牛乳販売店優良事例発表会

優秀賞

一般社団法人 Jミルク会長賞地域社会との交流を
最優先する手づくり経営


有限会社スノーミルク
代表者齋藤 正敏
発表者齋藤 正碁(写真)

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

平成12年3月
代表者正敏氏がマーク系列企業を退職して独立開業。札幌市中央区で閉鎖を検討していた販売店を引き継いでの創業だった。
平成13年7月
発表者正碁氏が食肉卸売業の前職を退社し事業活動に参加
平成28年7月
札幌市北区の近隣販売店を引き継ぐ(約100軒)
平成29年3月
拡張スタッフ3名を採用
平成29年11月
札幌市中央区の近隣販売店を引き継ぐ(約60軒)
平成30年8月
札幌市手稲区及び小樽市の販売店を引き継ぐ(約500軒)
平成31年 3月
正碁氏が社長に就任する予定

本店事務所は母親の住居の2階に開設していたが、取引量が増えるとともに不便さを感じるようになったので、効率的営業を目指して、平成23年に代表者正敏氏が開設した手づくり「プレハブ事務所」に移転した。事務所前面は大通りに面し、また裏側に広い駐車場を備えており、小売店を併設しても良さそうな好立地である。

事務所全景
事務所正面
事務所裏側と駐車場

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 2坪 1坪 2台
  • 平成30年に引き継いだ小樽市の販売店は専属1名、昼配で対処している。

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
4台 20台
  • 冬季は凍結防止のため蓄冷剤を常温に戻して使用しているので、約半年間使用されない保冷車、冷蔵車は非効率のため保有していない。

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 1人 1人 6人 9人
女性 1人 18人 19人
合計 1人 2人 1人 24人 28人

(4)経営状況

①平成29年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 105.6 96.6
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 98.4 3.4
牛乳関連合計 105.3 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 105.3 100.0
②平成29年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 103.9 97.4
卸(小売) 0 1.5
自販機 87.5 1.0
集団 0 0
その他 0 0
合計 105.3 100.0


③平成29年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 109.9 96.8
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 91.4 3.2
牛乳関連合計 109.2 100.0
粗利益率 42.3


④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     13 4   200     2200   2400 1,471本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     13 4   200     2200   2400
  • 現在の集金は袋が主であるが、今後他の方法を増やしていく方針である。できるだけコミュニケーションに役立つ訪問集金を増やしたいが、お客様の都合もあり、振込み、引き落としも増えていきそうである。

(5)立地環境

  1. 札幌市西区(人口212千人、世帯数100千世帯)の札幌市営地下鉄東西線琴似駅を出て徒歩1分の所に本店あり。店前の1日の通行量が推定約1万人超という繁華な場所に立地している。

経営方針

  1. 一生涯を貫く仕事を持つことです。(楽しく社会に貢献できる牛乳販売店)
  2. 人間として相手の気持ちを大切にすることです。
  3. 一番さみしいことは仕事がないことです。
    (汗をながし、牛乳販売店業務に感謝する)
  4. 人の為に奉仕して、決して恩をきせないことです。
    (うそをつかない、すべてのものに愛情を持って、毎日、毎日こつこつと販売業務をすることです。)
  5. 誇りを持って毎日感謝する牛乳販売店にする様、経営者を含めたスタッフ全員が各自目標を持ち生活する。

活動内容

1.通行人の心も癒す店舗周辺の美化活動

①地域の生活環境整備に積極的に取り組む

事業の内容

店舗周辺の住民が気持ちよく安全に生活できるように、地域の清掃や美化を率先して行っている。

  • 会社敷地内道路側に花壇を作成しており、通行人の目を楽しませている。
  • 会社周辺道路の雑草刈りを春・夏・秋の3回実施している。
  • 会社前の道路、脇道を冬季ボランティアで除雪作業を実施している。(幅5m、長さ30m)
事業の成果

