理解を深めてもらう。
  • イベント専任のスタッフが2名から3名で対応している。

③1日で2~15軒を新規受注

  • イベントを開催すると1日少なくとも2軒の新規受注を得ることができる。多いときは15軒にも達する。月次では平均30軒ほどの新規受注に繋がっている。
  • イベントでの受注は落本率が比較的高く10%程度に達することある。

4.配達員と個別にミーティングして衛生面等の気配りを教育

早朝配達のため、配達スタッフが集まってミーティングを行うチャンスがない。このため、配達スタッフが戻ってきたところを確認して、支店長が個別に情報交換を行っている。

①衛生面の配慮と気配りへの注意

  • 牛乳配達には今後今まで以上に衛生管理が求められることになる。配達スタッフにはお客様との接点となる受け箱の重要性と交換のタイミングを細かく説明している。
  • 早朝配達の効率性を維持するため受け箱の清掃を配達時には行わない。汚れた受け箱はルールに従って、配達スタッフが汚れたら交換を行う。

②全コースの中止客を確認して対策を検討

  • 集金スタッフは昼間の活動であるが、戻ってくる時間等が全員異なっている。このため、支店長が1人1人とヒアリングを行い、集金の状況やお客様の状況を確認している。
  • 集金スタッフに確認する重要事項は休止客である。全コースの休止客を確認し、毎月対策を個別に話し合っている。

③お客様から配達スタッフへの信頼度が向上

  • 配送や集金のスタッフから支店長が個別に情報を集めることによって、配達順の変更が発生した場合でも素早く対応ができている。これもお客様から信頼を得る要素の1つとなっている。
  • 配達スタッフの衛生意識は高まっており、受け箱を通じて信頼を得ている。急にスタッフが休んで配達時間が変則になることもあるが、事情を説明すればお客様は理解して下さりトラブルとなることはほとんどない。

経営専門家の意見

販社の支店であり、実績管理面は全て本社のシステムに沿っている。しかし、営業やお客様のフォローは支店が独自に工夫し、実行している。特に支店長が重視している訪問集金は時間が掛かり効率は悪い。それでも訪問集金にこだわっているのが該店最大の特徴でありノウハウである。無理な拡張営業は行わず、人が集まる郵便局や量販店で試飲会を開催して新規契約を獲得する。このお客様を継続させることが訪問集金の重要な役割となる。老人ホームではご家族の理解を得ることも大切なポイントになっている。健康セミナーや骨密度測定はご家族を納得させる重要な企画となっていることが確認できる。買物の楽しみとして、ポイントサービスを実施していることも評価したい。システムそのものはパッケージソフト機能の1つであるが、会社独自の牛乳ギフト券を利用して、付加価値の高い交換商品としている。ギフト券で乳代の支払ができることも魅力的である。支店という立場ではあるが、訪問集金にこだわることによってお客様との絆を深めている活動は評価できる。


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