第33回 牛乳販売店優良事例発表会

(一社)全国牛乳流通改善協会

優秀賞

一般社団法人 全国牛乳流通改善協会会長賞多彩な商品取扱と地域密着強化で
繁栄する販売店

株式会社府中ミルクセンター
代表者紀平 録美

ここがポイント

  1. ①高齢者対策として「お食事宅配サービス」「介護相談セミナー」実施
  2. ②地域社会との関わりを重視した行動
  3. ③拡売対策と休眠顧客の掘り起こし

発表店概要

販売店の歴史及び代表者(発表者)の経歴

1952年
11月1日三重県生まれ 69歳
2000年
府中市内の福島商事(株)に勤続した後、同社の卸・宅配部門を引継開業廃業予定店を継承し「有限会社森永府中ミルクセンター」として営業開始
2007年
株式会社府中ミルクセンターに組織変更
2010年
国分寺市内の廃業店を継承し、府中市幸町本店と国分寺市支店の2店舗体制で運営開始
2012年
開業以来、その他に十数社の廃業店を継承すると共に国分寺市支店を府中市本店と統合し本店1店体制とした
2014年
府中市幸町から同市天神町へ移転、現在に至る

店舖概要と立地環境

(1)牛乳関連店舗・設備

  店数 冷蔵庫 冷凍庫 自販機 ショーケース
本店 1店 8坪 2坪 7台 5台

(2)牛乳関連営業用車両台数

保冷車 冷蔵車 軽トラック ライトバン その他 持込車
8台 30台

(3)牛乳関連従業者数

  経営者 家族従業員 専従従業員 パート
アルバイト
合計
男性 2人 2人 35人 39人
女性 1人 5人 6人
合計 2人 3人 40人 45人

(4)経営状況

①令和2年製品別売上高(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 95.2 89.3
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 120.0 10.7
牛乳関連合計 97.4 100.0
宅配卸以外の売上計 0.0 0.0
合計 97.4 100.0
②令和2年業態別売上高(%)
業態 前年比 構成比
宅配 100.8 87.9
卸(小売) 83.3 8.9
自販機 58.8 2.2
集団 0 0
その他 100.0 0.9
合計 97.4 100.0

③令和2年粗利益(%)
商品分類 前年比 構成比
牛乳関連 普通牛乳 95.2 92.7
加工乳
LL牛乳
乳飲料
ヨーグルト
その他宅配商品 120.0 7.3
牛乳関連合計 96.7 100.0
粗利益率 43.8  
④配達の状況
配達
時間帯
コース数 集金方法(軒) 日均
本数
毎日 週3 週2 週1 訪問 振込 引落 合計
早朝     50     300   1200 100 2400 4000 3800本
午前                      
午後                      
夜間                      
その他                      
合計     50     300   1200 100 2400 4000

(5)立地環境

  1. 府中市・三鷹市・調布市・小金井市・国分寺市・川崎市多摩区・川崎市麻生区と広範囲を商圏として宅配している
  2. 府中市は東京都のベッドタウンの位置づけにあり集合住宅から戸建てまで幅広い客層が混在している
  3. 競合は同マークから他社まで多数あり

経営方針

「お客様のニーズに叶った安心で豊かな宅配サービスをご提供いたします」を掲げ、地域に根差した経営をモットーとして、健康を提案する宅配商品をお届けすることで地域貢献を図っている

活動内容

1.幅広い顧客の要望に対応できる高付加価値商品の販売で客単価がアップした

①乳業6社の商品を取り扱っており顧客のどのようなニーズにも幅広く対応できている

  • 各社の特徴ある機能性商品のラインアップにより顧客の色んな要望にお応えしている

②利便性の高い商品の展開(常温保存品、LL商品など)が好評

  • レトルトカレー、フリーズドライみそ汁、長期常温保存可能豆腐などが好評

③顧客は希望する商品を自宅で受け取れることで外出回数を削減できる

  • コロナ禍対策として好評である

④ 多種多様な「コト・モノ」の提案により地域活動にも貢献している

  • 配食サービス、割引歌謡コンサートチケット、健康食品、サプリメント、各メーカーの飲料やデザート、長期保存可能品など

2.高齢者対策として「お食事宅配サービス」「介護相談セミナー」実施

①高齢化の進展に伴う「買物弱者」対策として配食サービスを実施

お食事宅配サービス 『にこ楽弁当』
  • 府中ミルクセンターお食事宅配サービス『にこ楽弁当』の宅配を実施しているその謳い文句として、東北大学の都筑 毅准教授が推奨する「スーパー和食」を採用している。
  • 「スーパー和食」とは、昭和50年代の食事が最も健康に良いことが解明されたというもの。「にこ楽弁当」はこの点を考慮した食事になっている。
  • 取り扱いは、「冷凍宅配便でお届け、好きな時にレンジで温めて召し上がる」というもので、健康と共に手軽さを強調している。また、代金は牛乳代の支払いと合わせることで、煩わしい手間が省けて評判は上々である。