周辺住民だけではなく、大勢の通行人からも感謝されている。

  • 花壇に花が咲く時期は通行人から「きれいだね」と嬉しい言葉をかけられる。
  • 店舗周辺には雑草がほとんどなく清潔感が保たれている。
  • 冬季は店舗前の道路が約30mにわたって除雪されているので、通行人は安全に通行でき安心感が広がっている。
  • 店舗は目立たない構造だが、該店の「地域と共に生きたい」という思いが周辺住民に伝わり、信頼感が増すと共に知名度も高まっている。

2.コミュニケーションと拡販に効果大のイベント「骨密度測定会」の実施

①地元郵便局での骨密度測定会実施

事業の内容

骨密度測定器『骨ウエーブ』を利用して、地元郵便局を中心に月15回程度イベントを実施している。今年3月から延べ120回、約3,600名測定した。

事業の成果

イベント実施により約400軒の新規顧客獲得に成功した。
またイベントの告知は、宅配顧客へ定期的に告知することで、新規客だけでなく、既存客からも注目されている。

②地元の各種施設でも開始

事業の内容

これまでの郵便局だけでなく、地元のコミュニティセンター、スーパーマーケット、老健施設でもイベントを実施している。また、今年は、「チ・カ・ホ」札幌駅前通地下歩行空間(歩行者専用道路)や小樽市の南樽市場でも実施した。

事業の成果

少人数、小規模イベントならではの「フットワークの軽さ」で、いつでもどこでも開催できる。3か月~半年スパンでイベントを実施、定期的に「骨密度測定」することで、地域のお客様に「健康成果」を実感してもらうことを考えている。

郵便局での測定会
チ・カ・ホでのイベント風景

3.家庭菜園で採れた有機栽培野菜を年1回無料提供

事業の内容

前職の仲間5人と石狩市の生ごみリサイクル工場内で有機栽培の家庭菜園を行っている。そこで収穫した野菜を無償でお客様に提供している。

  • 週7本以上取引のあるお客様に限定
  • ビニール袋に小分けして代表者が直接訪問してお届け
  • トマト・ナス・キュウリ・カボチャ・スイカ・ピーマン・枝豆・ブドウ・イモ類などの中から4種類程度
  • 家庭菜園に興味があるお客様にはバークや有機肥料を無償で提供
  • 野菜の収穫が多い8月~10月に実施
  • 畑は琴似本店の裏側にもある
  • ブドウは自宅で栽培
事業の成果

落本防止に大いに貢献していると同時に、お客様との交流が深まっている

  • お客様から直筆のお礼状が多数届く
  • 新しいお客様を紹介してくださる方もいる
  • 代表者の生きがいにもなっている
家庭菜園
冬囲いの例

4.高齢者世帯への生活支援

①チラシ配付時に「安否確認」を実施している

事業の内容

配達が早朝のみのため、配達時のコミュニケーションがとれないので、メーカーキャンペーンや新製品情報などのチラシを配付するときに直接手渡しを心がけ、商品説明をすると同時に世間話などをしながら「安否確認」を実施している。

事業の成果

直接、お客様と触れ合うことで、高齢者の健康状態もほぼ予想がつくので、その後の対処にも役立っている。今後は、コミュニケーションの機会を増やすため、訪問集金の拡大にも力を入れていくことにしている。

②取り忘れ防止対策の実施

事業の内容

早朝配達で、しかも週1回のコースもあるため、取り忘れ防止対策には特に気をつけている。

  • 郵便ポストに「お届けいたしました」メモを入れて注意喚起している。
  • 特に取り忘れの多い高齢者には、「取り忘れコール」を行っている。
  • それでも取り忘れが発生したときは、「前回商品は回収しました」メモを受け箱に入れると同時に、新しい商品を届けている。
事業の成果

新鮮な牛乳を飲んでいただくための細かい配慮が、取り忘れ防止対策に効果を顕しており、品質に対するトラブルは発生していない。

③高齢者世帯への冬季サービスの実施

事業の内容
③-1高齢者世帯への冬囲いサービス

冬の雪の多い北海道では、庭の植木の保護が大切であるが、身体が不自由な方や健全であっても丈の高い植木は手に負えないという高齢者から、冬囲いをしてもらえないだろうかとの依頼がくる。簡単でよければという条件付きで、できるだけ希望に添えるように実施している。

