牛乳販売店優良事例発表会

最優秀賞

農林水産大臣賞お客様と従業員への啓発により
共に成長


株式会社すまいるステーション
代表者佐藤 亮

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

本店外観
  1. 平成23年3月11日(東日本大震災)、親戚が経営する牛乳販売店を辞め、山形県飽海郡遊佐町に販売店を開業。佐藤氏一人、ゼロからのスタートであった。
  2. 平成25年12月、開業から2年8ヶ月で宅配軒数1,000軒を突破。それに伴い、経営基盤の安定化を図ることを目的に法人化を行い、「株式会社すまいるステーション」を設立した。
  3. 平成27年4月、宅配軒数が1,500軒を突破し、更なる拡販を目指して鶴岡市まで宅配エリアを拡大した。また、更なる事業の拡大を視野に入れ、経営理念及び行動指針を策定した。
  4. 平成29年6月、山形県天童市の販売店から顧客を引き継ぎ、新たに天童支店を開設した。

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 2.5坪 1坪
支店 1店 1坪 0.3坪 1台

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
6台 3台 2台
  • 配達は、冷蔵車6台とライトバン2台を使用している。配達に関しては、今後すべて冷蔵車に切り替えていく予定である。
  • 上記以外のライトバン1台及びワンボックス2台は、営業用として使用している。
冷蔵車
冷蔵庫内

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 1人 2人 3人 6人
女性 2人 8人 10人
合計 1人 4人 11人 16人
  • 本店は営業3人・配達8人、支店は営業2人・配達3人の体制である。

(4)経営状況

①平成29年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 131.7 91.4
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 100.0 8.6
牛乳関連合計 128.2 100.0
宅配卸以外の売上計 0 0
合計 128.2 100.0
②平成29年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 128.2 100.0
卸(小売) 0 0
自販機 0 0
集団 0 0
その他 0 0
合計 128.2 100.0
  • 業態は宅配のみであり、それ以外の事業は一切行っていない。
  • 平成29年は、本店の売上アップに加えて天童店の開設もあり、牛乳製品の売上は大幅に増加した。
③平成29年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 129.7 89.5
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 127.0 10.5
牛乳関連合計 129.4 100.0
粗利益率 46.3
  • 売上の増加に伴い、粗利益も大幅に増加している。粗利益率も平成28年の45.9%から0.4ポイント向上している。
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     3     10   45 271   326 2072本
午前     18     190   193 1693   2076
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     21     200   238 1964   2402
  • 本店は早朝3コース、午前12コース、天童支店は6コースすべてが午前コースである。
  • 午前コースの配達員は、毎日8時20分の朝礼後に出発し、丸一日かけて配達する。早朝配達よりも昼配達のほうがスタッフの管理がしやすいため、昼配達を中心としたコースを設定している。
  • 集金は基本的に引き落としを推奨しているが、立地面等もあり、袋集金が圧倒的に多い。訪問集金は配達員が配達時に行っている。

(5)立地環境

  1. 本店は、山形県と秋田県の県境の遊佐町にある。商圏は2市(酒田市、鶴岡市)3町(遊佐町、庄内町、三川町)であり、商圏内の人口は284,845人、世帯数は98,399世帯である。競合は同マークが2店、他マークが10店存在する。
  2. 天童支店は、天童市、東根市、村山市の3市をカバーしている。天童市と東根市は、仙台まで1時間の好立地であるうえ、教育や子育て支援に力を入れていることから、数少ない人口増加地域である。そのために競争環境も激化しており、商圏内には同マーク1店、他マーク10店以上がひしめき合っている。商圏内の人口は175,902人、世帯数は58,309世帯である。

経営方針

経営理念
  1. すまいるステーションの会社名が示すように笑顔が集まる場所、スマイルを提供できるような会社になるため、自分自身、従業員、お客様すべてが明るく楽しくなるような会社を目指している。そのために自分自身が自立し、お互いが協力して、立派な仕事をし、どんな時にも笑顔になれるように仕事(宅配)を通して成長することを目指している。
  2. 上記の点を踏まえ、以下のような経営理念と行動指針を定めている。
    【経営理念】