②介護相談セミナーを開催して落本防止に繋げている

  • 後期高齢者向けとして「介護相談」、「終活」などのセミナーを実施している。
    乳製品や健康食品、サプリメントなどが、高齢者の健康維持や認知機能の低下予防につながっていることなどを再認識してもらうことで、落本防止に貢献することができている。

3.地域社会との関わりを重視した行動の実施

①自社店舗内で「日曜市場」を開催することで近隣住民に喜ばれている

日曜市場は建物内右側で開催
  • 2か月に一回の頻度で、近隣のお客様にチラシを配布して開催している、特に人気が高いのが、農家の朝取り野菜の販売である。新鮮な野菜がすぐ近くで買えることで非常に喜ばれている。…2021年はコロナ禍で休止した

②保育園や保育所、卸先でのイベントに参加

下の写真は保育園からの感謝状

取引先施設や家庭配達のお客様から感謝のメモ

③日頃の配達業務に関して配達先顧客などから感謝していることを知らせるメモが届けられている。全従業員に知ってもらうため、作業スペースに貼り出し配達業務に対する励みにしている。

④店舗前の道路向かい側に季節の花を植えて近隣住民に癒しを提供している

  • 店舗は小金井街道沿いにあり、向かい側は金網で仕切られた旧航空自衛隊府中基地跡地だが、金網と歩道の間に若干の空き地がある。その空地を利用して季節の花を植えて、花を咲かせている。殺風景な金網が続いている途中で、店舗前の街道対面は「花いっぱい」の状況を作り出して近隣住民に癒しを提供し喜ばれている。

⑤むさし府中商工会議所主催の「府中さくらまつり」へ当社商品の提供を行っている

  • 当社は府中市商工会議所の会員であり、毎年のイベント開催時には乳製品や健康食品などで協賛を行っている。

⑥コミュニケーション活動の一環としてホームページで情報提供をしている

  • 2021年2月から自社ホームページを立ち上げて情報提供を図っている
  • 宅配のお休みや商品の変更などの情報を手際よく伝えられている。また、お客様からの問い合わせや要望などにも迅速に対応することができている。

⑦広告宣伝

  • 顧客向けの情報提供としてグーグル広告を半径15㎞圏内に展開、顧客の疑問や要望に応えること等を想定し、幅広い情報を提供している。

4.拡販対策と休眠客の掘り起こし

①個別訪問営業

  • 宅配の拡販を専門とする3社と契約、拡販を実施している。

② 卸先小売店でのイベント販売

  • 小売店で拡販を目的としたイベントを開催、効果を上げている。ここでも強みは各社の豊富な機能性商品のラインナップである。新規客はもちろんであるが、 過去に競合店に切り替わったお客様へもそのお客様のニーズに適切と思える商品をアピールすることができるので、再度、当店へ切換えていただくこともできている。
    このイベントは好評のため毎月10~12回程度実施している。

③ 自社営業マンのテレマーケティングによる休眠客掘り起こし

  • 休眠客にテレアポを実施し、その際に聞き取った情報をもとにサンプルとしてお渡しする商品に反映させている。
    例えば、膝が痛い、中性脂肪値が高い、血圧が高め、肥満気味、風邪をひきやすい等の各種要望に合う商品を推奨している。

5.品質管理

① 温度管理

  • 保育園、保育所、学校、施設などに関しては、温度管理が厳格であり指定温度の管理は徹底して実施している。
  • 配達時には、1年間を通して蓄冷剤を使用している。宅配時は保冷シート蓄冷剤を必ず使用する。また、保冷受け箱を出し忘れているお客様には保冷バッグを使用して届けている。