③-2 1人暮らしの高齢者宅の除雪を実施

店舗及び自宅の近くで生活している一人暮らしの高齢者に、雪が積もったら毎回無償で雪かきを行っている

事業の成果

お客様からは大変感謝されており、お客様とのコミュニケーション維持と落本防止に大いに効果が上がっている。

④老健施設への情報提供

事業の内容

専任スタッフが定期的に訪問し、骨密度測定イベントや機能性商品のメリットなどを提案している。老健施設のスタッフからは、特に、ガセリ菌の「免疫力」についての問い合わせが多く、販売につながることが多くなっている。

事業の成果

冬の寒さが厳しい北海道では、ガセリ菌の「免疫力」機能について、入居者の免疫力低下による院内感染防止策としてメリットがあると喜ばれている。また、「骨密度測定イベント」は、入居者のお楽しみとして人気がある。さらに、本年10月に「小樽支店を開設したが、小樽市は札幌市よりも高齢化が進んでいるので、住民の健康維持のためイベントを実施して、早期に地域社会に溶け込むよう、より積極的に提案していくことを考えている。

5.地域社会とのコミュニケーション

①地域社会イベントに積極参加

事業の内容

琴似地区は「屯田の町」として昔から住民の結束が強い土地柄である。そういう基盤を考慮したうえで、町会が開催するイベントには積極的に参加しており、併せて協賛品を無償提供している。

  • 店舗がある琴似地区の町会主催バーベキュー(ジンギスカン)
  • 自宅がある石狩市の町会主催バーベキュー(夏祭り)
  • 代表者は開業以来焼き鳥を担当
  • チコパック牛乳を協賛提供
事業の成果

地域住民や自治会との交流が深まることによって、店の信用が確実に向上している。

  • 正碁氏が開拓を担当しているが毎年2桁で成長しており、拡販軒数が120軒に達した。
  • 地域住民から感謝されており、牛乳販売店の社会的地位が向上している。

②交通安全パトロール実施

事業の内容

店舗周辺は交通量が非常に多く、道路横断に危険が伴うので、通学時の学童が安全に横断歩道を通行できるよう、毎日16時~17時頃に従業員1~2名で安全旗を使って、安全活動を実施している。

事業の成果

お店の青いユニフォームを着て実施しているので、該店の従業員というのがわかり地域住民、特に子供が通学している家庭から感謝の言葉が寄せられている。

6.メーカーキャンペーン活用で情報提供に効果大

事業の内容
  • メーカーキャンペーン「ガセリ12週間キャンペーン」を積極活用(年2回実施)している
  • メーカーの協力により、チラシ新聞折り込みを実施したことで、販売店のPRもできた。
事業の成果
  • 拡張スタッフの新規獲得活動を新聞折り込みと連動させることで効率的な活動が展開できた。
  • 既存客向けには「サンプル」提供して、落本防止策として活用している。

7.商品の品質管理について

①受け箱の清掃と温度管理の徹底

事業の内容

該店は朝配100%なので,お客様との接点は受け箱であると認識しており、「受け箱は命」と位置付けている。

  • 風、日光、雪を配慮して受け箱を設置している
  • 冬の商品凍結防止策として蓄冷剤を常温にして入れている
    蓄冷剤は年間2~3個入れる。特にマンションでは3個にしている。冬は凍結防止のため常温にして受け箱に入れている。
  • 3か月に1回の受け箱交換
    受け箱に汚れを発見したときは、次回配達時に清掃または交換を行う。3か月に1回程度の交換となるが、交換したお客様の住所氏名の確認を徹底している。汚れた受け箱と蓄冷剤の洗浄は自宅で行っている。
事業の成果

受け箱の汚れに対する苦情はほとんどない。配送スタッフの安全衛生に対する関心が高まっている。

8.後継者及び幹部候補生の教育

事業の内容
①後継者正碁氏の業務引継ぎ

後継者の正碁氏は平成26年以降、道内外の複数の販売店を視察し、様々な経営者と触れ合い独自に経営スタイルを勉強してきた。また、今年度からメーカー協議会「青年部北海道代表」に就任した。今後は「発信する側」としても活躍することになる。