    人は自らの思考力や行動力によって人生を変えることができる
    私達は笑顔の力で皆様の健康と幸せを創造し 共に成長する企業を目指します

    【行動指針】
    1.自助
    自己を助けるのは自己なり 自己こそ最上の助け主なり 独立自立の精神なり
    1.協力
    真の協力関係とは自立した人間同士の協力関係である
    1.情熱
    何事にも興味を持ち常に情熱をもって物事に向かう
    1.責任
    社会人として責任を果たし立派な行動をする
    1.笑顔
    どんなときも忘れずに苦しい時こそ満面の笑顔で
  3. 平成23年開業という後発の販売店であるため、「他店とどう差別化するか?」を常に意識しながら経営している。大企業がやっているような教育や組織づくりにも着手し、他の販売店の見本になることを目標としている。

活動内容

1.セミナー・講座等による啓発活動

①高齢者向けセミナーの開催

  • 地域のコミュニティセンターや自治会などで、高齢者を対象とした「骨と健康寿命セミナー」を開催している。講座の評判は上々で、紹介などにより他団体に広がっており、2018年は計12回の開催で、合計299名の参加者があった。
  • 講座では、スライドを使った講話を約40分行った後、骨密度や体年齢の測定をし、その後で宅配商品の試飲を実施している。セミナー1回で参加者の1~2割が宅配契約につながるケースもあり、顧客獲得にも大いにつながっている。

②児童向け出前授業の実施

  • 地元の幼稚園・小学校で園児・児童を対象とした出前授業やバター作り教室、親子教室等を行っている。雪印メグミルクとの共同で実施しており、2018年もそれぞれ各1回、合計81名の参加者があった。
  • この取り組みは、成長期における牛乳・乳製品の継続摂取の大切さを理解してもらう機会になっている。また、販売店の仕事内容を知ってもらうきっかけにもなっており、販売店のイメージアップにつながっている。
セミナーの様子
親子交流会の様子
2018年のセミナー・講座実績

③「1日1本飲む効果」にこだわった営業

  • 上記のセミナーや講座以外にも、郵便局や温浴施設等での骨密度測定を積極的に行っている。また、従来型の訪問営業も並行して実施している。いずれにおいても「1日1本飲んで健康になってもらう」という点にこだわっており、しっかりと説明をして納得して購入してもらうよう努めている。
  • こうした取り組みにより、2,402軒の顧客に対して日均2,072本と、1軒あたり6本以上の契約本数を上げている。また、積極的に拡売しているにもかかわらず、落本率は3.5%と比較的低い数値を維持している。

2.お客様とのコミュニケーション

①かわら版の発行

  • 毎月、お店独自の情報誌「すまいる・かわら版」を作成し、請求書と一緒に配付している。
  • 内容はお店での出来事や店主のプライベートなことを主に掲載している。また、牛乳・乳製品の商品特徴や効果効能の情報や、デザートセットなどを値ごろ感のある価格で販売する「サンキューセール」のコーナー等も設けている。
すまいる・かわら版 10月号

②誕生日&バレンタインデーのプレゼント

  • 全てのお客様に対し、誕生日とバレンタインデーのプレゼントを贈っている。
  • 誕生日には、デザート3個とメッセージカードを届けている。また、バレンタインデーには、キャンディ3個を袋詰めにし、メッセージカードを添えてプレゼントしている。

3.従業員とのコミュニケーション

①朝礼の実施

  • 本店・支店ともに、毎朝8時20分から全従業員で朝礼を行っている。司会は輪番制で、業務連絡のほか、当日の業務目標の発表や冊子を活用した輪読、商品知識の勉強等を行っている。
  • 輪読は、佐藤氏が参加している倫理法人会の冊子「職場の教養」を活用しており、毎日の朝礼によって従業員の人間力向上を目指している。
  • 商品知識の勉強では、メーカーの「ステップアップBOOK」や「研究レポート」などを活用し、商品の特徴やセールスポイントを毎日1品取り上げ、解説している。
  • 毎週月曜日には、経営理念と行動指針を当日の当番が読み上げる。また他にも、朝礼の最後に口角を上げるウンパニ体操をしてから出発するなど、朝礼が従業員の教育やモチベーションアップの場になるよう工夫している。