② 受け箱管理

  • 配達時に汚れの目立つ受け箱はタオルで拭き綺麗にしている
  • 破損や汚れの酷い受け箱については、配達終了後「配達連絡メモ」で事務所に連絡し、次回配達時に取り換えを行っている。
  • 倉庫内の決められた場所に清掃した受け箱を常時保管しており、配達員が破損品や汚れている受け箱と交換している。
  • 訪問集金しているお宅には集金時に清掃を実施している。

③ 取り忘れが発生した場合、すぐに訪問して対応している。もし、訪問時に不在だった場合、下記チラシを入れて注意喚起している。

④ HACCPについて

  • 食品衛生責任者の主導による保育園・保育所等への卸での衛生管理、温度管理共に完全に実施されている。宅配についても蓄冷剤の通年使用など温度管理を重視した取り組みを推進していく。

6.配達管理

①担当者ごとに前日に宅配商品を準備しておく、そして配達担当者は、当日の配達前に商品が揃っているかを確認した上で出発する

  • 配達スタッフへの連絡は掲示板を使用し、特別に連絡が必要な人へは個人宛の連絡シートを使用して徹底している。
コース別事前セット
その他商品セット
  • 配達業務には「配達に関する注意事項」と「宅配商品業務マニュアル」で指導している。

7.コロナ対策

①社内対策として下記項目を実施している

  • 注意喚起の掲示板を設置
  • 手洗い場へのペーパータオルの設置
  • 清掃、アルコール消毒を徹底
  • 室内換気の励行
  • 空気清浄機を設置
  • 手洗い、うがいを徹底
  • マスク着用を義務化
  • 検温、体調報告を義務化

② 顧客対応として

  • 集金時の対面応接から非接触対応を目的としたファイナンスへの変更を推進している。切替実績としては、コンビニ店での支払い1,700軒、郵便局支払い700軒と合計2,400軒に達している。
    尚、クレジットカード決済は手数料が高いので取り扱いをしていない。
  • 全ての支払い手数料は当社の負担としている。

経営専門家の意見

府中ミルクセンターの最大の強みは乳業各社の商品ラインアップの充実である。

顧客のニーズが多様化している現代では、多種多様な要望に応えられる商品のラインナップは、それ自体が非常に大きな強みとなっている。その一つは、過去に他店に流れた顧客の引き戻しにも貢献できている点である。特に、毎月10~12回実施している小売店での拡販イベントで、その効果が認められている。

高齢者対策としては、「お食事宅配サービス」の評判が上々である。電子レンジで温めるだけで食事ができる手軽さと、昭和50年代を意識している栄養面がその要因であると考えられる。謳い文句として東北大学の都筑 毅准教授が推薦する「スーパー和食」を採用している。常日頃から言われている和食の栄養面での良さと、昭和50年代という高齢者にとっての懐かしさなどとが相俟って、説得力が向上しているものと思われる。

当社の課題は、地域密着の強化である。2014年に府中市幸町から現在の天神町へ移転してきて7年と、まだ日が浅く馴染みが薄いと感じられるので、地元密着強化が課題であると経営者は認識している。その課題解決手段が地域社会との関わりを重視した各種行動の実施である。

その中でも特に効果を発揮しているのが、自社店舗内での「日曜市場」の開催である。自社店舗屋内での実施は、近隣住民への認知と親しみやすさを醸し出すことに大いに貢献している。当店としては乳製品そのものや新商品、健康食品などの認知拡大や拡販が主目的だと思われるが、近隣住民の一番の人気は、朝早く仕入れて並べられた農家の朝取り野菜である。健康的な日常生活を目指している住民としては新鮮な野菜は魅力いっぱいに映るのは自然であろう。

また、当店の日頃の配達業務に関して配達先顧客などから感謝されていることが壁に貼り出してあるメモから判断できる。保育園や保育所からの感謝状にも表れている行動が一般顧客にも広がっており、徐々に地域密着が進んでいることが分かる。その他に花いっぱい運動、ホームページ作成、広告宣伝活動等地域密着強化への取組みに熱心でその努力を評価したい。

品質管理に関しては、保育園や保育所等客先指定の温度管理を厳重に実施されている。また、一般宅配顧客対する温度管理も1年間を通しての蓄冷剤を使用し、持ち込み車両による宅配時の品温管理等徹底されていると感じた。

コロナ感染防止対策に関しては、現状で実行できる事柄についてはすべて実施、徹底されていると感じた。

当店は、経営方針にある「お客様のニーズに叶った安心で豊かな宅配サービスをご提供いたします」を今後とも着実に実践していくことで、地域に密着した経営で更に発展していく販売店であると確信した。

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