②幹部候補生の教育

次代の幹部候補としての社員を、新規拡張ノウハウや会議スタイルを吸収すべく優良店視察を実施した。さらに今後も随時教育を実施していく予定。

事業の成果
  1. 平成31年3月に正敏から代表者を引き継ぐことが決まっている。優良店視察等で独自の経営哲学を持つことができたので、自信をもって会社経営に専念していく意気込みである。
  2. 優良店視察やその他の教育で幹部としての意識改革に成功した。会議や日常業務に主体的に取り組んでいる。また、パート従業員との橋渡し役として会社組織に厚みが出てきた。

9.従業員採用及び教育

事業の内容
①「社員規程」の整備

社員向けとパートスタッフ向けにそれぞれ「労働契約書」を作成し、役割と報酬を明確にした。

②事務員の採用

事務を担当していた長女が銀行に就職した後は、家族の中で業務を行っていたが、小樽市進出をきっかけに、初めて家族以外の事務員採用に踏み切った。

③定期的なミーティングと会議の実施

日常実施しているミーティングに加えて、月1回「定期会議」を開催し、従業員の実績進捗状況と今後の目標設定、及びスキル向上を目的に実施している。

事業の成果
  1. 新規採用時には明文化された「労働契約書」を基に話し合いをすることにより、「(限られた条件下でも)お互いに協力していこう!」という姿勢で臨んでいる。お互いに充分に納得した上でスタートすることにより、やる気を持って業務に取り組んでもらっている。
  2. これまでの家族間でのなれ合いという部分がなくなり、きっちりした経理ができるようになった。
  3. 現状の問題点や今後の目標設定など、幹部候補生の会議進行のもと、順調に実施されている。

10.経営管理の効率化

事業の内容

事務員として採用したスタッフが前職はパソコン教室の先生だったことから、旧態依然としていた事務作業をITで効率化した。

事業の成果

今までは、手作業で行っていた業務がIT化されたことにより、格段の効率化につながっている。

経営専門家の意見

代表者正敏氏が、閉鎖検討中の販売店を引き継いで創業してから18年、ゼロに近かった宅配客を2,400軒にまで増やすことができたことに敬服する。マーク系列企業で勤務し、所長まで経験していたとは言え、実際は一介のサラリーマンであり宅配に関するスキルには乏しかったものと推察できる。その中で、他店との差別化を図るために、地域密着を掲げて事業を推進してきたことが、宅配客2,400軒という現状につながっているのである。地域密着の意思は経営方針にも「楽しく社会に貢献できる牛乳販売店」を目指すと示されている。

その表れが、①店舗周辺の美化活動であり、②家庭菜園で採れた有機栽培野菜の提供であり、③「骨密度測定会」の実施であり、④地域社会イベントへの積極参加である。その姿勢は一貫しており、地域住民に溶け込み、感謝しながら成長していこうという心構えが、素直に受け入れられたものである。

拡販については、4つの柱がある。①後継者正碁氏の訪問拡張…事業に参加以来、拡販に重点をおいており、単独で1,200軒獲得した。②「骨密度測定会」の実施で順調に拡販できている。③拡張スタッフによる拡販…男1名、女3名で拡販中。④閉鎖店の引継ぎ。である。4本柱という強固な地盤が築かれているのは心強い。特に閉鎖店の引継ぎはメーカーの信頼が厚いことを示しており、今後の高齢社会を鑑みれば、ますます閉鎖店引継ぎが増えていくものと思われ、メーカーにとっても貴重な存在であることが想像できる。

来年3月には後継者正碁氏が晴れて代表者に就任する予定であるが、平成26年以降の後継者教育の実施と過去の拡販1,200軒という実績があり、益々、発展していくことが予想される。そして、正碁氏を補佐する立場の幹部候補生の教育も進んでいる。またIT化で事務を効率化した事務スタッフも共に経営活動することなどが更なる安心感を漂わせている。


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