②給料日のコミュニケーション

  • 毎月10日の給料日には全員と面談を実施している。また給料は、現金を手渡しで支給している。
  • 女性従業員には給料と一緒にスイーツなどを用意し、コミュニケーションを取っている。

③全従業員が集まる会議&イベントの実施

  • 本店、支店の全従業員参加による全体会議を年2回開催し、進捗報告や業務課題の解決をテーマとした議論などをしている。
  • 会議終了後にはバーベキューや芋煮会などを開催し、従業員間の親睦を深めている。また、ボウリング大会などイベントも実施している。
  • 年末には全従業員参加による忘年会を開催している。

4.地域イベントへの参加

①「ゆざ商工フェア」への参加

  • 遊佐町商工会のイベント「ゆざ商工フェア」に出店し、牛乳・乳製品の即売会や骨密度測定などを実施している。
  • 当イベントについては、「かわら版号外」を発行し、既存顧客に告知している。

②「奥の細道鳥海ツーデーマーチ」への参加

  • 遊佐町主催のイベント「奥の細道鳥海ツーデーマーチ」では、牛乳の無料試飲を行っている。
  • 当イベントでは、ウォーカーに対し、歩いた後に牛乳を飲んでもらうことの効果をPRしている。全国から多くのウォーカーが集まるイベントであり、広く牛乳・乳製品のおいしさと効果をPRする機会になっている。

5.宅配品質の向上

①配達時の温度管理の徹底

冷蔵庫に貼られた注意事項
  • 配達用の車両は全て冷蔵車に変えていく方針であり、徐々に切り替えを図っている。現在、8台中6台が冷蔵車に移行できている。
  • 冷蔵車に関しては、出発時と途中の庫内温度を記録している。常に10℃以下で保管することを徹底している。

②衛生管理の徹底

  • 受け箱については、拭き取り用のウェットティッシュを常備し、特にフタ上部と受け箱内の拭き取りを徹底している。また、配達員一人あたり1日4個の受け箱交換を徹底している。
  • 配達車両は毎日必ず洗車している。

③その他宅配品質向上の取り組み

  • 早朝配達時の注意点として、騒音で迷惑にならないようエアコン運転をしない、ラジオの電源をOFFにする、等を徹底している。
  • 商品の取り忘れが心配なお客様に関しては、「配達完了POP」を使用し、取り忘れの防止を図っている。

経営専門家の意見

該店は、平成23年にゼロからスタートし、わずか7年で日均2,000本を超える規模にまで拡大してきた。「販売店として後発なので、周りと違うことをしないといけない」という佐藤氏の考えのもと、様々なことにチャレンジし、実績を上げてきた点は秀逸であり、新しい販売店にとっても大いに参考になる事例といえる。

その中でも、お客様や従業員への「啓発」に対する取り組みが特徴である。まずお客様に対しては、年間10回を超える「骨と健康寿命セミナー」や児童を対象とした「食育出前授業」により、牛乳の効果・効能の啓発に注力している。その結果、「毎日飲むことによる効果」に納得して買ってくれるお客様が増え、契約本数が1軒当たり平均6本を超えるなど、効果が目に見えて表れている。

また、毎朝の朝礼などを通じ、従業員の商品知識や人間力を高めるための啓発活動にも熱心に取り組んでいる。社名の「すまいる」にも表されているように、従業員が「笑顔で仕事できるように」という想いが感じられる取り組みである。

なお、こうしたお客様や従業員への啓発活動が、牛乳販売店の地位向上に、また該店自身の「他の販売店の見本になる」という目標に向けた取り組みにつながっている。まだ設立7年の販売店であり、今後の更なる発展・成長が大いに期待される。


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